本広克行(映画監督)

Q1:サカナクションとの出会い

2015年の日本武道館のライブで初めてライブを観ました。

Q2:あえてサカナクションのBESTな曲を選ぶとしたら?

「アムスフィッシュ」。
映画監督20本説というのがある。20本映画を撮ると、どうしていいかわからなくなる、何を撮っても全部同じに見えてくるという。
要するに「こうすればお客さんや、関係者が喜ぶだろう」という技術が身について、どんな仕事も「自分の焼き直し」で何とかなるようになり、
面白くなくなってくるのである。自分もいよいよその領域に近付きつつあると感じていた時期に、サカナクションの10周年記念ライブ(2017年)を観た。
いつもの、誰もが期待するアップテンポでフェス向きな楽曲は封印され、静かな内省的な楽曲で構成された意外なセットリストに感動を覚えた。
中でも「アムスフィッシュ」。新木場のライブ会場にいるはずの僕の回りだけ、「雲の切れ間で頷く魚」がこちらを覗いている世界が広がって、
大勢のオーディエンスに囲まれながら自分だけの空間に居るような、不可思議な感じに酔いしれた。
この感じ、むかし押井守監督の名作『天使のたまご』を観たときの感覚に似ているな、と後になって気がついた。
もうすこし、自分のフィールドを掘り下げてみても良いかな。その日の「アムスフィッシュ」には、僕にそう思わせるだけの力があったのである。

INFORMATION

映画「曇天に笑う」公開中
http://www.donten-movie.jp/