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毎回、彼の全国各地での旅のエピソードをお送りします。 |  |
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M’sツアーその2
大坂昌彦がピアノを弾いて小井政都志となにやらややこしいパターンを繰返し合わせている。複雑だがかっこいいそれはなんだと聞くと、3拍子を7/16と5/16の交互のビートにしているのだという。三拍子は三拍子で、四拍子なら四拍子で楽しくスイングしようよ、わざわざややこしくせんでも、、、というのはMCネタではありつつ実はぼくも楽しいのだが、時々突然大坂が”あ!”と言って思いついてしまうリズムアレンジの中でも今回は難解なものが出て来てしまった。曲はビルエバンスの(クレジット上はマイルスだけど、ナルディスと同様本当はエバンスが書いたに違いない)ブルーイングリーン。ぼくのレパートリーにはなかったのだが以前参加したビルエバンストリビュートアルバムでソルト(塩谷哲)がやはりなんだかややこしいタイム設定で演奏していた。そこではぼくはスリーピングビーをあえてテーマ部分トリオ分丸コピーにしてどうアドリブが展開できるか、というのとギターピアノデュオバージョン(エバンス+ジムホール)をトリオにリアレンジして展開させる(この手法はピーターソン判のswingin’ on a starをM’s(マサちゃんズ)にかけた時にも採っている)という2曲で参加した。
キシノヨシコにもワルツフォーデビィの5/8バージョンがあるし、ニコラスペイトンの7/8アフターユーブゴーンあたりがスタンダードの変拍子化の流行り始めかと思われる。ともあれ7と5の交互はやりにくい。のっかってメロディを吹く方も大変である。こうだろうか、いやああだとうかとユニゾンの譜割りをトライする川嶋哲朗とTOKUが微笑ましい。ここ倉敷のクッキージャーはどうもそういうバイブレーションがあるらしく、今回のアルバムに入れたpaper moon のアレンジも去年のツアー中のこの店で生まれたのだった。その時はエイトビートの話をしていて初期ジャズロック的な、つまりはイナタいエイトが今ひるがえってかっこいい、とか、lee morgan のdippin’あたりのビートって実はけっこう複雑なんだ、とかいう世間話とも勉強会ともつかぬ会話をそれぞれピアノとドラムの前に座りながら交わす。ということは会話の合間には実例が演奏されるわけですね。考えてみたらお客さんの前でアドリブを交わしているのも、具体的な言葉を発しないだけで、この実演つきおしゃべりと同じことなのだ。それはともかく、跳ねてるようなイーブンなようなエイトビートに思いつくままのコードを乗せてみるうち、paper moon のメロディとリハモニゼイションが指からこぼれでる、、、という具合。バンドは楽し、ツアーは愉快、てなもんだが最近はリズム面をいじるアレンジに偏りがちなので、ロマンティック方面も開拓したいものだ。ジャズスタンダードは名曲の宝庫であるからして元ネタに困ることは先ずないし。
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