2003.06.2

スペインより

同志よ、

マドリッドの交通は耐え難い。信じられない。NYとLAと東京を足して、さらにゴジラがやってきたようだ。俺がやりたかったのはランチを食べて、町を歩き回るだけ。それは結局卵2、3個食べるために45分もタクシーに乗るという結果に終わった。タバスコがあったのが唯一の救い。

さらに、ハム付揚げJews(Jews=ユダヤ人)なんて料理もある。冗談を言ってるわけじゃない。揚げJEWS。聞いてみるとJEWSっていうのは豆の一種のことだとわかった。安心したぜ。

マドリッドの会場はMacumbaと呼ばれる場所だった。会場としては少し古くて、ぼろいほうだ。スペインの設備はだいたい良くない。いつも汚く見える。

それに、(スペインには)昼寝ってものがある。午後1時から4時までは仕事をしない。わかったよ、それに付き合えばいいんだろ。俺は、ここにいる間、スローダウンするよう心がけなきゃ。観客は、気にしてないようだ。

クレイジー。

とてもクレイジーだ。

彼らが最高のPAシステムで俺達のライヴを聞けたらどれぐらいクレイジーになるだろう。マジで。バルセロナのPAは、70年代の家庭用ステレオみたいだった。とてもチャーミングだった。

ツアー終了の打ち上げはショーの最中に始まった。俺はステージ上でバーボンまで飲んだ。危ない端を渡る。それが俺さ。

俺達は、グラナダへ行く途中、バスで素晴らしいスペインのリオハ産ワインを味わった。

グラナダ。

俺達のバス・ドライバー、ケヴィンはマドリッドで俺達に警告した。ここでツアーを終了し、南へは行くべきでないと。俺達は彼の言うことを聞くべきだった。

俺は、昼ごろに起きて、俺達が完全にグラナダとサンタフェの間のどこかで道に迷い、トレーラーのブレーキが故障したことを知った。それを修理するために現われた修理工が、俺達を会場へ連れて行ってくれるはずだったのだが、俺達がもらっていた住所には会場は存在しなかった。

彼は俺達を会場へ連れて行く代わりに、どこにあるんだか見当もつかないようなSandford and Sonみたいなガラクタ置き場へ俺達を連れていった。「続・夕日のガンマン」に出てくるような景観。

スペインの修理工は、俺達のクルーが早く会場入りする必要があるという事実を全く気にしてくれず、俺達のドライバーと言い争いを始めた。実際にはそれは言い争いじゃなかった。彼らはスペイン語で叫んでいて、運転手は(英国の)ブラックプール出身だったから。

俺達はそこを去った。グラナダ空港にたどりつき、会場から迎えが来た。

この日のショーはPiorno Rock Festivalというフェスで、俺達とCRADLE OF FILTH、そしてたくさんの俺達が聞いたこともないバンドが出演した。その中に1インチの深さの水たまりがある不潔なバスケットボール用体育館みたいな所に約4000人もの客がぎゅうぎゅう詰めになっていた。

ショーの会場がPinos Puenteと呼ばれる場所にあったので、俺達はすべてグラナダに入りホテルでその日を過ごした。長い1日。午後8時頃会場に取った。

そのころにはもう、壁が人の汗でべったりだった。なんて気持ち悪いんだ。俺がインタビューをやる度に完全に真っ白になって答えに困る質問の1つは、「今までで最悪のライヴは?」だ。

今、俺はその答えがわかった。

でも観客はそれを楽しんでいた。彼らは夢中になっていた。彼らの視点からすると、実際、彼らはすごく楽しんでいたと推測できた。俺の視点から見れば、それは最悪だった。

ステージ上は今までで最悪の音。プレイすることがほとんど不可能なくらいだった。ホールの後ろから跳ね返ってくる音のせいで、すべての音にディレイがかかっているように聴こえた。もちろん“英語が全く話せない”モニター担当のスタッフにそれを説明しようとすのは意味のないことだった。俺達は覚悟を決め、ステージに出ていった。俺達はプリマドンナではない。俺達はアクセルみたいに音が悪いからと物を投げつけて立ち去ったりはしない。

終了までプロだった。すごく盛り上がってくれた聴衆に感謝。俺達は彼らの期待を裏切るようなことは絶対にしない。

だが、ショーの後の楽屋で怒鳴りちらした。さらに悪いことに、誰かがショーの最中に俺達の楽屋に入って鏡に「俺達はイラクを愛している、アメリカ人は帰れ」と落書きしていた。無神経なやつめ。

それをやった奴は俺達に面と向かって、人間として話す勇気もないやつだということは明らかだ。ヤツらが、ただ俺達がアメリカのやっていることに賛同していると勝手に思っているだけなのは明らかだ。

そういう無知がまず戦争を引き起こすんだ。

俺は、CRADLEのセットを何曲か見た。彼らは、俺達と同じ問題を抱えているようだった。スペイン万歳。もっといい音のする機材を使ってくれよ。

とうとうこのツアー日記の最後がやって来た。俺は、LAへ戻る飛行機の中でこれを書いてる。俺は今月は家に戻れてうれしい。早くガールフレンドにも会いたいし。

www.anthrax.comに来て、俺達の最新情報をチェックしてくれよ。

俺達は6月末にまた1週間のライヴのためにイギリスに戻ると聞いてる。

それは素晴らしい。サンキュー。

また会おう。

スコット

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