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聴いていただければわかるように、通算8枚目にして初のセルフ・アレンジとなる今回のニュー・シングル「フルスピード」は、16ビートのファンキーなロック・チューンです。ファンキーといっても、そこに漂っているのは明るさや開放感といったものではなく、どちらかといえば閉塞感。いや、正確に表現するなら、その閉塞感をどうにか打破しようともがく抵抗の感覚です。まるで憂鬱な気分を振り切ろうとでもするかのように、後半に進むにつれてどんどん熱を帯びてゆくバンドのグルーヴが圧巻ですね。
そのバンドのメンバーを紹介しておきます。エレクトリック・ギターはbenzoの平泉光司。ベースは沖山優司。ドラムスは古田たかし。そしてキーボードはエマーソン北村。この4人による、ほぼ一発録りならではのホットでスリリングなせめぎ合いは聴き応えバッチリ。もちろん吉田直樹の憂いと憤りが交差するボーカルも、いつも以上にダイナミックに轟きます。
前途のようにグルーヴで牽引してゆくという点においては間違いなく前作「ch U (channel U)」の延長線上に位置している「フルスピード」ですが、しかし世界観は正反対です。エロエロでコミカルなやり逃げチューンだった「ch U (channel U)」から一転して、今回の「フルスピード」ではエロも笑顔も一切なし。ひたすらシリアスにロックする姿がなんともかっこよく映ります。そう、ここでの吉田直樹はいつになくかっこよいのです。
現在、吉田直樹というシンガー・ソングライターは飛躍の真っ只中にいるように感じられます。その成否は8月に予定されている、1年3ヶ月ぶりの3rdアルバムではっきりすることでしょう。とにかく手遅れになる前に、ちゃんとマークしておいたほうがいいですって、絶対。
text by Takashi Ohno
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