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『Book』
2002.8.7／VICL-60911／￥2,900 (tax out)
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吉田直樹が3rdアルバム『Book』を完成させた。前作「photosongs」からは1年3ヶ月ぶりになるわけだが、その間に彼は、いくつもの大きな変化をくぐり抜けた。レコード会社の移籍。東京での一人暮らしのスタート。そして音楽的な側面に目を向けてみれば、自らアレンジを手掛けるようにもなった（その素晴らしい成果はシングル「フルスピード」で既に実証済み。アルバム『Book』でも収録曲の約半数がセルフ・アレンジである）。
そんな数々の変化の過程で、吉田直樹はかつてないほどのプレッシャーを感じたという。なんとなく曲を作って、せっかくだからラジオ番組のデモテープ・コーナーに送ってみたところ、いつの間にかデビューが決まり、気が付いたら2枚もアルバムを出してました．．．といった感じで歩んできた吉田直樹にとって、それは初めて経験する壁であったかもしれない。その壁を必死になって乗り越えた地点に、この3rdアルバム『Book』は屹然と存在している。
収められているのは全部で11曲。2枚の先行シングル「ch U (channel U)」＆「フルスピード」はロック色の強い仕上がりだったけれど、全体としてはバラエティに富んだポップ・アルバムといった印象。もともと定評のあったメロディ・センスにはさらに磨きがかかり、甘さと苦味の同居した歌声も輝きを増している。しかし過去2枚のアルバムと決定的に違っている点は、ある種の覚悟のようなものが楽曲に息づいていることだと思う。曲を作り、それを歌うことが俺の一生の仕事なのだ。そんな覚悟が感じられるのである。
たとえば表題曲の「Book」は、シンガーソング・ライターとして生きてゆくことに自覚的になった吉田直樹の静かな宣言のようにも受け取れる。また最悪の精神状態を抜け出して以降にかかれたという「風のままに」からは、より多くの人々に自分の歌を届けたいという思いが読み取れる。
吉田直樹、28歳。ついに本気モードに突入である。
text by Takashi Ohno
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『フルスピード』
2002.6.21／VICL-35401／￥1,000 (tax out)
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