THE PRODIGY | THE PRODIGY - Long Interview With Liam Howlett & Keith Flint, on December 18th, 2008

オリジナル・アルバムにおいて三人揃っての作業は実に11年ぶりと言うことになります。今作で改めてThe Prodigyのケミストリーを体感したとしたら、あなたたちはそれをどのように表現しますか?
リアム・ハウレット(以下L):
11年ぶりというと、俺たちがその間離ればなれでいてまた一緒になったように聞こえるけど、バンドは一度も解散したことはない。俺たちはバンドとしてこれまでずっとレコーディングや…
キース・フリント(以下K):
ツアーをやっていた。
L:
ツアーをやっていて、自分たちはそんな風に考えたことはないな。
K:
ほんと、そうだな。説明し難いんだけど…
L:
プロディジーは2つの基盤を持っていて、そのためにみんなに理解してもらえないこともあるんだけど、俺たちはヴォーカル・バンドではない。俺たちはミュージック・バンドだ。ヴォーカルは必要なときにだけ入る。だから、ある意味ラッキーなことに、「Firestarter」をリリースしたと思ったら、次には「Smack My Bitch Up」をリリースできる。つまり、キースがある曲でフロントに出たとしても、次の曲ではそうならないかもしれない。そして、そのまた次の曲では、マキシムがフロントに出たりするかもしれない。
K:
俺たちもそれで満足だし、それで十分だ。どの曲もプロディジーの音楽で、俺たちもその不可欠な要素となっている。君たちのように日付とかにこだわって考える人もいるけど、11年の間には『Always Outnumbered, Never Outgunned』をリリースしていて、当時どういう状況だったかというと、アルバム制作の最後の方で一緒に作った曲もあった。それは「Warning」と呼ばれる曲になったんだけど、結局アルバムには収録されなかった。だけれども、ライヴで必ずやる曲となった。収録されていたとしても、ただ記念としてそうされただけで、アルバムには適していない曲だった。俺とマキシムはこのアルバムから2曲くらいを歌えるようにして、このアルバムもライヴでパフォーマンスできるようにした。そうやって、プロディジーがレコーディング・バンドであると同時にライヴ・バンドとしても存続できるようにした。リアムがこのバンドは2つの顔を持つバンド、統合失調症のようなバンドだと説明したけど、俺たちにとってはプロディジーこそ究極の音楽が存在する場所で、俺も常にプロディジーの一部となっている。プロディジーの音楽は、自分でヴォーカルをとった曲でなくても俺の心の中にある大切な曲だ。
L:
俺たちは、このアルバムをレコーディングするときにバンド・アルバムにしようと決めた。最初から最後までライヴで演奏できるアルバムを作ろうということになった。俺たち全員が影響を及ぼしている作品にしようとした。
K:
それと、『Invaders Must Die』は、前作の後『Their Law』をリリースしてツアーもやったけど、俺たちが11年間一緒にレコーディングしていないことをみんなが気にしているように感じた。それで、今こうしてそれがどういうことだったのか、それでも大丈夫なんだという説明をしているけど、「よし、そういったことは吹っ飛ばして、完全なバンド・アルバムを作ってやろうじゃないか」と話し合った。そういったことに片を付けて、バンド・アルバムを作ろうってね。
L:
『Invaders Must Die』というアルバム・タイトルは、俺たちからみんなへの声明のようなものだ。評論家やプレスといったことではなくて、防衛を意味している。俺にとってのこのタイトルは、自分にとって大切なことを防御するという意味だ。バンドの一員でいることはギャングの一員でいることのように感じることもあって、他人はみんな敵となる。そういった考えから来ているタイトルで、メンバーそれぞれにとって違った意味を持っていると思う。レコーディングを開始して、意味のあるものとなったんだ。
K:
特に、アルバム・タイトルが先にあったところでアルバムを作ったからな。このタイトルは成長していって、あらゆる面においてアルバムの不可欠要素となった。アルバムのイメージもこのタイトルから来ているし、収録曲の何曲かのタイトルも影響を受けているし、すべてはこのアルバム・タイトルから生まれて来ているんだ。
L:
そうだ。
K:
こういうのは珍しいアルバムの作り方だとは思うけど。
なぜ”Invaders Must Die”というテーマを取り上げたのですか?
K:
前作は、バンドが最高と言える状態にはなかった。俺たちもそれは分かっていた。それをどうして更正したらいいかも分かっていた。だから、俺たちは心配していなかった。でも、他の人たちはこのギャップ…
L:
割れ目。
K:
割れ目、つまり弱点があるのを見て、俺たちは強力なギャングではあるけれども、彼らは上手くその弱点につけ込もうとしてきた。友達、ジャーナリストだけでなく…
L:
ジャーナリストではなく、主に自分たちの陣営にいた人たち数人だ。バンドがしばらくの間あまり活動していなかったから、少し考え過ぎていたのかもしれない。俺たちは解散はしてなかった。
K:
決してそんなことはない。
L:
長期間活動するということはいろんな試練を経験するということで、それだからこそバンドも興味深いものとなる。大変な時期を経験した後に復活することでね。
K:
俺たちもこれでよかったと思っている。そういった辛い時期を経験できてよかったと思っている。何をやるにしても一生懸命に努力しなければならない。何事も簡単にはいかない。簡単に手に入るようなものだったら、それはつまらないもの、または、無意味なものに思えるだろう。
L:
だから、このアルバムは、タイトルどおりに挑戦的な作品だ。俺たちにとっての勝利の作品だ。2003年、2004年にバンドがほとんど解散してしまいそうな状態までいって、それを乗り超えて作られた。俺たちはもちろん友達で、シングル曲を集めたアルバムのツアーをした5年前に関係を修復したんだ。といっても、特に俺たち3人の間に何か問題があったわけではなくて、パラノイアになっていたって感じかな。
K:
題目もちゃんとした理由もない家庭内の争いといったものだ。12年間一心不乱にツアーしてきて、時には離れることも必要となった。その隙間が大きくなりすぎて、何がどうなのか分からなくなってしまうこともある。ソロの作品を作ろうとしたことは、よいことではなかった。リアムが次のプロディジーのアルバムを書こうとしてたときに、俺は自分のソロの曲を作っていた。プロディジーのために24時間を費やしてた人が突然に、「スタジオに入ってるから、木曜日には行けない」と言っていたんだ。リアムが「Spitfire」を作って聴かせてくれたとき、俺は「彼が野球のバットのような曲を書いた」と表現してるんだけど、この曲は俺の頭に命中した。それで、「ちょっと待てよ。俺はここで何してるんだ」と考え直して、すべてをすっかり片付けてスタジオを後にしてプロディジーに戻ったんだ。
L:
本当の話だ。
K:
本当なんだ。スピーカーのヴォリュームを大音量にして「Spitfire」を聴いた。このバンドの音楽ほど俺にとって意義のあるものはないこと、俺の心がこのバンド以外のどこにも所属していないことを確信した。俺は自分が夢の世界にいたことを分かっていた。ラッキーなことにも、プロディジーとの関係は続いていてまだメンバーでいた。何よりも俺たちの強い友情があって、プロディジーのパワーと強さを再建することが出来たんだ。
L:
それでこのタイトルとなったんだ。俺たちにとってとても意味のあるもので、当時のことがきっかけとなって付けられているんだ。
K:
あの感情から来ているんだ。あのときのあの感情から作られたタイトルだ。そういうわけだ。バンドはこのアルバム・タイトルからこの作品を作る力をもらって、ライヴにもってこいのアルバムを作った。今のバンドには、何の幻想もなければ、希望的観測などもない。これは俺がそうあって欲しいと願ってるわけじゃなく現実のことなんだけど、バンドがこれほどまでに強力であったことはない。これ以上最高の状態はないといったほどだ。俺たちは互いに正直であって、ちゃんとした理由がなければこうやって活動はしていない。自分に合ってないものであれば、辞めるだろう。時代遅れのもの、自分たちに関係ないものであれば、3人とも辞めると思う。
L:
そのとおりだ。
K:
世界ヘビー級チャンピオンが最後の試合にのぞもうとしていて、その体は不格好で、ずっとトレーニングをしていなくて上腕の筋肉も衰えてるのを見ることほど悲しいことはない。実に悲しいことだ。床に叩きのめされる姿を見るのは、本当に悲しいことで、俺たちは自分たちがそんなことになるようなことは絶対にやらないし、自分たちの仲間のためにもそんなことはしない。バンドとして、友達として俺たちは強力だ。でも、結局は音楽なんだ。俺たちの音楽が俺たちにとっての上腕筋だ。今はすべてが完璧な状態にある。前回のツアーはこれまでにないほどにパワフルでダイナミックで、観客同様俺たちにとっても最もエキサイティングなツアーだった。自分たちがまるでまったくの新人バンドのような感じがして、最高にエキサイティングだった。自分たちを偽って、「俺たち、また友達に戻って最高だぜ! もう一度やってやろうぜ!」なんてやってるんじゃない。そんなことは決してしない。本当にワクワクしてるんだ。今が俺たちの本領を発揮するときだ。さっきも言ったけど、ステージを支配して、自分たち自身に、そして、自分たちの音楽に信念を持っている。だから、今、俺たちこそ世界最高のバンドだと言えるんだ。
「Invaders Must Die」「Omen」「Thunder」など、今回のビートはかつてないほどタフ&マッシヴで格好いいのですが、その要因と達成感のほどを聴かせて下さい。
L:
ビートの質問だね、いいね。常に進化させたいと思ってるんだ。すごく満足してるよ。自分が少し発展させることが出来たなと思える新しいプロダクションや新しいサウンドには満足感を得るんだ。この3曲のビートはパワフルで、ライヴで試した曲もあるけど、凄くビッグなサウンドだ。
今作ではオールドスクールなレイヴ・シンセや8ビットのシンセ・サウンドが耳を惹きます。機材面、制作面での変化はありましたか?
L:
俺がスタジオで曲を書き上げてるときにキースが指摘してくれたんだけど、何曲かは昔と同じ方法で書いていたようなんだ。自分ではそんなふうに分析していなかったから、彼が指摘してくれなければ気づかなかったかもしれない。「Take Me To The Hospital」や、特に「Warrior’s Dance」なんかは92、3年あたりの作曲方法と同じ方法で書いていた。とは言っても、埃をかぶっていた昔のレイヴ・キーボードを取り出して使ったってわけじゃなくて、そういったキーボードは最初からスタジオにセッティングされていた。ただ、さっきも言ったけど、俺たちは当時のあのカルチャーに所属していて…「Warrior’s Dance」が転機となった曲だったと思う。レコーディングを開始して4ヶ月経った頃に違った方向性をいろいろと試していて、ちょうどその頃にイギリスでは大きなフェスティヴァルの『Gatecrasher』でのギグがあって、キースが、「アルバムのことは忘れよう。これこそライヴに最適な曲だ。ギグ用の曲が必要だ。これぞその楽曲だよ」と言ったんだ。アシッドハウス誕生20周年記念とか何とかで、それをインスピレーションにしてそのギグ用に「Warrior’s Dance」を書いた。おそらく1度か2度演奏するだけだろうという曲だった。この曲は「アルバムの曲を書かなくちゃ」といったことは考えてなくて自分の頭が別のところにあったから、あっという間に書けてしまった。この曲のおかげで、サウンド面ではないけれど、作曲方法に関してのきっかけを得たと思う。その後に書かれた曲は、すごく楽に書けた。自分がその流れに乗っていたからね。その後は、決して簡単ではなかったけど、アルバム用の楽曲が次々と完成していった。
K:
確かにこの曲がきっかけとなったよな。リアムに言ったんだ。「本来のおまえのサウンドを使うことに躊躇するな。おまえがそのサウンドの所有者なんだ」とね。「そのサウンドを使うのに誰かに許可をもらわないとならないってことはないんだ。おまえのサウンドで、おまえが所有してるんだ。誤った使い方をするな」というようなことを言ったんだ。リアムも言ったように、俺はリアムが以前と同じ方法で曲を作っているのを見ていて、作曲においての新たな自由が生まれた気がした。フリーダムだ。曲作りをただ楽しんでるんだ。見ていて新鮮だった。「Warrior’s Dance」がきっかけとなって、他の多くの曲が出来上がっていったんだ。
L:
このアルバムはダークな作品ではない。『Music For The Jilted Generation』はダークな感じだったけれど、ニュー・アルバムはアップな感じだ。
K:
意気揚々としている。
L:
意気揚々としたアルバムで、聴いてみると『Music For The Jilted Generation』と同じくらいにブルータルでハードではあっても、アップな感じの作品だ。
K:
リアムはダークな音だけではない音を見つけたんだ(笑)。
Pendulum、Hadouken!など「The Prodigyの子供たち」とも言えるバンドたちの台頭をどのように評価しますか?
L:
PendulumもHadouken!も両バンドとも知り合いだ。親友というわけじゃないけど、彼らとは話したりする。Pendulumはプロディジーの「Voodoo People」の素晴らしいリミックスを作ってくれた。これまでに作られたどの曲のリミックスの中でも最高のものだろう。Hadouken!のJamesも、よく俺たちのバンドのことを話題にしてくれていてクールだよ。そうやってリスペクトしてくれるのは嬉しいね。ダンス・シーンにいるみんなそれぞれが違ったことをやっていて、俺たちのやってることをコピーをしてる奴らなんていない。PendulumやHadouken!、Justiceでさえも俺たちがやったことに影響を受けてやっていると言ってくれていて、それはすごいリスペクトだけど、それを彼らの音楽の中に特定することは出来ない。それぞれが独自のことをやっている。
K:
ロック・アクトの方がそういったことをやろうとしてるんじゃないかな。ダンスの要素を自分たちの音楽に取り入れて、少しクールに見せようとしてるんだ。
L:
ロック・バンドがエレクトロな要素を取り入れたりすることの方が、興味深いね。俺にとっては、その方がもっとエキサイティングだ。
日本のファンにメッセージを。
K:
日本のファンには、バンドを理解してくれて、バンドに忠実にいてくれて、そして、君たちのくれるエナジーにありがとうと言いたい。俺たちの大ファンでい続けている君たちのことは非常にリスペクとしている。
L:
ニュー・アルバムを気に入ってもらえたら嬉しい。ありがとう。