UPDATE:07.05.1999

(幻の迷?作ここに公開)
連続推理小説 山中湖スタジオ殺人事件
第1話

平成5年7月26日ビスタレコード山中湖スタジオのロビーにて、「ええかげんにせえよ!話が違うやないか。今はできるだけキャンペーンを中心にやっていこうとこないだも皆で確認したばかりやろ。それを今頃になって突然テレビ番組が決まったからゆうて地方のスケジュールをキャンセルしてくれやゆうて一体どういうつもりやねん!」与田が興奮気味に怒った。与田隆士 32歳 老舗レコード会社のビスタレコードでいま人気絶頂の演歌歌手長沢涼子の宣伝を担当、関西出身の情熱の塊のような男である。「だから何もキャンペーンをやらないとは言ってないじゃない。バラエティーのお化け番組「ノリヲの勇気の出るテレビ」が急遽決まったんでスケジュールを調整してくれと言ってるだけでしょう。なにもそんなギャーギャー騒がなくても、与田さんもこの番組の視聴率がどれだけあるかわかっているくせに、22パーセントですよ、22パーセント。」志村は平然と答えた。志村恭人 31歳 大手芸能プロダクションバイキングプロの長沢涼子担当マネジャーである。東京生まれで若くしてその強引な手腕は業界で高く評価されている。「そんなこと今言うてないやないか。肝心なのは随分以前から楽しみにしてくれているキャンペーン先の皆さんをそんな簡単に裏切られるかぁちゅうこっちゃ。」「与田さんは結局甘いんだよ。そんなことだから今までヒットに恵まれなかったんじゃないの。チャンスなんて知らないうちにどんどん逃げて行くんだから、もうちょっとわかってほしいなぁ。」「なんやと!もういっぺん抜かしてみい。」与田が今にも志村に掴み掛かろうとしたとき− ピィーピィーピィー  志村のポケベルが鳴った。「あっ、誰だろう?こんなとこまで普通呼び出すかなぁ、まったくもう・・・・。じゃあ与田さん、その件、頼んだよ、ああ忙し・・・。」
翌、27日 山中湖スタジオのコントロールルームにて、
「今何時?10時10分か、珍しいねぇタレントがとっくに来てスタンバイしてるっていうのにマネージャが未だ起きてこないなんて前代未聞やね。いっちゃん、悪いけどちょっと呼んできてくれない。」と藤井武 33歳 ビスタレコードの長沢涼子担当のディレクター。マイペースがモットーの大阪生まれの男である。「ガッテン承知の助、志村さん昨夜遅くまで飲んでたみたいだったからきっと二日酔いよ。迎え酒でも持っていってあげようかしら・・・。」北浦一子 29才長澤涼子の親友で前日からレコーディングに遊びにきていた。いっちゃんごめんね。お使いだてしちゃって。志村さんこんなことめったにないんだけどなぁ、いつも予定の時間のだいぶ前に呼びに来る方なのに・・・。」長沢涼子 25歳 アイドルでデビューして10年目の今年演歌に転身して大成功をおさめ今や飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子歌手である。昨日からニューアルバムのレコーディングで山中湖スタジオにやってきていた。いいのいいの気にしないで、私暇なんだから、じゃ呼んで来るね。」一子はスタジオに併設されている宿泊ロッジに入ったとき、はげしい立ちくらみがした。もともと霊を感じやすいところがあって、山中湖はうかばれない霊が多いので昨晩自分が泊まった部屋の扉の前に守り塩をしていたほどだ。ロッジの2階には廊下を挟んで2つずつ合計4つの部屋があって、志村は奥の左側の部屋に寝ているはずだった。一子はドアをノックしたが返事がないので、ノブを回すと鍵はかかっていなかった。「志村さん入りますよ。いつまで寝てるんですか、涼子ちゃんも藤井さんも皆もうとっくにスタジオでスタンバイしてますよ。」といい終わるや否や目の前の信じられない光景に言葉をなくしてしまった。


*この物語はフィクションであり実在の人物・会社等とは一切関係ございません。


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