オータサン/OHTA-SAN
ハワイアン・タイム~ウクレレ・ソロ

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01
デイズ・オブ・マイ・ユース THE DAYS OF MY YOUTH
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02
ハナレイ・ムーン HANALEI MOON
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03
ホノルル・シティ・ライツ HONOLULU CITY LIGHTS
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04
ハノハノ・ハナレイ HANOHANO HANALEI
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05
カイノア KAINOA ~マイ・イエロー・ジンジャー・レイ MY YELLOW GINGER LEI
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06
茶色の娘 LITTLE BROWN GAL
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07
マナクーラの月 THE MOON OF MANAKOORA
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08
サイミン SAIMIN
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09
マプアナ MAPUANA
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10
ププリ姫 PRINCESS POO POOLY
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11
ハワイのどこかで SOMEWHERE IN HAWAII
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12
カルア KALUA
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13
ドント・シング・アロハ・ホェン・アイ・ゴー DON'T SING ALOHA WHEN I GO
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14
オンリー・アッシュド・リメイン ONLY ASHED REMAIN
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15
バリ・ハイ BALI HA'I
まるでオータサンが目の前で弾いてくれているみたい! by IWAO
「イワオさん、なぜダイアモンドヘッドっていうか知ってる?」僕が、知らないですというと、車がブンブンと行き交う道を、オータサンはスタスタと、道の反対側の崖のところまで走って行ってしまった。今年3月、オータサンのDVDの撮影がホノルルであり、僕はナビゲーター役でお手伝いさせてもらったのだが、最終日にイメージカットをダイアモンドヘッド沿いの Look Out Point で撮影していた時の事。オータサンは石を一つ抱えて戻ってくると、それを路面で砕いて、「ほら、中にキラキラ光ってるのが(結晶)見えるでしょ。これが光って、ダイアモンドみたいに見えたから、ダイアモンドヘッドって言ったのよ。」こんな風に、突然観光案内をしてくれる時のオータサンは「ウクレレの神様」ではなく、ただの地元のオジサンである(笑)。
オータサンは話し好きだ。いつも昔のいろんな話をしては、自分でワッハッハと大笑いする。流暢な日本語。しかし、時々固有名詞が完全な英語で発音されるのでよく聞き取れず、結局なんの話だったのか、よくわからない事も多いのだが、オータサンの大笑いにつられてこちらも大笑いしてしまうのだ。オータサンの話を聞いていると、苦難も多かったに違いないが、のんびりしていた古き良き時代のハワイが目に浮かび、僕はしばし古い映画を見ているような、なつかしい気持ちになる。
オータサンの新しいアルバム『ハワイアン・タイム』が届けられた。何曲かウクレレがオーヴァーダブされた曲もあるが、基本的にはオータサンのソロ・ウクレレによる演奏である。録音もきわめてシンプル。まるでオータサンが目の前で弾いてくれているみたい!
ウクレレという楽器は、数ある弦楽器の中でも異色の存在である。調弦法は、上から下へ向かって(4弦から順に)、「ソドミラ(GCEA)」なのだが、この「ソ(G)」が1オクターブ上になっており、次の「ド(C)」よりも高いのである。1弦から4弦に向かうと、だんだん音が下がってきて、最後にまた高くなる。ウクレレ独特のカラカラとした明るいサウンドはこの音の並びによるところが大きい。
これに対し、オータサンが通常使用しているチューニングは、「ソ(G)」のところに巻き線を張り、1オクターブ下げて音域を広げている。これが通常「Low-G」と呼ばれるチューニング(弦の張り方)だ。この方法により、コードを弾いた時の「ウクレレらしさ」は多少損なわれるが、音域は劇的に広がり、甘くふくよかなサウンドが得られる。この「Low-G」に対し、元来の調弦法を「High-G」(=レギュラー・チューニング)と呼ぶ。弦を一本替えるだけで、二種類のサウンド。まさに、一粒で二度おいしい楽器なのである。
オータサン、イコール「Low-G」のイメージが強いが、Low-Gに変えたのはプロになってからのことであり、ずっと「High-G」のウクレレで演奏していたそうである。近年のアルバムではほとんど聴く事の出来なかったオータサンの「High-G」サウンドが、このアルバムではふんだんに聴く事が出来る。しかもそのウクレレは日本製、名匠・中西清一さん作のものであるのも、日本のウクレレファンにとってはうれしいところだ。
High-Gでの「The Days Of My Youth」に始まり、続くおなじみのフラ・ソング「Hanalei Moon」は、なんと16ビートで演奏されている事にビックリ!「Hanohano Hanalei」のバッキングのウクレレの力強いビートは、ウクレレが元来リズム楽器であった事を改めて思い起こさせる。他にも、オータサン特有の、トロピカルなトレモロ奏法等、ウクレレ奏法のあらゆるエッセンスがこれでもかと詰め込まれているが、どんなプレイをしても、楽曲のメロディーがまるで歌のようにちゃんと聴こえてくるのがオータサンの素晴らしさだ。
おそらく、ほとんどの演奏は、テイクワンO.K.だったに違いない。しかし、オータサンは、この4本しか弦の無い小さな楽器とともに、今までに一体どれくらいの時間を過ごしてきたのだろうか。それを思うと、いつも溜め息が出ます。実際にウクレレを弾いてみるとよくわかりますが、ここに収録された演奏の一つ一つが、その膨大な時間の集積であり、それはまさに奇跡なのです。オータサン、ありがとう!