Sekolah Menengah Kerawitan Indonesia
Sekolah Menengah Kerawitan Indonesia
freedom Legong
freedom Legong

これ迄、数多くのバリ島のガムランのLPやCDが欧米、及び日本からリリースされているが、初期の物は観光用、或いは珍しい世界の音楽サンプルといった企画により構成されている。それらは日本国内においても1980年代のワールドミュージックブームに数多くLP&CDとしてリリースされている。又その後のデジタル録音の進歩の課程の中で、広い周波数帯域を持つガムランの「音」自体に注目が集中し、むしろ「サウンドソース」としてのCDが専ら主流であった。
一方、今日ではハワイと並んで日本人にとって最もポピュラーな南国リゾートとしてバリ島が知れ渡った現在では、数多くのバリ舞踊ファン(実際にバリ舞踊を習い、発表会等で踊りを楽しんでいる人達)の人口も相当数増えて来ている。それはバリ島観光の一つとして、バリ舞踊を実際に体験するツアーやオプションがバリ観光客用ホテルにも当り前の様にある事からも、その舞踊の人気はハワイのフラダンスや中東のベリーダンスと並んで日本人女性にとって大きな観光のポイントにもなって来ている。
その様な現象の中にあって、バリ舞踊の比較的初心者が踊る舞曲を集めたCDはバリ島現地制作のカセットやVCD以外、このフリーダム・レゴンが恐らく、初の一般リリースCDとなる。日本の民謡同様、同じ楽曲であっても地域毎に演奏・舞踊のスタイルは微妙に異なるが、バリ島の中で良くも悪くも「標準」を創って来たSMKIの演奏による舞曲集は、日本国内のバリ舞踊(実演)ファンにとっても朗報で、通常は生のガムラン伴奏が中々叶わない(通常編成で25名程度必要、且つ楽器運搬にはトラックが必要となる為)日本国内において、品質の悪いバリ制作のカセットテープを伴奏に踊って来ている舞踊ファン達の伴奏CDとして大いに活用できるCDとなる筈である。
今回発売するフリーダム・レゴンは、2000年4月に、新しいオーディオメディアであるDVD Audio用のソフト制作の為にバリ島で行われた録音の一つである。その為、収録もDVD Audio最高品質の192kHz/24bitのPCM録音である。収録場所SMKI(現SMK3)は、バリ島の伝統芸能の継承と発展の為にバリ島で最初に作られた音楽・舞踊の芸術学校(高等学校)として設立され、その後国立の芸術大学(元ASTI, 現ISI Denpasar)の設立後も多くの優れた音楽家や舞踊家を輩出してきたバリ島で最も歴史のある芸術学校である。
この学校の設立は197x年で、当時はKokarと呼ばれていた。バリ島各地から優れた演奏家や舞踊家が若いバリの学生に徹底的に古典的なガムラン&舞踊の基礎を叩き込み、その上で様々な新しい楽曲や舞踊を創作し続けて来た。このCDに収録されている物は、このKokar~SMKI~SMK3で復刻・創作されてきた舞踊曲の代表作の一部であるが、バリ島のガムランは伝統音楽であると同時に毎年多くの新作が発表され続けている流行音楽でもあるのだ。とりわけ1970年代後半からはこのKokarやASTIのような芸術学校で、専門的な教育を受けた音楽家や舞踊家たちが古典的な新作からガムラン以外の音楽からインスパイアされた現代的な音楽まで非常に多くの新しいガムラン音楽・舞踊が創作されて来ている。
今回収録されている物の中でもKokar創立以前に作曲された物も含まれるが、バリ島の中でも地方毎、或いは村毎に様々なバリエーションがあった楽曲を「標準スタイル」としてKokarによってアレンジされた物の例がLegon Kratonであり又、各地方で創作されて現代まで残っている舞踊曲の代表的な例がPanji Semirangであり、それらを含む古典的な基礎を元にそれ以外の曲が創作されて行った事がこの録音を聞いて行くと理解できる様に選曲されている。
この様な活発な創作活動はKokarの様な芸術学校が出来る前も伝統的にバリ島では行われて来た訳だが、1970年代以降、バリ島が観光地として欧米、日本等で脚光を浴びる様になって行く課程の中で、より華やかな創作活動が活発になって行った背景にもなっている。それはただ単に楽曲や舞踊が新しく創作される事に留まらず、楽器自体も様々な新しい編成やスタイルが誕生し(同時期に録音されたGong Manikasantiは1990年代に創作された新しい編成のガムラン)、現在も尚次々に新しいガムランが誕生して来ている。
Bali Gamelan Club 鳥居 誠