小泉 今日子
koizumi kyoko
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2026.05.11
NEWKK60 ~コイズミ記念館~ 武道館公演ライブレポート
年齢なんてただの数字。とはいうけれど、「KK60(小泉今日子60歳)」にして「初」の日本武道館単独ライブ。60歳の節目に「初めて」がめぐりあうなんて、デビューした44年前に予言できた人はいない。でもこれは運命的には必然だったのかもしれない。
DJ高木完がかけた「イマジン」(RCサクセションによるカバーで、日本語訳は忌野清志郎)が鳴り響くなか客電が落ち、360度全座席を開放した日本武道館が、真っ赤なペンライトで染まった。それは還暦の色である赤。今回のキーヴィジュアルのひとつにも選ばれた、初めてのベスト・アルバム『Celebration』(1984年)の赤。あの頃、ひとりの“真っ赤な女の子”が、それまでのアイドル歌手の常識を破り始めた、そんな思い出の色。
「KK60」をかたどった大きなネオンサインがゆっくりと上昇すると、「ビューティフル・ネーム」が始まった。小泉今日子・高木完・上田ケンジによるユニット、シン・コイズミックスプロダクションズの新曲(ゴダイゴのカバー)だ。スクリーンを使ってのライブ・ペインティングを担当するのはEd TSUWAKI。「Come On!」のひと声で、続いて「恋のブギ・ウギ・トレイン」になだれこむ。これってつまり、小泉今日子のオープニング・アクトを、シン・コイズミックスプロダクションズが務めるってこと。なんて粋な演出なんだろう!
いきなりクライマックスに達した日本武道館。ここから小泉今日子の記念すべきライブはリスタート。その1曲目に選ばれたのは、隠れた名曲「Celebration」。ベスト・アルバム『Celebration』のために書き下ろされた隠れた名曲で、文字通りこの素晴らしい日に集ったみんなを祝福(セレブレーション)する。そして「なんてったってアイドル」へ。このシングルが発売されて今年で41年。「アイドルはやめられない」のフレーズが、これほど誇らしく響く日が来るとはね。
続く「キスを止めないで」で気がついた。ステージ真後ろの2階席、やけにペンライトの動きが揃ってないか? そのときだった。「小泉、夢です」と大書きされた横断幕がびらっと張り出され、緑のハッピを着た親衛隊の姿にスポットライトが当たる。サリー・バディーズと紹介されたその人たちは、小泉今日子のデビュー当時からコンサートでコールを続けていた親衛隊の当事者であるヒロミさんと、彼女と出会った現代の女性ファンたちが結成された、いわばシン・親衛隊! そこから「私の16才」「素敵なラブリーボーイ」「春風の誘惑」「半分少女」「渚のハイカラ人魚」「ヤマトナデシコ七変化」のメドレーミックスで往年の名物コールの再現タイム。最後は、バンドの生演奏に合わせて「The Stardust Memory」。最初に起きた驚きと爆笑は、彼女たちのまっすぐな愛の力によって化学変化、やがて1万人の大コールになって爆発した。
「夜明けのMEW」「木枯しに抱かれて」そして、もう完全に最強のロック・バンドとしか思えない「学園天国」と、このまま武道館ライブが終わってもおかしくないくらいの名曲オンパレードで前半は終了。ブレークタイムは「KKPP」ツアーでも恒例だった「夏のタイムマシーン」を流しながらの、スクリーンでは懐かしの写真タイム……と思いきや、途中から写真に映る幼いキョンキョンが動き出した!(場内騒然) これがAIってやつか、と進化に驚きつつ、テクノロジーは良い方向で使おうよっていう提案なんだなとも思う。
衣装替えをしての後半は、上田ケンジのギターを伴奏にした「私の16才」のアコースティック版。「キョンキョン」から「KYON2」時代のモードへ。いわゆる四つ打ちにリアレンジされた「艶姿ナミダ娘」からの「水のルージュ」、そして近田春夫作の時代を超えたハウス名曲「Fade Out」へ。陶酔のダンス・タイムを終え、今度はピアノ(渡辺シュンスケ)だけをバックに「優しい雨」。
ここまで14曲を歌い終えて、初めて彼女は語り始めた。MCタイムって、ここまでなかったんだ。おなじみのバンド・メイトとの歌と演奏が、MC以上に雄弁に「今、小泉今日子がやりたいこと」を語っていたから気がつかなかったんだ。「仲間がいるから」と彼女は繰り返し言う。だから、まだまだ新しい曲が生まれるし、まだまだこれからも歌いたい。5/4に配信されたとびきりの新曲「バディ」、アルバム『Koizumi Chansonnier』(2012年)から「Sweet & Spicy」、そしてドラマ『最後から二番目の恋』シリーズのエンディング・テーマ「T字路」と「ダンスに間に合う」(5/3の客席には、長倉和平ご一行が!)。
ノスタルジーではなく、つい最近生まれた名曲がライブのハイライトになる。そんな60歳のアイドルいます? 本編ラストも、本音で生きる小泉今日子だからこそ、揺れる時代にこれを歌わずにはいられない。「東の島にブタがいた vol.3」!
そういえばMCタイムで、還暦を迎えるにあたっては身構えていたけど、肝心の誕生日は前の日に早く寝てしまって、起きたら普通に還暦がやって来ていたと語っていた。ひとつの節目になると感じていたことが、実は単なる通過点だった。特別なことを普通のことへ。逆に言えば、誰にとっても、いつもと同じような日が特別な時間にもなり得るってことじゃない?
今日この日本武道館で鳴っている音楽も、ここに集ったお客さんも、実はここだけにしかない特別な時間の賜物。そして、私たちみんなにそれぞれの「ビューティフル・ネーム」があって、「仲間がいる」。歌手としてコンサートを再開した小泉今日子がいつも感じていて、それを見ているわれわれが受け取り続けているのは、そういう当たり前の喜びを見て聴いて感じることなんだと思う。
「今この瞬間が奇跡のようなものだと思いませんか?」
そう伝えて、アンコールで小泉今日子は「あなたに会えてよかった」を、そして、「約束のような歌」として「100%」を歌った。
「とびきりカワイイおばあちゃんに 絶対なるから」
文:松永良平(リズム&ペンシル)
撮影:田中聖太郎・河村美貴
