杏沙子
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2019.02.13

アルバム『フェルマータ』全曲セルフライナーノーツ公開!

杏沙子、1stアルバム『フェルマータ』/セルフライナーノーツ

1.着ぐるみ  作詞 作曲 幕須介人

「作詞作曲は、(新進気鋭の作家)幕須介人さん。幕須さんからこの曲が届いたとき、私の性格が見透かされているみたいで、ちょっと怖かったです(笑)。“自分はこうしたい”とか“本当はこう思ってる”ってことをハッキリ人に言うのって、私にはけっこうエネルギーのいることで。弱っているときは、人と目を合わせて話すだけで疲れちゃうこともある。そんなときに“着ぐるみのなかで言いたいことを言えたら理想的だな”って思ったりするんですけど、でもそれじゃ幸せは得られない。そういうジレンマを抱えていたときにこの曲が届いて、“これ、私のことだな”って思って。“もっと正直になりたい”ってモヤモヤしている私のことを幕須さんは見抜いているんだなと驚きました。でもこの曲は最後、着ぐるみを脱ごうと決意するところで終わる。そこが自分にはすごく響きましたね。ポップな曲調なので、前向きに着ぐるみを脱ごうって思える。軽く聴けるけど、その内容には共感してくれる人がきっといるんじゃないかなって思ったので、ちゃんと言葉が伝わるよう意識して歌いました」


2.恋の予防接種  作詞 作曲 杏沙子

「恋愛すると、人はみんな病に侵されたような感じになるじゃないですか。“苦しいんだけど楽しい”みたいになって、ヘンな熱が出ちゃったりして。そういう気持ちに自分が振り回されたりもするんだけど、対応策はないんですよね。そんなことを考えているときに、両親が言ってたことを思い出して。よく両親が『いい人と結ばれるためには、いい恋をたくさんしないとダメ。予防接種をたくさん打っときなさい』って、半分ふざけて言っていたんです。それを思い出して書きました。で、曲もできたときに、スカのリズムにしたら面白いなって思って。恋愛して発熱して、ちょっとおかしくなってる感じを盛り込みたかったので、横山(裕章)さんにはそういうアレンジにしていただいたんです」


3.ユニセックス  作詞 作曲 幕須介人

「“着ぐるみ”に続いて、これも幕須介人さんが作ってくださった曲。黒か白のどちらかに決めなければならないことが多い世の中で、あえてグレーゾーンでフワフワすることの楽しさを歌ってます。黒か白かみたいなところで疲れちゃってる人ってたくさんいると思うんですよ。だからそこを飛び出して、曖昧なところに身を置いて直観で楽しんじゃおう!と。私もそうやって生きたいと思う瞬間があるし、誰しもそういう願望ってあるんじゃないかと思うんです。そういう願望が強い人ほど響く曲じゃないかな。エレクトロポップっぽい曲だけど、イントロで名越(由貴夫)さんがいきなりギュイ~ンってギターを入れてくださって。それもこの歌詞で伝えたいことに合っているように思えて、気に入ってます」


4.チョコレートボックス  作詞 杏沙子 作曲 宮川弾

「誰かにメロディをもらって、そこに自分が歌詞をつけるというのを“半透明のさよなら”で初めてやったんですが、この曲もそのやり方で作った曲。自分で作詞作曲していたら英語詞は入れなかったと思うけど、宮川(弾)さんのこのメロディには英語詞が合いそうだなと思って。じゃあ、何を書こうかって考えたときに、映画を観たんですね。何を書くか迷ったときに私はよく映画を観るんですけど、そのときは『フォレスト・ガンプ』を観た。そのなかで主人公フォレストのお母さんが亡くなる前に言うセリフがすごく印象に残ったんです。それが“Life is a box of chocolates”。人生はチョコレートボックスのようなもので、開けてみないと何が起こるかわからない。それって恋愛にも言えることだなと思って、それをテーマに歌詞を書きました。レコーディングはアレンジをしてくださった冨田(恵一)さんのおうちでしたんですよ。フワフワした感じで歌うのがいいのか、しっかり歌うのがいいのかで悩んだんですけど、冨田さんに相談して、1曲の中でグラデーションのように声色を少しずつ変えて歌ってみることにしました」


5.よっちゃんの運動会  作詞 杏沙子 作曲 山本隆二

「この曲はもともと、山本隆二さんが作ったインストの音源があって、それを聴いたときにすごく好きになり、そこに歌詞をつけてみようということになったんです。その音源に“よっちゃんの運動会”というタイトルがついていて、初めは変えようと言ってたんですけど、実際、運動会っぽいから、遊び心でそのままいこうと。楽器もバスクラリネット、チューバ、フルート、バスーンといろいろ重ねて、こんなふうに楽しい曲に仕上がりました。歌詞は、何かがどんどん展開して進んで行く冒険物語みたいなものを、なぞなぞみたいにして書いてみようと思って。初めは雲の中にいて、おしりをたたかれ雲から飛び降り、森の中に落ちて、魚と出会って鬼ごっこをする……。なんのことかわかります? ブラックホールのような排水管に飲み込まれ、やがて街から港を通って海に混ざり、結局蒸発してまた雲の中……っていう輪廻を歌詞にしてみたんです」


6.ダンスダンスダンス  作詞 作曲 杏沙子

「たまたま耳にした曲を聴いていて、“こんな感じのファンクっぽい曲で、ラップみたいなことをやってみよう”と思い立ってやってみたら、自分でもびっくりするくらいスラスラと書けた。“未読スルー 既読する?”とか韻を踏むのが楽しくて、ニヤニヤしながら書いてましたね。ちょうど友達から彼氏の愚痴を聞かされてた時期だったので、それに自分の体験を混ぜながら書いてみようと。好きな相手に対していろいろ言いたいことがあって感情がグルグルしてるんだけど、結局は好きだから許してしまう。女の子ってそういうところがあるんですよ。ラップみたいなことをやったのは初めてだったけど、すごく楽しめたので、またこういう曲をやりたいなって思ってます」


7.アップルティー  作詞 作曲 杏沙子

「実体験ではないけど、高校時代のあのキラキラした青春っぽさを曲に落とし込みたいと思って書いた曲。日常のふとしたことから妄想を膨らませて物語にするのが好きで、これもそうやって作った1曲です。もともとインディーズで2016年に自主制作したシングルに収録されていた曲だけど、新しいエッセンスを加えて再レコーディングしました。ちょっとロックっぽい要素も加わったし、歌い方も変えている。前の歌い方を残すのではなく、今の自分が歌いたいように歌ったら、こうなったという感じですね。もともとYouTubeやSNSで中高生のみなさんにいっぱい聴いてもらえた曲だったけど、今回、少し大人の味も加わったかな。アップデートされて、心地いい変化のニュー・アップルティーになったと思います」


8.半透明のさよなら  作詞 杏沙子 作曲 宮川弾

「曲をいただいてから歌詞をつけるということを初めてやったのがこの曲。宮川(弾)さんのメロディがすごくキレイで、聴いていたらサビの部分の“半透明のさよならを~”というフレーズが自然に浮かんできて、そこから書いていきました。自分で書いた歌詞のなかでも、これは特に好き。主人公が自分と近い存在に感じられるから。全体的に“ふんわり悲しい”のが、私にとっても心地いいんです。音からは冬の朝の情景や空気感が感じられるし、切なさ、甘酸っぱさもある。色に譬えるなら淡い水色かな。ほかの曲とは違う私を見せられると思ったので、歌い方にも拘りました。フっと消えてしまいそうな気持ちを声で表現できればと思って」


9.天気雨の中の私たち  作詞 作曲 幕須介人

「昨年7月にリリースしたデビューミニアルバム『花火の魔法』の1曲目を飾っていた、私にとってのスタートダッシュのような曲でしたけど、今回アルバムのこの位置に収められたことで聴こえ方が変わったような気がします。作詞作曲は幕須介人さん。幕須さんの書く女の子に自分が投影されているような気がして、まるで自分が書いたかのように歌うことができた曲でしたね。予想外の出来事に不安を感じる人はたくさんいるだろうし、怖くなって進めなくなっちゃう人もいると思うけど、この女の子はそこにワクワクを感じてずんずん進んで行くエネルギーを持っている。私も未来に対してマイナスのイメージを抱くことがほとんどない前向きな人間なので、すごくしっくりくるんです」


10.おやすみ  作詞 作曲 杏沙子

「インディーズ時代からあった曲を、再レコーディングしました。とても大事な曲。自分の恋愛観が一番正直に出ている曲かもしれない。ピアノの山本隆二さんと私のふたりだけで、せーので録りました。クリックもなし。インディーズのときのものとは歌い方がだいぶ変わってるんじゃないかな。あの頃とは考え方も恋愛観も変わってきていて、最初に録ったときはフワフワしたところがあったけど、今の自分は地に足をつけて、もっとちゃんと“好きだよ”って言えると思うし。ライブでもよく歌っている曲ですけど、毎回歌い方が変わるのは、自分の恋愛観も少しずつ変わってきているから。そのときの自分が素直に歌に表れる曲なんです」


11.とっとりのうた  作詞 作曲 杏沙子

「去年の夏に故郷の鳥取に帰って、この歌詞の通り缶ジュースを買い、家の近くの湖山池でぼーっと時間を過ごしていたんです。それは私にとって一番癒される時間で、中学の頃からよくそうやって湖山池の夕日を眺めて過ごしていた。そこにはただ自分と湖山池だけがある感じで、素直に自分と向きあえるんです。その感覚とそこで思ったことをそのまま歌にしてみよう、自分のためだけに自分の曲を書こうと思ったんですよ。一時期、たくさんの人に聴いてもらえるようにってことをすごく意識して歌詞を書いていたことがあったけど、それがちょっと窮屈に思えてしまって、“紛れもなくこれが自分の歌です!”って言える曲を書きたいと思った。そんな“自分の歌”に、レコーディングでは美央stringsのみなさんが心を込めて寄り添うように演奏してくださって、幸せを感じました。あと、アウトロで名越さんがポロンポロンとギターを弾いてくださったんですけど、最終便に乗って離れていくときの鳥取の街の景色が自分のなかでその音に重なって、初めてレコーディングの途中で泣きました。“ここには何もない”ってずっと思っていたんですけど、でも何もないから“そこだけにある”ものに気づけるんだし、それは私にとっての誇りなんだなって。この歌を書いてから、強くそう思えるようになったんです」

(構成:内本順一)

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