地球の男にあきたところよ ~阿久悠リスペクト・アルバム

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2017.12.14

リスペクトコンサート:オフィシャルレポート

開演前から客席には高揚感が漂っていた。会場となった東京国際フォーラム・ホールAに詰めかけた大勢の音楽ファン(2日間で約7,000人)が、歌謡曲黄金時代を築いた不世出の作詞家の「没後10年・作詞活動50年・生誕80年」のメモリアルコンサートを、今や遅しと待ち構えていたからだ。場内にはこの日の主役・阿久悠が残した未発表詞の中から、今年楽曲化された新曲10曲(11月15日にレコードメーカー8社が発売した全9タイトルのアルバムに収録)がBGMとして流され、間もなく開幕する歴史的祭典への期待をいやがうえにも盛り上げる。

やがて照明が暗転。ステージ上のスクリーンには在りし日の阿久の写真、続いて11月15日発売のトリビュート・アルバム『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』に収録された「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」の直筆歌詞が映し出された。いよいよ世紀の公演の始まりである。

16歳の天才ピアニスト・奥田弦の演奏に乗せて、リリー・フランキーが朗読する「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」は、数百篇に及ぶ未発表詞のなかの1作。生前の阿久は「ウォークマンの登場で、個人がイヤホンで音楽を聴く時代となり、歌が空を翔ばなくなった」と語っていたが、本作では「街や空を、ふたたび歌で満たそう」と綴っている。阿久の魂を歌い継ぐリスペクトコンサートの幕開けに相応しい作品といえるだろう。

そして舞台下手からトップバッターの歌手が登場。初日は八代亜紀の「舟唄」(79年)、2日目は岩崎宏美の「ロマンス」(75年)が歌唱されると、会場のボルテージは一気に高まった。

以後は“圧巻”と形容するしかない名唱・名演の連続。なにせ紅白出場歌手が2日間で12組、そのうちトリ経験者が5組という豪華アーティストの共演だ。人気・実力を兼ね備えた一流の歌い手たちが、この日のために結成された阿久悠メモリアルオーケストラの壮麗な演奏のもと、自身の代表作を惜しげもなく披露してくれるのだから、テンションが上がらないわけがない。

しかもステージ中央に設置されたスクリーンには、時に直筆原稿を交えた歌詞が映し出されるため、お馴染みのヒット曲を口ずさみながら「この歌はこういう意味だったのか!」「4番があることを初めて知った!」という発見や驚きもある。歌詞と歌い手にスポットを当てたシンプルなステージは作詞家のコンサートならではの嬉しい演出で、観客は一気に阿久悠ワールドへと引き込まれた。

2日間で総勢20組のアーティストが延べ57曲(メドレー曲を含む)を披露した今回のリスペクトコンサートだが、存在感を示したのはやはりベテラン。曲間のトークでは、阿久との交流や、提供作品への想いが語られ、歌にも自然と力が入る。なかでも「この曲がダメなら歌手をやめようと思っていた。イメージチェンジを果たせた宝物のような曲」と語り、「どうにもとまらない」(72年)と「狙いうち」(73年)を往時と変わらぬパワフルなパフォーマンスで魅せた山本リンダや、「阿久さんとは一緒に飲んだ記憶しかない」と笑わせつつ、今やスタンダードナンバーとなった名曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」(72年)を熱唱した和田アキ子には割れんばかりの拍手と歓声が送られた。

もちろん、会場を沸かせたのはベテランだけではない。今回のコンサートにはオリジナル歌手のみならず、阿久の作品をカバーしたことがあるアーティストや、さらに次の世代へと継承していく若手の実力派も多数参加。その代表が、ピンク・レディーの増田惠子とのコラボで「UFO」(78年)を歌い、踊ったMAXの4人や、類まれな表現力で「ジョニィへの伝言」と「五番街のマリーへ」(ともに73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)を歌唱した新妻聖子だった。また若手実力派で俳優としても活躍する松下優也は、沢田研二の「勝手にしやがれ」(77年)と西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」(81年)をカバー。ペンライトを振る若いファンから黄色い歓声が飛ぶ一方、中高年世代からも大きな拍手が送られるなど、世代を超えた絆が生まれるステージとなった。

そしてもう1つ、今回のコンサートで特筆すべき点として、かつてのヒット曲・名曲のみならず、阿久の未発表詞による新曲も披露されたことも挙げておかねばなるまい。歌手生活48年目のベテラン・北原ミレイが歌う「恋は砂時計」(作曲:田尾将実/『阿久悠メモリアル・ソングス~私は話してみたかった』収録)、稀代のクリスタルボイスで“泣き歌の貴公子”とも呼ばれる林部智史が歌う「この街」(作曲:吉田拓郎/『地球の男にあきたところよ~阿久悠リスペクト・アルバム』収録)、東海地方出身のエンターテインメント集団、BOYS AND MENによる「友ありて・・」(作曲:都倉俊一/12月20日発売のアルバム『友ありて・・』収録)、そして本コンサートが初告知・初披露となった増田惠子の「最後の恋」(作曲:加藤登紀子/2018年2月CD化予定)。

4曲ともこのメモリアルイヤーに楽曲化されたホヤホヤの新曲だが、いずれも歌い手にマッチしたメッセージ性の高い詞で、「これぞ阿久悠!」と思わせる作品ばかり。当の阿久は他界して10年となるが、残された作品群は時代も世代も超えて、いつまでも色あせぬ言葉を唇に乗せてくれるに違いないと確信させてくれた。

「いつまでもこの場にいたい」。歌謡曲ファンならそう感じたであろうコンサートを締めくくったのは、初日は五木ひろし、2日目は森進一の両ベテラン。五木は阿久との初仕事で自身が作曲を手がけた「契り」(82年)を、森は同名映画の主題歌で日本作詩大賞を受賞した「北の螢」(84年)を熱く歌い上げ、まるで紅白歌合戦のエンディングのような感動をもたらした。

フィナーレは出演歌手全員がステージに登場し、初日は「青春時代」(76年/オリジナル歌唱:森田公一とトップギャラン)、2日目は「また逢う日まで」(71年/オリジナル歌唱:尾崎紀世彦)を観客とともに合唱。歌い手と聴き手が一体となったスペシャルイベントは熱気に包まれたまま幕を閉じた。

(文:濱口英樹)






>>オフィシャルステージPhoto(1)
>>オフィシャルステージPhoto(2)


<セットリスト>
■11月17日(金)
OP「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」朗読:リリー・フランキー(2017年)
M1「舟唄」八代亜紀(79年)
M2「雨の慕情」八代亜紀(80年)
M3「たそがれマイ・ラブ」大橋純子(78年)
M4「時の過ぎゆくままに」林部智史(75年/オリジナル歌唱:沢田研二)
M5「この街」林部智史(2017年)
M6「ピンク・レディー・メドレー Ver.A」MAX(オリジナル歌唱:ピンク・レディー)
「S・O・S」(76年)~「渚のシンドバッド」(77年)~「サウスポー」(78年)~「UFO」(77年)
M7「ざんげの値打ちもない」北原ミレイ(70年)
M8「恋は砂時計」北原ミレイ(2017年)
M9「狼なんか怖くない」石野真子(78年)
M10「日曜日はストレンジャー」石野真子(79年)
M11「宇宙戦艦ヤマト」ささきいさお(74年)
M12「時代おくれ」ささきいさお(86年/オリジナル歌唱:河島英五)
M13「闘牛士」Char(78年)
M14「気絶するほど悩ましい」Char(77年)
M15「五番街のマリーへ」新妻聖子(73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)
M16「ジョニィへの伝言」新妻聖子(73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)
M17「どうにもとまらない」山本リンダ(72年)
M18「狙いうち」山本リンダ(73年)
M19「さらば涙と言おう」ゴスペラーズ(71年/オリジナル歌唱:森田健作)
M20「熱き心に」ゴスペラーズ(85年/オリジナル歌唱:小林 旭)
M21「笑って許して」和田アキ子(70年)
M22「あの鐘を鳴らすのはあなた」和田アキ子(72年)
M23「居酒屋」五木ひろし&木の実ナナ(82年)
M24「契り」五木ひろし(82年)
M25「青春時代」出場歌手全員(1976年/オリジナル歌唱:森田公一とトップギャラン)

■11月18日(土)
OP「いずこ~ふたたび歌を空に翔ばそう」朗読:リリー・フランキー(2017年)
M1「ロマンス」岩崎宏美(75年)
M2「思秋期」岩崎宏美(77年)
M3「勝手にしやがれ」松下優也(77年/オリジナル歌唱:沢田研二)
M4「もしもピアノが弾けたなら」松下優也(81年/オリジナル歌唱:西田敏行)
M5「最後の恋」増田惠子(2017年)
M6「ざんげの値打ちもない」北原ミレイ(70年)
M7「北の宿から」北原ミレイ(75年/オリジナル歌唱:都はるみ)
M8「失恋記念日」石野真子(78年)
M9「わたしの首領(ドン)」石野真子(78年)
M10「逆光線」Char(77年)
M11「気絶するほど悩ましい」Char(77年)
M12「どうにもとまらない」山本リンダ(72年)
M13「狙いうち」山本リンダ(73年)
M14「フィンガー5メドレー」BOYS AND MEN(オリジナル歌唱:フィンガー5)
「恋のダイヤル6700」(73年)~「個人授業」(73年)~「学園天国」(74年)
M15「友ありて」BOYS AND MEN(2017年)
M16「たそがれマイ・ラブ」大橋純子(78年)
M17「五番街のマリーへ」新妻聖子(73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)
M18「ジョニィへの伝言」新妻聖子(73年/オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス)
M19「ピンク・レディー・メドレーVer.B」MAX(オリジナル歌唱:ピンク・レディー)
「カルメン`77」(77年)~「ウォンテッド(指名手配)」(77年)~「ペッパー警部」(76年)
M20「UFO」増田惠子 & MAX(78年/オリジナル歌唱:ピンク・レディー)
M21「能登半島」石川さゆり(77年)
M22「津軽海峡・冬景色」石川さゆり(76年)
M23「さらば友よ」森 進一(74年)
M24「北の螢」森 進一(84年)
M25「また逢う日まで」出場歌手全員(71年/オリジナル歌唱:尾崎紀世彦)

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