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2008.08.18

ajiaco! the remix album ライナーノーツ掲載!(前編)

<ajiaco! the remix albumライナーノーツ 前編>

 キューバに革命が起きず、それまで盛んに行われていたジャマイカとの音楽交流がそのまま進んでいたらどんな音楽が生まれていたのだろう?――世界中の音楽マニアがアルコール片手に繰り広げているであろうそんな妄想を、本当に実現させてしまったスカクバーノ。彼らの音を、僕はチリ・サンチアゴの空港の売店で聴いたことがある。スペインのバルセロナやアルゼンチンのブエノスアイレスのレコードショップでプッシュされているところも見かけた。
 ギャズ・メイオール率いるトロージャンズの元メンバーであり、自身のバンドであるトップ・キャッツでもルーディーなスカを聴かせていたナッティ・ボー。彼の妄想からスタートしたスカクバーノは、当初ナッティのアイデアを形にするプロジェクトとしての性格が強かったように思う。だけど今や彼らは、世界中を忙しく回り続け、各国からライヴのオファーを受ける人気バンドとなった。2008年の夏だけでもフランスやスペインなど欧州の近隣諸国、ポーランドなど中欧圏、そして北アフリカのモロッコなども回る予定だというし、その後は日本でも再来日公演を行うことになっている。おそらく、このように各国から支持されることなど、スカクバーノをスタートさせた当初のナッティはイメージすらしていなかったのではないだろうか。それは「キューバ音楽とジャマイカ音楽のミッシングリンクを埋める」というアイデアが世界中で効力を持っていたことの証明でもあるのだろうし、なによりも――そんなまどろっこしい表現をするまでもなく――スカクバーノのライヴがどんな国のどんな人が観ても、無条件に「楽しい!」と思えるものだったからなのだろう。
 この『ajiaco! the remix album』は、そうしたツアーを通じて出会ったさまざまな国々のクリエイターたちとのリンク、そのなかから生まれたアルバムと言えそう。だから、僕には「スカクバーノの旅の報告書」、そんな風に見えたりもする。
 全14組のリミキサーは、トラディショナルな音楽のなかに風変わりなセンスを持ち込んで、オリジナルなスタイルを作り出している人物ばかり。90年代にはタルヴィン・シンなどが各種伝統音楽と現代のエレクトロニック・ミュージックの融合を試みていたけれど、2000年代に入ってその融合はさらに複雑に進化し、各地でフレッシュな音が誕生している。シャンテルが主宰するエッセイ・レコーディングス周辺、ニコデマスを筆頭にしたNYのワンダーウィールの面々、イスタンブールのダブルムーン・レーベル界隈、アルゼンチンのデジタル・クンビア……ナポリでもメキシコ・シティでもボゴタでもムンバイでもソウルでも、そしてここで書き切れないほどの多くの都市でも、そうした「新たなフュージョン」が進んでいる。スカ・クバーノ自体、そうした流れとリンクしたところもあったわけだけれど、今回集まったリミキサーもまた、そんな2000年代らしいスタイルを標榜する面々が集まっている。ただし、正直なところ、――僕の勉強不足ゆえかもしれないけれど――今回のリミキサーでその名前を知っていたのは、クリス・フランク、DJパンコ、DJドローリスぐらい。そのほかのメンツは、今回その名を初めて聞いた。つまり、誰もが知る有名リミキサーを並べたわけではなく、ナッティ・ボーが世界中を回るなかで出会った面々が集結した、そんな印象だ。
 ということで、以下に各リミキサーを簡単に紹介しておくけれど、Myspace上のプロフィールぐらいしか情報がなかったリミキサーもいる。アップされた音源を聴いてみたらかなり格好いいものも多かったので、みなさんもぜひチェックしてみてほしい(それぞれのMyspaceを彷徨いながら、一気にフレンド申請をしてしまった!)。

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