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2008.08.18

ajiaco! the remix album ライナーノーツ掲載! (後編)

<ajiaco! the remix album ライナーノーツ (後編)>

 牧歌的でチャーミングに“Cachita”をイジってみせたハビP3zは、デジ・オンセやハビP3zオーケストラなどいくつかの名義を使い分けるハビエール・ビセンテ・カルデロンのソロ・ユニット。スペインはバスクを拠点にしているようで、同じくスペインのアンパラノイアやフェルミン・ムグルサのリミックスなども手掛けてきた。かつてはピチカート・ファイヴの“Trailer Music”もリミックスしていたりと、その活動フィールドは幅広い。
 90年代からイギリスのダンスホール~ヒップホップの作品にエンジニアとして関わっていたコリン・ペニントン aka ザ・シー。現在は自身がバンドリーダーを務めるラテン・ダブ・バンド、ラテン・ダブ・サウンドシステムとしても活動中で、今作に収録された“No Me Desesperes”のリミックスは、このバンドの作風に近い。
 ラス・ジョーンズとロック・ハンターの2人によるユニットがラスン・ロック。どちらもイギリスのアンダーグラウンド・クラブ・シーンの重鎮とも言うべき存在で、特にハックニー・グローブトロッター名義でも活動するラスは、良質なブラジリアン・ビーツを多数量産してきたファー・アウト・レコーディングスの創始者のひとりとしても知られている(ハックニー~名義では、2008年のフジロック・フェスティヴァルにも出演予定)。今作収録の“Oye Compay Juan”リミックスも、後半に進むに従ってジャングル風に展開していく格好いい仕上がり。
“Coqueteando”にダビーなクンビア調リミックスを施したセニョーロボ&パブロ・サンチェス の2人も、DJフローロやアレックス・アコスタと同様にスペインのラヴモンク界隈で活動しているDJ/リミキサーのようだ。セニョーロボはレーベルメイトのウォッチTVと共にクァンティックのリミックスを手掛けたりもしている(こちらの12インチもラヴモンクから)。
 ギリシャの首都、アテネで活動するプロデューサー/リミキサー/キーボーディストのストラットマンは、“Tabu”をリミックス。彼はいくつかのロックバンドで活動した後、2000年にクランデスティノス(バンド名はマヌー・チャオのあのアルバムから?)を結成し、ギリシャのトラディショナル・ミュージックをダウンテンポ調のエレクトロニック・サウンドとフュージョンさせたスタイルを確立している。また、ソロ名義でもギリシャ古典をリミックスした『Demotic Remix Greeks & Indians vol.1』を発表するなどして、ギリシャの音楽シーンに新しい風を吹き込み続けている。
 続く彼は、自身名義のアルバム『1 Real』が日本盤化されたりもしているので、知っている方も多いはず。ノルデスチと呼ばれるブラジル北東部の音楽をブレイクビーツ解釈でアップデートするDJドローリス。まさにノルデスチど真ん中、レシーフェの出身だ。ヨーロッパでの人気もかなりのもので、スイスのパレオ・フェスティヴァルなどの有名フェスにもブッキングされている。ベースの効いたファンキーなブレイクビーツに仕上げられた“Chango”のリミックスも聴きもの。
 日本盤ボーナストラックとして収録された“Revolutionary Ska”のリミックスを担当しているのはDJスクラッチ。彼はおそらく今回のリミキサーのなかで一番のベテランとなるであろう人物で、何と78年から80年までクラッシュのツアーDJを務めていたという。2004年にトロージョンからリリースされた2枚組レゲエ/スカ・コンピ『Scratchy Sounds : Ska, Dub Roots & Reggae Nuggets』のコンパイルを手掛けているのも彼。ドン・レッツあたりと同じように、パンクとレゲエの繋がりが強いイギリスならではのDJと言えるかも。
 日本盤に収録されているのは、この全16曲。ちなみに、アルバム・タイトルにある「Ajiaco」(アヒアコ)とは中南米諸国で食べられるスープの名前で、コーンやチキンなんかをブチ込んで煮込んだ家庭料理。気取った料理ではないけれど、不思議とクセになる味だ。このリミックス・アルバムもまた、アヒアコのように人懐っこい美味しさがあって、僕などはついついおかわりをしたくなってしまうのだった。 

大石 始

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