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マテリアルクラブ

「テキスト版 放課後マテリアルクラブ」第1回

小出&三宅:こんばんはー。

小出:『放課後マテリアルクラブ』という番組です。

三宅:第1回、よろしくお願いいたします。

小出:よろしくお願いします。小出祐介です。

三宅:ライターでQ2 Recordsを主宰してる三宅正一と申します。よろしくお願いします。

小出:はい!

三宅:こいちゃん、この間Instagramのストーリーズで質問に答えてたじゃない?質問ありますかって。

小出:ゲリラ豪雨に見舞われたもので。

三宅:あのとき、ちょっと1個気になったことが……。傘盗まれそうになった話。

小出:はいはい。ありましたね。

三宅:あんな世知辛いこと、あるんだなと思って。

小出:ビックリしました。ゲリラ豪雨に見舞われたんですけど、傘を持ってなかったもんで、駅出てすぐの目の前のコンビニで買ったんですよ。その傘を持って、しばらく待機してたんですけど、結局しばらく雨が止まなかったものですから、某ハンバーガーショップに入って雨をやり過ごそうと。30分ちょい待ったんですよ。やっと雨が小雨になって、傘も機能する程度の雨になり。その傘をさしてマテリアルクラブの作業しているスタジオに向かったんですね。徒歩10分くらいですかね。途中にコンビニがあるんで、飲み物を買って行こうと思って立ち寄ったんですよ。で、コンビニの傘立てに買いたての傘をさしました。

三宅:買いたてのね(笑)。

小出:まだ何メートルかしかさしてない傘ですよ。それを傘立てにインしました。飲み物を買いました。レジで会計しました。さぁ行こーうって思ったら、傘立てに俺の傘がないんですよ。あれ?と。「俺、ここに傘差したのにな……」って思って目の前を見たら、2〜3歳ぐらいの女の子を連れたお父さんがいて、そのお父さんが俺の傘をブワッて開けてさした瞬間だったんですよ。一瞬、僕の中でスローモーションになって。

三宅:なるよね。

小出:これを僕が「いやいやいや……」って言ったら、娘さんの手前お父さん恥をかくんじゃないかな……と、一瞬思ったんだけど、俺は娘さんに、お父さんが傘をパクるというのを普通にやるような家庭で育ってもらいたくないっていう、そっちのほうが上回っちゃって。

三宅:おぉ〜。

小出:それで、傘をさしたお父さんに向かって「すみません。それ僕の傘なんですけど」って。お父さんどうやって返してくるのかなって思ったら「あっ、そうですか。おかしいな」って。

三宅:うわぁ〜。

小出:傘を返してくれて。小さい女の子はまだあんまりわかんないから「へへへへ〜」みたいな感じで。俺はせつねぇなーって思いながら。

三宅:『ごっつ(ええ感じ)』のトカゲのおっさんを思い出すような。切ない感じだよね。でも、コンビニで僕もよく傘盗まれるんですけど、安土桃山時代じゃないんだから、こんな平成の世でね、そんなすぐに人の傘をポンポン盗りにいくっていうのは、やめてもらいたいなっていうのは思ってますけど。

小出:安土桃山時代のほうがもっと厳しかったと思う。そういう意味では。

三宅:そういう意味ではね(笑)。

小出:傘を盗られるっていうことが、致命的なこともあるから。

三宅:そんな中……。

小出:そんな世知辛いことも乗り越えて、昨日マテリアルクラブのファーストアルバムが完パケ。完パケっていうのは、完全に仕上がりましたってことです!マスタリングまで終わりました!!ありがとうございます。

(拍手)

小出:……ってところまで来てもですよ。この配信を現在ご覧のほとんどの方が、「マテリアルクラブって何?」と思ってると思います。

三宅:小出さんもわかってないかもしれないです。

小出:なんだったら、俺しかわかってないかもしれないくらいの感じ。

三宅:確かに(笑)。

小出:今夜はマテリアルクラブという僕が新たに始めました──これ、文言も重要なんですよね。『ソロでもなくバンドでもなくユニットでもなくグループでもなく 新音楽プロジェクト』。それがマテリアルクラブである、と。
で、アルバムが出ますよ、と。ほんとそれくらいのことしか言ってなかったんですけど、マテリアルクラブというものの概要。ちょっとまだ全部は……現段階では言えないこともあるんですけど。

三宅:そうなんですよ。

小出:マテリアルクラブというものが、そもそもどういうふうに成り立ってきたのか。そして、現在があるのかっていうことを今夜は、三宅さんと紐解いて行こうかな、と。

三宅:そうだね。あの……これも世知辛いんですけどね、情報解禁とか色々ありまして。一気には言えないっていう心苦しさも持ちながら……。あと、言っちゃいけないことを口走らないようにしなきゃいけないという緊張感も持ちながら……。

小出:LINE LIVEさんで今回配信させていただいてるので、その他の競合になる……(笑)。

三宅:とかね(笑)。

小出:そういうものの名前は一切出さずに!

三宅:小出さんすごいですよ視聴者が6800(人)って出てるよ!

小出:本当だ!ありがとうございます!

三宅:すごいね〜。

小出:コメントもこちらでも見てますので、気が向いたときに読んだりとかってこともあったりなかったりとか。

三宅:「小出さん、髪切りましたね」、さっき控室で切ってましたね。「こんばんは」、よろしくお願いします。このLINE LIVE は全3回にわたって行われる予定です。

小出:今のところはその予定ですね。

三宅:徐々にいろんなことが明らかになっていくと思うんですけど、まずはそもそもの話からすると……。

小出:どこから始まったのか。

三宅:そうですね。

小出:これが……昨年ですね。三宅さんとのやり取りっていうのが結構残ってるんで。

三宅:そうなんですよ。一番最初が昨年の8月2日。新潟県長岡市。毎年開催されている長岡花火にいっしょに行きました。

小出:行きました。毎年三宅を連れて車を運転するっていうのが、現地でのお約束なんですよね。

三宅:僕が車の運転免許を持ってないので。社会不適合者なので(笑)。小出さんに運転してもらうっていう。マネージャーさんとかにとっては一番やってほしくないこと。アーティストに運転させて花火を見に行くとか。

小出:あはは!まぁ、プライベートだからね!

三宅:そこ大丈夫かな?って。あんまり運転されないでしょ?普段そこまで。

小出:年に何度かですよ。特に長距離運転をするのが長岡花火しかないという。で、8月2日に花火を見ました。その夜、ホテルに向かうのに僕が車を運転して、その近辺の高速道路を走ってたんですけど、そこでだったと思うんですよね。

三宅:そう!

小出:三宅さんが主催のレーベル。Q2 Recordsっていうのが始動したのが去年?

三宅:いつでしたっけ?去年です(笑)。

小出:踊Foot Worksのリリースがあったのがその近辺ってこと ?

三宅:いや、去年12月ですね。だから、リリースを控えてるタイミングですよね。

小出:じゃあ、Q2 Recordsっていうのが立ち上がりましたよ、と。水面下で。

三宅:そうそう。8月2日の段階ではそうです。

小出:そういうことを始めましたよってことを、三宅さんが言ってるってタイミングで。車内で三宅さんが「Q2(Records)で何かやらないか」と。

三宅:そうそう。それは、もちろんバンドとかじゃなくて、小出さん発信のソロっていう言い方もしてない……。そのときは、あるアーティストとプロデュースユニットみたいなものを組んでアルバムとかを作ったら面白そうだなって僕は思ってますみたいな。そういうのいっしょにやれないかな〜って、ふわっとした感じだったと思うんですよね。

小出:その話を聞いて、僕はソロ活動には興味がないし、一個人として表現して発表したいことはなんにもない。だけど、プロデュースユニットみたいな、プロデュースグループ的な考え方であればやれないこともないというか。僕はプロデュース業が向いてるほうだなと思ってたんで。

三宅:やってきてますしね、実際。

小出:そうそう。確か完パケたばっかりのアイドルネッサンスの音源を聴いてたよね。車で。

三宅:聴いてた〜!

小出:「ちょうどこんなん、作ったばっかで〜」って話をしてたと思うんですけど。

三宅:あの曲とかすごいいいなと思って。MVが学校の中でアカペラで歌ってる。

小出:『5センチメンタル』だね。

三宅:すごいいい曲だと思う。

小出:そういう話をしてたと思う。それで、プロデュースユニットみたいなものであれば、やぶさかではないかもねぇみたいな。ただ、具体的にどうとか、そこでは全く話はしてなくて。やぶさかではないよって。そのくらいのことだったんですよ。

三宅:そうそう。

小出:忘れてたんですけど、さっき時系列を軽くおさらいしてたら、うちの事務所からある打診があるんですよね。

三宅:あったんですよ。たまたま別件で同時期にマネージャーさんからメールをいただきまして。「ベボベがまた活動が活発になっていくタイミングで、小出の『小出祐介本』を作れないかなと思ってます」みたいな。僕は普段ライターをやったりとか、編集の経験もあるので、その本の監修を三宅さんにしていただけないかみたいな打診を受けて。近々みんなでそういうアイデア出しも含めて飯でもどうですか、みたいなことがあったんですよね。それが9月6日にあったんですよ。2017年の9月6日ですね。代官山のごはん屋さんで。

小出:当時、どういう内容にするのかみたいなことを、結構いろいろ話したと思うんですよ。でも、ぶっちゃけあんまりピンと来てなくて。俺のアーティスト本と言っても何だろうなと思って。これまで詩集は出てたりするんですよ。

三宅:コメントにも「詩集?」って来てますけど。

小出:詩集は別でシリーズとしてあるので。だから、詩集でもない何をやるのかなっていう。うちのチーフマネージャーとかの案だと、僕を形成している、影響を受けたいろんなもの。その様々なものが立体的にわかるアーティストブックみたいな……。

三宅:多面性みたいなものをひとつにまとめて、いろんな角度からいろんなアプローチをしている小出さんの音楽的なことも含めて、小出解読本みたいなものを作れたらなっていう話だったんですよね、確か。

小出:それの編纂を三宅さん主導でちょっとやってくれないかっていう。

三宅:もちろんその段階ではどこの出版社にも話してない。結果、今も話してないんですけど。

小出:そうですね(笑)。結果、どこにも話してない。っていう話をしてたところで、三宅が「そういう本を作るくらいだったら、小出ソロみたいなものを作ったほうが早いんじゃないか」って。

三宅:やっぱり本じゃないだろう、と!

小出:本じゃない、と。音源を作りなよ、と。相変わらず一個人の作品ではなく、いろんな人と作るっていうアイデアだったと思うけど、それをQ2 Recordsでやるのはどうですかってことは言ってたと思います。

三宅:言いました。

小出:そこでいろんなアイデア出しをしたと思うんですよね。その場の盛り上がりでだけど。

三宅:した!みんなお酒も入ってたし!

小出:あれいいんじゃねえか、これいいんじゃねえかって話をしてたと思うんですけど。9月の頭に、僕はその裏で何をしてたかっていうと、9月30日に『日比谷ノンフィクションVI〜光源〜』がありまして。

三宅:Base Ball Bear恒例の。

小出:それのスタンバイに入ってました。野音の。リハに入ってるんですよね。その時のメンバーっていうのが僕ら3人+弓木(英梨乃/KIRINJI)さん。弓木さんとはそれまでツアーをやってました。そこにさらに、Ryu Matsuyama、SANABAGUN.から(高橋)紘一と、(谷本)大河、あっこ(福岡晃子/チャットモンチー(済))と呂布(KANDYTOWN)が来る、と。そういう編成だったんですよ。それがバンドとしては史上最大人数の編成だったんですよ。

三宅:ステージ上に立ってるミュージシャンの最大数だと。

小出:その前の2016年の『日比谷ノンフィクションV〜LIVE BY THE C2〜』っていうのが、バンドが現体制になった直後で、フルカワユタカさん始め、ギタリスト祭だったんですよね。

三宅:ポリ(POLYSICS)のハヤシさんとかね。

小出:石毛(輝)くんと田渕ひさ子さんとか。それはバンドから言ったら、緊急避難的なライブだったわけですよね。そこから1年以上経って、弓木さんとのバンドアンサンブルがだいぶ固まってきましたよ、と。で、バンドがどこまでやれるのかっていう。この体制になってからのいろんな可能性を見せたいっていうところに考えがシフトするわけですよ。2016年の『日比谷ノンフィクションV』みたいに、瀬戸際で踏ん張っているところじゃなくて、バンドが今の編成を乗りこなしてますよっていうものを見せたいっていうところにテーマがあって。徐々にRyu Matsuyamaとか紘一、大河とかと、バンドアレンジを詰めていくと。

三宅:そうだよね。リハーサルスタジオで詰めていくっていうことをやってた。

小出:後半からはあっこと呂布も加わって、結構がっつりリハをやってたんですよね。それで9月30日。その本番が終わってウオー!となってたんですよ。

三宅:そうだよね。達成感もあったし。

小出:達成感もあったし、Base Ball Bearっていうのはついになんでもやれるバンドになったぞ、と。そこに僕はもうすごい手応えを感じたんですよね。

三宅:そこまでは絶対にメンバーの音以外は入れないっていうことをひとつの縛りって言ってもいいかもしれないけど、絶対的に死守することみたいな。そういう掟がこいちゃんの中にあって。

小出:ありました。

三宅:それを貫いてきたっていう。シンセの音すらいれない。それをやってきた上での振り切り方だもんね。

小出:そう。だからね、打ち上げとかめちゃめちゃ盛り上がったんですよ!!

三宅:あはは!あ、そう?

小出:青春だなぁ〜とか言って。しかも、うちのメンバー+ゲストのみんなだけ。スタッフなしで。

三宅:嘘!?

小出:俺らだけで飲みにいって。青春飲み会。

三宅:いいね。

小出:堀之内さんとかも「この編成でアルバム作っちゃう?」って言い出したりとか。紘一とかも「やりましょうよ〜」って言ってくれて、俺も「やぶさかじゃないな〜」って話になったんですよ。最初は会場近くの飲み屋だったと思うんですけど、そこからわざわざ移動して渋谷のすしざんまいに行ったりとかして。俺とあっこと紘一と……Ryuはいなかったかな。呂布と。

三宅:すしざんまいで。QUATTROの近くにある。

小出:そうそう。っていうすごい楽しい飲み会で。ついになんでもやれるようになったっていう達成感に包まれた夜だったんですよ。

三宅:今までに味わったことのないような感覚?

小出:なかったですね。やっぱりギター2本とドラム、ベースっていう4人編成では、得たことのない達成感、充実感みたいなものがあった。

三宅:そうだよね。全能感みたいな。

小出:ついに手に入れた!!って感じがあったんですよね。それで僕は、三宅からもらってたソロをやらないかっていうのを、やっぱり断ろうと思ったんです。それで……下北だよね?

三宅:10月2日下北沢GARAGEですね。

小出: 9月30日に野音をやってるんで、その2、3日後ですよね。三宅を呼び出して改めて、ソロをやるっていうのは頭になくなっちゃって……って。

三宅:言ってました。

小出:これ以上バンド以外のものを持つっていう気分に全くなれないって話になって。ちょっと今回は……って話をしたんですけど。三宅はこのとき「そっか。わかった」って言ったって思ってるかもしれないけど、めちゃくちゃ食い下がったのよ!

三宅:それが俺らしくないっていうか……。尊重するしかないって思うタイプなんで。

小出:すげー食い下がった!

三宅:マジで!?それが記憶違いだわ。全然真逆の記憶ですね。

小出:完全に食い下がって、資料ではGARAGEってなってるけど、GARAGEじゃなくて別の店に行くんですよ。それでサシ飲み。三宅は、小出のソロっていうものにどれだけの可能性を感じてて、絶対に小出の将来、バンドの将来のためになるからやったほうがいい!絶対やんな!って言うんですよ。

三宅:へぇー。酔っ払ってるから記憶がなくなってるのかな。でも、酔わないと引き下がれないと思ったんじゃないかな。

小出:僕は逆プレゼンですよ。どれだけ今、自分のバンドに可能性を感じてるかってことを延々と話したんですよ。でも、三宅はこういうこともできるんじゃないか、ああいうことできるんじゃないかってことをすごい言ってきた。それらの案も、面白いとは思ってたんですよ? でも今、形にすることのリアリティが全くないっていう、逆プレゼンをし続けたんですよ。なんだけど、最終的にはめちゃめちゃ泥酔されまして。泥酔というか……オッパッピーになりまして(笑)。

三宅:あはは!そうですよね。

小出:オッパッピーなことになって、座敷になってるところで一段高くなってるところで……。

三宅:思い出した……!

小出:(三宅が)リュックを背負ったまま、靴紐を結ぼうとするんですよ。

三宅:もう裸の大将じゃないですか。

小出:リュック背負ったまま前に屈むじゃん? 三宅はカバンパンパン系の人だから、カバンの中身がワッシャーって。

三宅:思い出した〜!

小出:居酒屋の床にPCから何からワッシャーってぶちまけたんですけど、それを店員さんも拾ってくれて。俺も「何やってんだよー」って拾ってる中に実印があって。「こんなん持ち歩くなよ!!!」って(笑)。

三宅:その辺りってアレじゃない?会社を起こす起こさないみたいな時期で、結構ハンコを持ち歩いてたんだと思うんですよね。

小出:とはいえ、実印を入れるなよと!!酩酊するおそれがある人が、カバンに実印を入れて持ち歩きなさんなって言って、その日は別れたんですよ。

三宅:思い出しました。

小出:三宅を最終的に説き伏せることができたのかは覚えてないんだけど、僕はもうその日を境に、改めてソロはないと確認ができたんです。

三宅:でも、食い下がったのも思い出してきた。食い下がってたね。下北の2階にある飲み屋でね。

小出:そうそう。

三宅:あそこだ!俺、思い出した。

小出:それが10月2日。その何日か後に僕は事務所に行くんですよ。そこで、うちのチーフマネージャーに会って「この間話してたソロの件なんだけど、断る方向で考えてます」って言ったの、徳留(チーフマネージャー)に。これ、本当に立ち話程度よ? すれ違いざまに「この間の三宅さんの件さ…」って。

三宅:お互いコーヒー持ってるくらいの。

小出:持ってないくらいの。階段ですれ違ったくらいの感じ。で、こう思ってますって言ったら「じゃあ、 Base Ball Bear は何でもできるバンドでいいってことね?」って言われたの。そう言われて、いや!違うわ!と。アレ?って。「俺はBase Ball Bearをなんでもできるバンドにしたいわけじゃないや」って。そこで思い出したっていうか、気付き直したんです。このまま大所帯になっていくっていう可能性を取っていくバンドにしたいのかっていうと、そうじゃないと。むしろBase Ball Bearは、音数が少なかろうが、どんどんソリッドでポップなバンドになりたいって思ってたわって。要は、9月30日の夢のせいで、ちょっと浮かれてたんです。それが、徳留の一言で気が付いて。立ち話程度のこの時間に、「いや、ごめん!やっぱやる!」って。

三宅:へぇ〜!!あ、そう?

小出:そう。ここはすごく大事なところ。マテリアルクラブの企画概要にすごく繋がってくるんですけど、Base Ball Bearで膨らんできたいろんなアイデア。いろんな可能性。それらを、バンドはすべて実現し得るところまで来てた。だけど僕は、Base Ball Bearはむしろ、いろんな可能性から吟味に吟味を重ねた、ソリッドでポップなバンドになるべきだと気が付いた。だけど、ただお蔵入りにするんじゃ勿体無い。じゃあそれを、Base Ball Bearから切り離して形にしようと。三宅が作ってくれた枠を使って、そっちでそれを形にしてみよう!ってことを、その時に思い付いた。それで慌てて三宅に「 ごめん、やっぱやるわ」って。

三宅:そうですね。それを言われたのが10月17日なんですよね、ファミレスで。

小出:それがこのプロジェクトの始まりの部分。

三宅:そうですね。俺も話しながら思い出したけど、なんでそもそもこいちゃんに、ソロプロジェクト的なことをやってほしい思ってたのか。最初はプロデュースユニットって言ってたけど。なんでそれを思ったかっていうと、本の話にも繋がってくるけど、こいちゃんの動きって、多方面に渡っていて。もちろんアイドルネッサンスのプロデュースも含めて。あと、カルチャー的な知識やアーカイブとかも含めてね。そこの動線もあったりとか RHYMESTER や岡村靖幸氏との繋がりとか呂布とかもそうだけど、ラッパーとも共鳴する部分も然り。いっぱい入り口があるなと思ってたんですよ。音楽的な素養の部分もそう。リスナー的なところもそうだし、サウンドプロダクションもそうだし。すごいやれることがいっぱいあるけど、もっとその入り口がいっぱいあればいいなって思ってて。 自分が持ってる動線はいっぱいあるんだけど、その入り口がBase Ball Bear1個だけだと、どうしてもBase Ball Bearの本質にもたどり着けてないリスナーがいっぱいいるんじゃないかって思ってて。ならば、こいちゃんの独立したプロジェクトみたいなものをひとつベボベの前に挟むことで、ベボベに繋がるハブになればいいんじゃないかって。そのプロジェクトでちょっとでも興味をもってくれた人とか、今までのこいちゃんのやってきたことを立体的かつ音楽的にアウトプットすることで、新しい入り口がいっぱいできるんじゃないかって。それが結局ベボベに全部繋がっていくんじゃないのかと思って誘ったっていうのがありました。

小出:なるほどね。よく言ってたよね、最初の頃。

三宅:言ってた。Base Ball Bear、ずっといいアルバムを作ってて貫いてるものがあるけど、その音楽が持ってるポテンシャルが届ききってないんじゃないかなっていうことは、ちょっと離れた立場で見てても思ってたことだったんで。それだったら、こいちゃんのソロを1個挟むことによって動線を全部回収できるし、いろんなリスナーとの出会いの場にもなれるんじゃないのかなっていうのを思ったんですよね。実際、今やろうとしてることは、僕が最初に描いてたものとすごくリンクしてるところがあるなと思って。確かに徳留さんの一言がなかったら説得しきれなかったなっていうのはありますね。

小出:そうだね。それで、自分がその段階で持ってたいろんなアイデアの中でやりたいこと。その1個目が、あっこ(福岡晃子)と何かをやりたい。

三宅:すごい早い段階で言ってましたよね。

小出:明確に、福岡晃子と何かを作りたいというのがあったんで、三宅に10月17日に話したのとほぼ同時期に—これね、先週分かな?岡村靖幸さんとやってる番組(TS ONE内「PREMIUM ONE」)でちらっとしゃべったんですけど。岡村さんと僕とあっことTRICERATOPSの和田唱さんと飯を食いに行ったんですよ。その時に打診をするんですね。その会の帰りに「話があるんだけど」って2人で別のところに行って、「実は……」ってプロジェクトの話をして、どうだろうか?と。ここであっこがノーって言ったら頓挫する可能性があった。だけど、あっこが「すごく面白そうだね!」と。で、あっこと何がしたかったかっていうと、僕は打ち込みで曲を作るってことをほぼやったことがなかったんだけど、その段階で福岡さんはチャットモンチーで打ち込みをしてた。だから、あっこの手を借りれば自力でも打ち込みで何か作れるんじゃないかと考えてた。だから、共同制作者としてあっこにいてもらいたい、と。そしたら、あっこもやぶさかじゃないよ、と。っていう感じになって。で、その1週間か2週間後、映画部(M-ON! MUSIC内「みんなの映画部」)の取材があったんですよ。そこでまたあっこといっしょになって、そしたら今度はあっこから「この間の件で、話させてもらっていい?」と。で、取材が終わってから2人で話をしたら「実はまだ、誰にも言ってないんだけどチャットモンチーを完結させるつもりで……」と。そこで完結のことを知らされたんですね。で、このプロジェクトが始動した頃、チャットモンチーがないのか、エンディング寸前なのか、そういう状況と並行するかもしれないけど、それでもいいかな?って、話をされて。こっちとしては全然いいよと。 それを踏まえても俺はいっしょにやりたいって話をして、それでやりましょう、と。こうして、このマテリアルクラブの基礎ができました。

三宅:それが昨年の10月。最初の顔合わせみたいなことをしたのが10月31日だったのかな?そこからけっこう経って、12月12日にどういうサウンドを作るのかとか、アートワークとか。あるいは、誰と何をやりたいかみたいな、あっこちゃんと一緒にやることを前提にしてっていうことも含めて、プロジェクトのキーワード、プロジェクト名みたいなものを決められたら……みたいな。

小出:要は、共有できる「何か」。 全員が意識として……俺の中ではモヤモヤしたものが徐々に形になりつつはあったけど、スタッフともそれを共有できるようにしたくて、ズバーンっていうキーワードが1個欲しいって。

三宅:そのときにいろいろ話して。アートワークもそのとき俺が「写真とかじゃない気がするんですよね〜」ってことを言ってたと思うんですよね。

小出:言ってたような気がするね。

三宅:「アー写とかも、写真とかじゃない気がするんだよなぁ〜」って。

小出:俺がソロで何かやって〜みたいな。

三宅:いつもと若干違う格好してとか、そういうことじゃないなぁって思って。

小出:それはハッキリ言ってたね。

三宅:そういう話をしてる中でその日の最後にこいちゃんが「プロジェクト名なんですけど、『なんとかクラブ』がいいと思うんですよね」って言ったんですよ。「クラブね!」みたいな。そこでしっくりきたんだよね、クラブっていうのが。インディー感じゃないけど、そこから派生する…最小単位というか、ミニマムな場所みたいなイメージがあるけど、そこからどんどんいろんな人が出入りするというか。こいちゃんが『クラブ』って言うと、また意味を持つことって多いんだろうなとは思った。

小出:そうだよね。なんで俺が『なんとかクラブ』がいいかって言ってたかというと、その直前に『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』っていう映画を観たんですよ。

三宅:ピエロの映画ですね。

小出:そのピエロに立ち向かう少年たち、クラスでどっちかっていうとヘボい子たちなんですけど、そんな自分たちのことを『ルーザーズ・クラブ』って言うんですよ。その語感いいなって思って。

三宅:それも言ってたなぁ。

小出:そのほぼ同時期に『ストレンジャー・シングス』とかも見てたからね。そのときは三宅たちは見てなかった。

三宅:見てなかったです。そのあと、ドはまりしました。

小出:そういうことを話したんだよね。

三宅:したした!

小出:そういう……空気感とか、そういうムードをイメージして、『なんとかクラブ』がいいんじゃないかってことを言ってた。

三宅:言ってたんですよ。それが12月12日で。そこから年が明けるんですよね。たぶん、この間こいちゃんはいろんなことをやってて、いつも通り。

小出:今コメントにあったんですけど、2017年の年末はアイドルネッサンスのオリジナル第2弾を作ってたんです。でも、アイドルネッサンスが解散することが決まって。だから開き直って、マテリアルクラブに繋がる制作を始められるわって。

三宅:言ってたわ。

小出:アイドルネッサンスの2曲目のデモを作ってるときは、全然打ち込みにもなってなかった。多重録音に毛が生えたようなものだったから。全然わかってないタイミングですよ。DTMってやつが。それが年明けて、いろいろソフトを買ったりだとか、試行錯誤を始めた。

三宅:そうだ。ベボベではベボベでライブもやってたし。

小出:ツアー中だもんね。

三宅:最初にスタッフを交えてみんなでミーティングをしたときに、休みのなさにちょっと笑うみたいな。

小出:苦笑、みたいな。

三宅:あはは!「これ、全然休みないっすね〜!」みたいな。「どこで曲作ればいいんですか!?」ってちょっとキレ気味で言ってたもんね。「曲、作る時間ないじゃん!」って言って。

小出:いつものことですよ!

三宅:あはは!「そうね〜」みたいな。徳留さんは「まぁまぁ。大丈夫でしょう」みたいな。

小出:大体あの人そうだもん!で、「いつできんの?」って。「いつできんの?」しか言わないから。プロセスが聞きたいわけじゃないの。いつできるのかが聞きたいのよ(笑)「頑張ります」とかって言って、年明け頑張ったんですよ。

三宅:頑張ってた!

小出:DTMのやり方をいろんなホームページとかで見てさ。

三宅:動画サイトとかね。

小出:そうそう。1個1個やり方を覚えていって、徐々に形になり始めたと。マテリアルクラブ用語として覚えておいてもらいたいんですけど、基本的に楽曲を制作ナンバーでずっと呼んでたんですよ。今してる話は、No.0って呼ばれてる曲なんですけど。要は、制作No.0。零号機ですよね。それをこの時期に作ってる。スタッフに自分のDTM力がどの程度なのかわかってもらって、かつ、発展していくさまを確認してもらおうと思って、同じ曲を延々と詰めてたんですよね。

三宅:ずっとブラッシュアップする作業でしたね。

小出:延々とブラッシュアップ作業をしてて、どんどん僕もやり方を覚えてくるから、だんだんそれっぽくなってくるんですよね。

三宅:そうなのよ!

小出:俺はそれを毎日必死にコツコツやってたわけ。説明書を見ながらコツコツやってたわけ。あと、俺がサボるから1週間に1回は必ず打ち合わせをやろうって。

三宅:言ってた!

小出:デモの進捗を聴かす打ち合わせっていうのを週に1回やってましたね。それを、年明けからずっとやってたんですよ。で、打ち合わせの3〜4回目かな? No.0もVer.4くらいになってて、それは俺からしたら会心の出来だったわけ。だいぶ聴けるものになってきたんじゃないかっていうのを、1コーラスくらい聴かせたんですよ。

三宅:聴かせてもらいましたね。

小出:その時の徳留の反応っていうのが「えっ、またこの曲?」みたいな。

三宅:あはは!!あのね……、本当にその通りのリアクションでしたよ。

小出:でしょ? 俺からしたら寝ずに作ってきたデモを「えっ、またこの曲?他のないの?」って言ったわけですよ、徳留が。それで、ディレクター陣とか三宅とかも「そろそろバリエーション聴きたいな……」って言い出した。……俺は必死でやってるわけ!

三宅:そうだよね。

小出:最初は微生物だったわけですよ!微生物から徐々に細胞分裂を繰り返して進化をしてきて、ようやく水中から陸に上がった。それを褒めて!!!でも、「曲、まだ?」みたいな。

三宅:……そうね。

小出:半ばヤケ気味に「あ〜!わかりましたよ!」と。「作ってくればいいんでしょ!作ってくれば!!」って。

三宅:キレてた。

小出:つって、そこまでは1週間に1回だったんだけど、時間くれと。15〜16日とか時間をもらって、「そこで曲を作ってくるわい!見とけよ!!」みたいな。

三宅:あはは!

小出:「あばよ!!!」みたいな。

三宅:そうだったね(笑)。

小出:ライブを挟んだりしながら……たぶん3月頭とかになるのかな?

三宅:そうそう。

小出:3月頭にかけて必死で曲のアイデアを出していくんですよ。弾き語りとか、鍵盤で簡単なものとか、メロディーの欠片とかなんでもいい。そういうのをブワーッて出して。最終的に……4〜5時間分くらいのセッションデータができて。今度はそれを聴き直して、使えそうなネタを選別していって。ネタっていうレベルでいうと……150以上の曲のアイデアっていうのを作ったんですよ。

三宅:そうだね。セッションファイル上ではそれくらいあったっていう。

小出:そう。それでもまだ取りこぼしてるものはあったんだけどね。そこから今度は、ネタをひたすらデモにしていく。1コーラスくらいの。で、最終的に20何個のデモになったんですよ。で、さらに曲を吟味して、最終的にちょうど20個くらいか。

三宅:そうですね。

小出:それを次の打ち合わせに、どれくらいの数ができたかを言わずに持っていったんですよ。

三宅:覚えてますよ。

小出:「ドヤ!!!」と。

三宅:なってたね。

小出:「なんぼのもんじゃい!!!」って。

三宅:あはは!確かにテンション上がったもんな。

小出:それまで1曲あるかないかっていう状況だったところに、ウワーッと20個くらい持っていって。「ほれ、見たことか!!」と。

三宅:そうでした。「すみませ〜ん」みたいになったよね。

小出:そうなったのが3月頭くらい。で、アイデアをあっこと共有し始めて。それで、作業としてはどういうふうになったかっていうと、あっことラリーで組み立てていく。僕の作ってるデータをあっこに渡して、あっこがいじる。それを僕に戻す。で、僕が「そう来たか!」っていじる。戻す。あっこがやる……っていうのを繰り返す。そういう制作スタイルになるんだけど、そのあと、スタジオに入るんですね。これも3月?

三宅:3月10、11、12日。

小出:3日間くらいスタジオに入るんですよ、あっこと2人で。机を2個並べて、PC開いて、20個あるデモの中から良さそうなものを選んで形にしていくことから始めた。これはまだどういう曲か言えないですけど、No.2のイントロになるものができたりとか、曲が発展し始めるんですね。

三宅:そうなんですよ。

小出:そこで面白いなと思ったのが、僕が作ったものを、あっこが全く別のものに変形させて戻してくるんですよ。それが何回か続いて。チャットモンチーを聴いてるだけだったらわからなかった、あっこの面白さを知るんですね。自分とは全く別の角度から形にして戻してくる。そのあとに、3日間のスタジオ制作を受けた進捗報告会をやって、ここでNo.4に関して話してるんですけど、楽曲No.4っていうのは、最初バンドっぽい曲だったんですよ。

三宅:だってデモのタイトル『バンドっぽいやつ』だったもんね。

小出:そうそう。それこそエイトビートの曲なんだよね。

三宅:そうそう。けっこうローファイな。

小出:ゆったりとしたローファイでメロウな曲なんですよね。それを打ち込みっぽいサウンドに換える作業をやってたんですけど、そこで三宅がいいことを言ったんだよね。のちに繋がる。

三宅:No.2とNo.4に関して言ってるんですよね。「ラップすればいいじゃん」って。

小出:本当だ。「ラップが入るのもすごいいい裏切りになっていいと思います」って。

三宅:「No.2の1分30秒以降のところでエモーショナルにラップしてほしい」とか。それを初めてこいちゃんの自分なりのしっかりとした……それまでさ、RHYMESTERの2人とかからラップに関して褒められてるのも知ってたし、呂布とかもこいちゃんが普通にラップがうまいっていうのも聞いてたし、俺もやっぱり『The Cut』含め、ライブ見ててこの人ラップできるなっていうのを思ったから。でもすごくラッパー然としたものじゃなくて、こいちゃんの歌心とラップアプローチの間にあるフロウの確立ができるんじゃないかって思ってて、「それを出したら?」って言ったんですよね。最初、すごい嫌がったんですけどね。

小出:そう。やっぱり90年代半ばの日本語ラップを聴いて育ったし、影響を受けてるから。土足で踏み入れてはいけないものだっていう、畏敬の念があるわけですよね。だから、どれだけラップが好きだろうが、自分がラップをやるっていうのはちょっと……って。『The Cut』はRHYMESTERが作ってくれたからいいけど。自分でそこに踏み込んでいくのはちょっと違うなぁと。でも、その打ち合わせのときにラップと歌の中間みたいなものって話が出たんだよね。

三宅:出たね。

小出:ラップと歌の中間っていうのは……ラップをやったことがある人にはわかると思うんですけど、ラップってメロディーがあるようでないんですよ。だけど、あるんですよね。そこがラップの難しいところで。ラップにメロディーがついてるものもあるじゃないですか。

三宅:あります。

小出:歌手の僕がラップをやるっていう単純な考え方でいくと、そういうものにしていったほうがいいんだけど、ただやっぱり僕はそういうのはやりたくない。かといって、完全にラップをやっちゃうと、土足で聖域に踏み込んでいくことになるから。それは恐れ多いから、どっちでもない中間を狙うっていうのはどうかって話になった。それで、その日の打ち合わせにはあっこがいたんですけど、あっこからその日のうちに「No.4、いじってみた」っていうファイルが送られてきたんです。「バンドっぽいやつ」をいじってみたって言って、のちの『OO文法』の原形になるトラックがそのまんま送られてきたんですよ!

三宅:そうですね。

小出:使ってる音色もフレージングも違うし、まだ音がペチャペチャのデモなんですけどすでに原形ができてて、そこにそれまでのNo.4のメロが乗っかってたんですよ。そしたら、このメロいらねーじゃん!と思った。No.4は打ち込みっぽいサウンドに換える作業をしてたけど、あんまりうまく行ってなかったんで、その日の打ち合わせでテンポ落としたりしようか、とかは話してた。それがこうなって戻ってくるとはっていう。で、「元のメロいらないから、これに合わせてメロ考え直すわ!」って言って。それでさっきの三宅さんの「ラップやったらどう?」が頭にあったから、最初からそのつもりでやろうと。で、マジの話、ファーストインプレッションでデモ録ろうと思って、ヘッドフォンつけてマイク立ててあっこのトラックをかけて。そしたら一発目で「そのまま動くな」って歌い出してたんですよ。

三宅:はぁ〜!

小出:そのあとのラップもラララだけど、だいたい入ってた。あっこに「これ、どう?」って言ったら「原形ないやん!」みたいな。で、「これを来週の打ち合わせでNo.4ですって言って出したらみんな驚くんじゃないか」っていう悪巧みをして、翌週に会議室に持って行ったんです。そしたら「え!なにこれ?」ってなった。

三宅:ヤバ!ってなって。めっちゃいいじゃん!ってなった。

小出:できたね!ついに!ってね。

三宅:その時にNo.2は?

小出:No.2はやんわりあったんだと思う。

三宅:それもいっしょに持ってきてなかったっけ?

小出:持ってきてたと思う。

三宅:そうそう。No.2でも、なるほど!こう来ましたか!って。

小出:なったんだと思う。

三宅:いいですねってなって、全然走り出せるねって感じの雰囲気になったよね。さっき「フロウ?」ってありましたけど、要は節回しですね。

小出:ラップにおける節回し。

三宅:こいちゃんが言ってた歌があるようでっていうのは、節回しが旋律の輪郭が濃ければ濃いほどメロディーになっていくけど。

小出:じゃなくて、その中間を狙いたいと。フロウと歌の中間。

三宅:そういう中間とかグラデーションとかっていうのを自然にやるのが、そもそも小出さんの音楽家としての得意なところでもあると思うし、自然に出るところでもあると思うんですよ。いろんなものにグラデーションがあってそれを見せていく。俺はできるなと思ってたけど、そんな簡単に言わないでって感じだったよね。

小出:は?って思った。

三宅:ちょいキレ気味だったよね。マジで。

小出:俺はやんねーよ!って感じだった。

三宅:でも、やったらできたじゃん!ほら!って言ったの俺覚えてる(笑)。『00文法』聴いたとき。

小出:ここからは『00文法』の話になりますけど、歌手としての自分の進化ってものが、今後もあるのかどうか。悩んではなかったけど、課題として常々持ってたんですよ。

三宅:歌い手としてね。

小出:ラップをただ単純にやるっていうのは、さっき言ったみたいにラッパーの領域に踏み込んでいくっていうこと。だけど、ラップっていうものを踏まえた上での歌唱であれば、それはもしかしたらっていうか……。バンドマンとしてそういうことをやってる人って、全然いなくない?って。結果的にそういうふうになってる人はいたとしても、意図的な歌とフロウの中間。しかも、中間っていっても、単純に右・左・真ん中だけじゃなくて、その真ん中の中でのグラデーションをつけるっていうこと。歌寄りにする、ラップ寄りにするっていうのを、自分で調整する。中間点の調整っていう考え方、自分ならできるんじゃないかなぁみたいなところに、行き着いたんですよね。三宅からのヒントで。『00文法』は、聴いていただくとわかるんですけど、完全なフロウなようでフロウじゃない。でも一瞬フロウ風になる。

三宅:この曲を初OAさせていただいたのが、TBSラジオのRHYMESTERの宇多丸さんがパーソナリティーを務める『アフター6ジャンクション』なんですけど、そのときに宇多さんがまさに的確な感想をくれてね。

小出:言ってましたね。

三宅:歌とラップがシームレスっていうところとか、リリックに関してもね。フロウでいうと刻み方とか、リリックに関しては90年代的オマージュも垣間見れるとか。全部けっこう大絶賛してくれたじゃないですか。そこにすごく安心したしね。

小出:めっちゃ安心した!やっぱり宇多さんが良いって言ってくれるかどうかって、1個の関門だと思ってたから。

三宅:そうだよね。

小出:宇多さんは褒めてくれただけじゃなくて、僕が『00文法』の中で何がやりたかったかっていうことを一聴しただけで聴き抜いてるわけですよ!やっぱさすがだな!って思いました。

三宅:宇多さんの壁を突破すれば、もう怖いものはないと。

小出:怖いもんはない!

三宅:宇多さんがいいって言ってくれたんでって。ものすごいデカい保証ね。合格の印を貰えたんで。

小出:いただけましたね……。

三宅:『00文法』のティーザー流しますか。小休憩代わりに。

小出:それを踏まえて、このティザームービーを。

三宅:それを観てもらったあと、アートワークの話とかもしやすいと思うので。

小出:どうぞ!

〜『00文法』ティーザームービー〜

三宅:みなさん、おかえりなさい!

小出:ご覧いただきましたけれども。

三宅:その話を踏まえて聴くと、また違うと思うんですよね。

小出:ですな。またちょっと意味合いが変わるんじゃないかな、と。

三宅:ティーザー映像は小出さんのディレクションで。

小出:意味があるようで特にない。

三宅:あはは。本当に数時間でね。カメラを持ってるのは僕なんですけど、渋谷で。36℃ぐらいあった日だったと思うんですけど。

小出:めっっっちゃ暑かった日でしたよね。

三宅:暑かったね。

小出:ごめんなさいね。

三宅:いえいえ、楽しかったですよ。自撮り棒を東急ハンズで買ってね。あとワイドレンズを買って。巨人みたいな感じの構図で、渋谷を練り歩いて、BOYっていう渋谷にある古着屋さんに協力してもらって。

小出:レコードのHMVの上にあるところですね。

三宅:そう。TOMMY君っていう店長に協力してもらって。あそこでアー写、さっき言ってた「写真じゃないな」っていうところで、結果的に刺繍になったんですけど。小菅くみさんという僕の友人の刺繍作家がいまして、小出さんも何回か会ったことはそれまでもあったんだけど。

小出:それこそ下北沢GARAGEとかで会ってたんだけど、全部が全部くみさんが泥酔してて。

三宅:そういう人なんですよ。

小出:あはは。破滅的に泥酔してたから、全然話が噛み合ってなくて。俺の中ではくみさんは、姿かたちも会ってるし知ってるんだけど、まだ通じ合ってないっていう状態。

三宅:ていうね(笑)。

小出:見かけたけど捕まえてないポケモン。図鑑にはシルエットだけ出てる。

三宅:確かにそういう感じ。話は前後するんだけど、なんで小菅さんにアー写で刺繍をお願いすることになったかっていうと、1月29日に小出さんからメールが来まして。「そういえばプロジェクト名ですけど『マテリアルクラブ』ってどうですかね?」って来たんですよね。マテリアルっていうのは、物理とか素材っていう意味で自分らしいかなと。すべては素材でしかない、と。それでいこう!と。それで『素材』ってワードを受け取ったときに、小菅さんの刺繍作品が思い浮かんで、「刺繍でアー写……こいちゃんを刺繍で縫ったらヤバいんじゃないかな」って思って。全部アートワークも含めて刺繍でいくっていう。それを小出さんに提案したら、彼女の作品とともに。そしたらいいっすねってなって。

小出:これだな、と。

三宅:ただ、まだ直接コミュニケーションはちゃんとは取ってないからって。でも、これでいきましょうって感じでしたよね。

小出:先ほども話に出ましたけど、自分が出てバンドのときとは違う格好で何かをやるとかは違うし、イラストも写真も違う。じゃあ何がいいかなっていう部分がはまったわけです、ここで。マテリアルっていう言葉によって、そのピースがはまった。

三宅:これ、はまったね〜みたいになったね。

小出:なんで僕が『マテリアルクラブ』っていう語感がいいなって思ったのかっていうと、『00文法』でも言ってることですけど、何かに影響を受けて何かを作る。音楽だけじゃなくて映画もそうだし本とか小説、絵とか。あとは思い出とか。友人だったりもするし。いろんなものから影響を受けて何かを作る。つまり、自分の人生経験におけるすべてが、作られる何かの素材であるということ。創作のための素材である。そして、このプロジェクトにとっては、人材も、素材。自分もあっこもそうだし……さらにゲストを呼びます。

三宅:おっ!

小出:曲の必要に応じてゲストを呼んでます。そういうあらゆる素材を集めて何かを作るっていうイメージがあったので、『マテリアル』はいい言葉だなと。全部を素材だと。

三宅:言いたくなるワードがあったりするんだけど……。それはまだ言えないけど……。

小出:すべては原材料で、自分の受けてきた影響、物理的にもそうだし、心ですら素材である。それを踏まえてマテリアルって言おう。だからこの集まりは『マテリアルクラブ』。どうですか、と。そしたら、くみさんの話が出てきた。

三宅:そうそう。

小出:だから、くみさんもそういう意味ではマテリアルクラブの一員になると思うし。

三宅:そうです。実際、今後発表されるアートワークでえー!?っていうのも出てくると思うんで(笑)。

小出:あの……なんだろうね。限界突破。

三宅:彼女自身もマテリアルクラブの一員として、作家として参加してるので、みなさんにお披露目できたときには、その限界突破ぶりを……。ヤバい。こんなことできるんだ!みたいなところも。

小出:て感じよな。くみさんに最初会ったのもさ、不思議な話なんですけど、俺と三宅さんで、赤い公園の新体制を観にいった日だったんですよ。

三宅:VIVA LA ROCKですよね。5月。

小出:赤い公園の新体制の見届け人というか、見届け人の見届け人みたいな感じで。

三宅:あ!小菅さん。「見てるし」って(笑)。見るなし〜!

小出:見るなし〜!(笑)。VIVA LA ROCKを観にいって東京に帰ってきて。で、メンバーと飲みにいこうって話になって。そこに、くみさんも呼んじゃえ!と。そしたら話が早いよねってなって、くみさんを呼んで。そこで初めて泥酔してない状態のくみさんとまともなお話ができた。

三宅:そうですね。

小出:くみさんが言ってて印象的だったのは、依頼を受けてこの人を縫ってくださいっていうのはできます、と。この段階でテストで1、2個縫ってくれてんだよね?

三宅:そう!それあるんだけど……見せていいのかな?

小出:どうだろうね……。

三宅:あったんだよな……。

小出:縫えはするけど……(テスト作品の画像を見て)これね。

三宅:小菅さんが見せていいよって言ったら見せるけど。

小出:縫えはする、と。だけど、作品として気持ちを込められるかどうか。

三宅:そうそう。

小出:作品が立ち上がってくるかって。……あっ、くみさんが「いいよ」って。じゃあ全画面で。

三宅:(準備しながら)ごめんなさい。僕、すっごい画面が汚いんですよ……。

小出:絶望的に画面がちょっとね。でも、わかるよ。これなんですよ。これがくみさんのテスト刺繍。

三宅:すごいよね!

小出:きったねー!画面!!

三宅:本当ヤバいね。

小出:ちょっと寄ってもらえますか。

三宅:きったねー!なにこれ(笑)。

小出:これです。

三宅:このときからすごいなって思ったのが、くみさんが喉仏を縫ってきたんですよね。訊いたら初めて縫ったって言ってた。人の喉仏。ぜひInstagramをチェックしていただけたら。刺繍をポートレートみたいに縫ってるんですけど、その精度がものすごいのでぜひ見てもらいたいんですけど。喉仏を縫ったのが初めてだと。しかもこいちゃんの喉仏って本当に特徴があるから、よくそこに気づいて縫ったねっていうのが。視点の鋭さっていうのが、すごいなぁって。

小出:こうやって縫うことはできますよ。写真を見て、仕事としてやることはできます、と。だけど、作品として気持ちを込められるかどうか。作品が立ち上がってくるかどうかっていうのは、人となりがわかることとか、その人のことが好きになれるかどうかだって言ってて。そのときいろいろ話したんですよ、くみさんと。自分の生い立ちの話とかね。

三宅:話してたかもしれないですね。

小出:そしたら「話せてよかった!」って。

三宅:そう。彼女も彼女で、縫う前に会って話したいって言うんですよね。やっぱりそういうものなんだなと思ってね。

小出:その日は一次会終わって、そのあとはまたファミレス行ってね。ファミレスでしぶとく飲んでて、三宅は潰れかけてて。

三宅:寝てましたね。

小出:寝てたんですけど、寝てるのを店員さんに逐一怒られてて。

三宅:嘘!?

小出:「ソファーで横にならないでください。他のお客様のご迷惑ですので」って言われるたびに「すみません」って起きるんですけど、店員さんがはけた瞬間寝る。それを延々とやってて。

三宅:……チャーミングな(笑)。それは本当に申し訳ないな。

小出:チャーミングな一面がね、見えた夜でした。

三宅:小菅さんも結果的にすごい酔っ払ってたと思うんですけど。最終的にはあの人は。でも、楽しい夜でしたね。

小出:そうですね。VIVA LA ROCKだったからゴールデンウィークですか。5月の頭(5月4日)の話だったんですけど、その辺りからいよいよレコーディングに入ったって感じですか。レコーディングスケジュールってどうでしたっけ?4月からやってた?

三宅:やってたと思いますよ。

小出:やってた?そんなところからやってたんだ。

三宅:いや、早かったよ。4月25日からやってますね。

小出:なるほどね。そこから初めてのDTMから作る作品のレコーディングが始まっていって。最初にNo.2もいっしょに録ったんですけど。No.4こと『00文法』を録っていくと。

三宅:そうですね。

小出:これがマテリアルクラブ始動までの話。ここまででも大変濃いんですけどね。

三宅:あとはもう全貌を見てもらうまで何とも言えないことがいっぱいあるんですけど。

小出:昨日アルバムができたわけなんですけど、どうですか。聴いてみて率直に。

三宅:すぐあなたにも言ったけど、こんなアルバム聴いたことないねっていう。1回通して聴いて、スタジオ出てミーティングルームみたいなところで。なんなんだろうなぁって思って。こんな……なんか……これ言うと難しいんだよなぁ。

小出:難しいけどね。

三宅:1個言えるのが、音楽劇を見てるみたいな。聴感でそういう感覚を味わったっていうことは言いましたけどね。すごく奇妙だけど……底知れないし……。だけど、ジワジワ効いてくる。余韻がすごいですね。

小出:妙な……。俺はもう、そうだね。妙な作品っていう(笑)。

三宅:怪作って言葉では片づけたくないなと思ってて。そういうことでもない。平成最後の怪作とか、紋切り型の表現をすれば、そう言えるかもしれないけど、そういう一言で片づけると本質が見えてこないっていう。

小出:それはそうだと思う。

三宅:なんですよね。

小出:バンドマンのバンド外でやるプロジェクトとして、こうなるの?っていうふうにはなってるんじゃないですか。

三宅:なってる!

小出:少なくともギターロックバンドをやってる人のバンド外の作品で、こういうものを作ってる人はいないんじゃないかなって思いますけどね。

三宅:いないと思いますよ。でさ、さっきもコメントであったけど、こいちゃんは、いつか音楽人生の中でGorillazみたいなプロジェクトをやってみたいなってことは言ってたところもあったと思うけど。今回、このプロジェクトが立ち上がったときも、ある種Gorillaz的なニュアンスを帯びるものもあるんじゃないかって予測を立てることはできたんだけど、全くそういうことじゃないっていう(笑)。

小出:音楽的にはそういうことじゃないですね。Gorillaz的部分の話をするのであれば、さっき言った「ソロでもなくバンドでもなくユニットでもなくグループでもなく 新音楽プロジェクト」っていう部分。つまり、形をフレーミングしないっていうこと。それを死守したかったんですよ。そのフレーミングの仕方について、のちにアルバムのタイミングとかで話すかなと思うんですけど……。チャットモンチー完結前後の福岡晃子の考えが、どういうふうに移ろっていくのかっていうのを俺はずっと横で見てて。その中で、マテリアルクラブのフレーミングしない活動のあり方っていうのはどう転ぶのかみたいな。お互いの考えを擦り合わせていくみたいなことがあったんですけど、そこに関することは、自分だけじゃなくてのちのちね。あっことしゃべる機会もあるだろうし。

三宅:そうですね。

小出:全然ネガティブな意味じゃなくてね。

三宅:もちろん。

小出:彼女としても、アーティストとして次のタームに入るところだと思うけど。偶然ではあるんだけど。

三宅:そう。いろんなことが偶発的にリンクしていったことが、枚挙に暇がないぐらいありますよね。

小出:だすね〜。不思議な。アルバムの制作の内容に関してもドラマがあったし偶然の。

三宅:そうなのよ!本当にね!だから、まぁ、それは総じて必然なんだって思ってますけど。こんなリンクの仕方するんだって。最初からね。こいちゃんがあのタイミングで徳留さんと立ち話しなかったら、またちょっと違ったかもしれないよね。

小出:珍しく先に徳留に報告しようと思ったのが、まず偶然だし。

三宅:そうだよね。

小出:あそこで徳留と会ってなかったら、普通に断って終わってたかもしれない。

三宅:なんか……徳留さんが曲出しの小出への攻め方も含めね(笑)。要所要所で暗躍してくれました。

小出:作品について「また、これ?」って言うヤツいる?

三宅:あはは!

小出:そんなヤツいる?作品だよ?

三宅:強いよね。それを言えるのが。

小出: アーティストがヒーコラ言ってさ、作ってきたものに対して「また、これ?」って言うか普通?

三宅:いや、それは関係性上さ、こいちゃんに言える強みがありますよ。

小出:母親みたいなもんですよね。社会の母。

三宅:社会の母(笑)。今、話せるのはこれぐらいですかね。

小出:あとは、バンドとマテリアルクラブがどういう関係性にあるのか。マテリアルクラブはBase Ball Bearがよりソリッドでポップなものを目指すバンドになっていくために、溢れたアイデアを形にする場所である、と。バンドから生まれたアイデアをマテリアルクラブで形にしたのが、今回の作品なんですね。っていうことは、この逆もたぶん、今後起こりうる。だって俺人間だもの。

三宅:ていうね。

小出:マテリアルクラブの作品を作ってく中で、マテリアルクラブで形にしないでバンドで形にしたほうがいいだろうなっていうアイデアも、たくさんできたんですよ、やっぱり。それらが、今度はバンド側に跳ね返って、Base Ball Bearの次の作品に反映されていくっていうこの……。

三宅:振り子のようなサイクルというか。

小出:共鳴し合う。

三宅:共振というかね。

小出:マテリアルクラブっていうプロジェクトの定義として、よく三宅に説明してたのが鏡のこっちと向こう側だ、と。

三宅:うん。

小出:こっちで起きてることは向こうでも起こるし、向こうで起きてることはこっちでも起こりうる。でも、それはどっちとも実体であって。

三宅:そうだね。どっちも実体である。

小出:みたいなのが、マテリアルクラブとBase Ball Bearの関係です。

三宅:これを聴いて納得した人は、いっぱいいるんじゃないですか。

小出:そうですね。

三宅:「腑に落ちました」って書いてくれてる人もいますけど。

小出:マテリアルクラブの制作は昨日終わったので、ここからBase Ball Bearの制作に本格的に入っていきますので!

三宅: 頑張ってください!

小出:マジかよ。

三宅:あはは。頑張ってくださいとしか……。

小出:昨日もマネージャーがヘラヘラしながら「このくらいには大体できてて〜」とか言ってた(笑)。

三宅:あはは。言ってたね(笑)。

小出:っていうふうに煽られて。

三宅:でも、ポジティブにとれば時差なく共振できるっていう意味では休まないっていうのもね。ダイレクトに相互関係を補完していくっていう意味では、いいんじゃないですかね。休みたいとは思うけど。

小出:マテリアルクラブで出来たものが、Base Ball Bearで形になる。その制作の中で膨らんだアイデアが、また次のマテリアルクラブの作品になっていくんじゃないかな。

三宅:で、休みのないサイクルに延々とループしていくっていう。

小出:いや、だから、休みのないサイクルにしなくても別にいいじゃん!休んでも!!できたんだもん!!間髪入れずにやるからおかしいんだよ!!できたね、いっぱいアイデアあるねって。

三宅:コメントで「(マネージャー)大久保さーん!」って言われてるよ(笑)。

小出:ちょっと時間空けてやーろう、でいいじゃん!なんでこんな昨日終わったね。じゃあ明日からって……。頭おかしいんじゃねえかな。

三宅:そうですね。もうしょうがないですそこは。

小出:コメントで「堀之内さんと関根さんもマテリアルクラブを手伝ったりするんですか」ってあったんですけど、それは明言しておきましょう。ないと思います!やっぱり、あっことやってることに僕は意味があると思っているプロジェクトだから、マテリアルクラブは。Base Ball Bearに対してマテリアルクラブがあって、そこにあっこにいるっていうのは、不思議なもので。同期とはいえ、ずっといっしょにやってたわけじゃないのに。制作とか。でも、ずっとやってきたような気がする。

三宅:すごい馴染んでるもんね。

小出:全然ギクシャクしてなかったでしょ?

三宅:1回も見なかったね。疲れてるなっていうのは、もちろんあったけどね。大体、深夜まで及ぶような感じでしたから。ピリッとすることは全然なかったです。嫌なムードもなく。

小出:そういえば、チャットの最後に『恋の煙』の打ち込みアレンジ(チャットモンチー「恋の煙(同期ver.)」)を僕がゲストボーカルで歌うっていうのがあって。それは基本あっこがトラックを作ってた。で、歌をどういう振り分けにするかとか最初は決まってなかったから、ざっくり自分でいろいろやってみて。考えるのは歌だけでよかったんだけど、勝手にサービス精神で、こういうシンセを足してみたって言って、音を付け足したデモを戻したんですけど、それが結構採用されて。それがマテリアルクラブが始まる直前ぐらい、始まるか始まらないかぐらいの出来事でしたね。

三宅:うんうん。それも不思議なタイミングですよね。でも、やっぱり影響してるからね。それもね。

小出:ね。で、あのときのエンジニアが佐藤さんだし。

三宅:そっか!今回もね。

小出:あとは石毛くんのyap!!!に呼んでもらったときに。

三宅:卓郎くん(9mm Parabellum Bullet)と3人でやった(yap!!!「Everyone let's go with 菅原卓郎×小出祐介」)。

小出:そうそう。そのときに、久々に会ったエンジニアの土岐ちゃんっていう子がいて。レコーディングスケジュールのところに、どうしてもいつもいっしょにやってるエンジニアのズラちんのスケジュールが取れないところがあったんで、別候補を探してたんですよ。そこでちょうど土岐ちゃんと一緒に仕事できたんで、土岐ちゃんいるじゃん!ってなって。それで今回お願いしたんですけど。

三宅:面白いよね。いいよね。これはマテリアルクラブに限ったことじゃないけど、仕事でそういうふうに影響しあって繋がっていくって、すごく理想的だなって思うし。

小出:そうですね。

三宅:そういうこともマテリアルクラブでできてるっていうのが、非常に喜ばしいことだと思います。

小出:面白いですよね。

三宅:yap!!!もこないだリリースされたばっかだし。そういえば昨日、yap!!!がアトロク出てたな。

小出:本当?

三宅:スタジオライブやってたな。

小出:「(橋本)絵莉子は参加しないんですか」。ホリと関根が参加しないって言ってるんだから、えりこが参加したらつまらないでしょ? わかんないけどね。今のところはそう思いますけど。

三宅:そうね。

小出:とかとか。

三宅:もうそろそろ2時間ですね。

小出:あんまり長くならないように、タイトに、って言いながら、このぐらいになりましたね。

三宅:そうですね。

小出:ベラベラしゃべってすみません!

三宅:これから来月再来月とやっていきますので、ぜひ。

小出:もうそろそろシメに向かいたいと思いますけど、告知などは大丈夫ですか。

三宅:次回のLINE LIVEは、10月15日を予定しております!

小出:その他の告知は?その日はゲストが来ると。

三宅:そうなんですよ!その日はゲストが来る予定なので、ぜひお楽しみに!

小出:そして?リリースは大丈夫ですか。

三宅:11月7日にアルバムをリリースします!

小出:はい。以上で大丈夫ですか。

三宅:OKです!

小出:ってことで……。

三宅:僕はこういうふうな座組でやってるので、ライターとしてマテリアルクラブのインタビューをする気はないし、すると無粋で意味がわからないことになるので。ライターとして小出さんと向き合うことはないので、こういう話は最初で最後というか。今日インタビューしたとも思ってないので、いっしょにできてよかったです。次回以降、どういうふうなやり方でLINE LIVEでやっていくかまだわからないですけど、ゲストも来てくれる予定なので!ぜひ、楽しみにしててください!以上でいいですかね。では、もう10時なので。

小出:明日もあるし、寝ましょう!(笑)。

三宅:長時間ご視聴いただきありがとうございました。

小出:ありがとうございました!

三宅:また来月お会いしましょう!よろしくお願いします。


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