Celtic Music In Cape Breton 〜隠されたケルトの秘宝〜
THE COTTERS HOME
ザ・コッターズ / メイド・イン・ケープ・ブレトン
THE COTTARS / MADE IN CAPE BRETON
VICP-62475 / ¥2,520(tax incl.) / \ 2,400(tax out)
2003.10.22 OUT
1. スーラン・ドゥー
SUILEAN DUBH
2. ザ・キャプテン・キャンベル・メドレー
THE CAPTAIN CAMPBELL MEDLEY
3. アイ・ノウ・フー・イズ・シック
I KNOW WHO IS SICK
4. ザ・ボーイズ・ラメント・メドレー
THE BOY'S LAMENT MEDLEY
5. バリンデリー
BALLINDERRY
6. トゥー・ブラザーズ・メドレー
TWO BROTHERS MEDLEY
7. スカーレット・リボンズ
SCARLET RIBBONS
8. キアランズ・ピアノ・メドレー
CIARAN'S PIANO MEDLEY
9. ザ・クーリン / ホーンパイプス・メドレー
THE COULIN / HORNPIPES MEDLEY
10. ザ・ブライアー・アンド・ザ・ローズ
THE BRIAR AND THE ROSE
11. ザ・プレジャーズ・オブ・ホーム・メドレー
THE PLEASURES OF HOME MEDLEY
12. ヒアーズ・トゥ・ソング
HERE'S TO SONG
13. キッチン・ラケット
KITCHEN RACKET
●2002年初頭にレコーディングされた今作はワーナー・カナダを通じて北米でリリースされた。リリース後、米PBS、加CBSでのスペシャル番組「Meet the Cottars」や多くのケルティック関連のフェスティヴァルに出演し、注目を浴びた。
●インストゥルメンタルも含むトラディショナル・ソングからトラッド・アレンジを施したトム・ウェイツのカヴァーまでレパートリーも多彩で、ケルト・ファンのみならずポップス・ファンにも訴求することは間違い無し! 既にボブ・ディラン、フェアポート・コンヴェンション、アシュレイ・マクアイザックなどと同じステージにも立った。
●リード曲となる「The Briar & The Rose」がトム・ウェイツのカヴァー曲。コンサートにおいてもハイライトで披露され、フィオナのヴォーカルは観客の心を強く揺れ動かし、必ずスタンディング・オベーションがおこるほど!
アルバム『メイド・イン・ケープ・ブレトン』
 アルバムは、2002年2月にレコーディングされた。その時点で、ジミーは14歳、キアランは13歳、フィオナは12歳、ロザンヌは11歳だった。  アルバムのテーマは、“ケープ・ブレトンのスタイルに根づいたものを作ること”。その思いは、『メイド・イン・ケープ・ブレトン』というアルバム・タイトルにも込められている。そのため選曲も、日頃から自分達がキッチン・パーティーなどで演奏しているもののなから、特に好きな曲を選んでいる。もちろんその全てが伝統歌というわけではない。1940年代の歌もあれば、トム・ウェイツのカヴァーもある。そのバランスがよく、それによって多才なメンバーのいろいろな側面がうまくアルバムに反映されていると思う。
 アルバムにはメドレーを含め、12曲が収録されているが、レパートリーということで言えば、2時間強のコンサートができるくらいはあるとか。フィドルのロザンヌだけに関して言えば、いつまでも演奏を続けられるほど、そのレパートリーは豊富だそうだ。
 各曲に関しては、アルバムのライナーノーツに彼ら自身が解説を寄せているので、それを参照していただきたいが、そこにも書かれているように、楽譜のない伝統歌は、誰かが仕入れてくると、メンバー同志で教えあい、レパートリーを広げている。収録曲は、そうして彼らの十八番となった曲だ。  アルバムは、郷愁を誘うティン・ホイッスルの演奏で幕を開け、スコティッシュ・ゲール語で(1)『Suilean Dubh』をフィオナが歌う。この無伴奏で歌うスタイルは、シャーン・ノスと呼ばれる古いもので、こぶし回しにそのシンガーの個性が表れると言われているが、実際にフィオナの力量と魅力が一番よく表れている曲だと思う。フィオナは他に、アイルランドの古典的なエア(9)『The Coulin』も無伴奏で歌っているが、神秘的な語感のゲール語の方は、より一層フィオナの素直で、伸びやか声を引き立てるのではないだろうか。
 (1)『Suilean Dubh』でバッキング・ヴォーカルを務めるのは、キアランとロザンヌ。4人全員がマルチ・プレイヤー。これもコッターズの強みだ。
 その強みは、アルバムの随所で生かされている。たとえば『Two Brothers』という曲ではキアランがリード・ヴォーカルを披露。実直な人柄がよく表れている歌だと思うが、この歌のあとに伝統歌を2曲続けてメドレーで演奏している。メドレーで演奏するのは、ケルティック・ミュージックのひとつの特徴だが、これらのアレンジも、彼ら自身がアルバムのプロデューサーである、フィオナとキアランの父親アリスターと一緒に手掛けている。また、キアランのピアノの腕は、(8)『Ciaran's Piano Medley』にてエアと呼ばれるスタイルの「My Lodging's On The Cold Ground」から始まり、転調しながら、2曲のリールで終わるメドレーで存分に発揮されている。
 最年少ロザンヌのフィドルは、ふくよかな音色がひとつの魅力で、リールなどで披露される躍動感溢れる演奏だけでなく、歌心が感じられる。そこが素晴らしい。(2)『The Captain Campbell Medley』ではジミーのギターと、丁丁発止でいい緊張感のある共演を繰り広げている。この曲を聴いただけでも、2人の演奏力の高さをわかっていただけるだろう。
 フィオナのヴォーカルが大絶賛されている『The Briar And The Rose』は、トム・ウェイツのナンバー。これは、フィオナがミュージシャンの父親、アリスターから教えてもらったもの。フィオナとキアランは、ボブ・ディランの古い曲を知っていたりするが、それは全て父親のライブラリーにあるLPから学んでいるそうだ。彼らを発掘したひとり、カナダの有名なカントリー・シンガー、ジョン・マクダーモットがゲスト参加した(12)『Here's To Song』も、アリスターが書いた曲だ。
 アルバムの最後は、彼らの原点であるキッチン・パーティーをスタジオのキッチンで再現した『Kitchen Racket』が締めくくられる。ここでよくわかるのが、ハイランド・ダンスのステップが生み出すリズムがパーカッション代わりになっているということ。だから、ステージで披露するのは自然なことなのだ。
文・服部のり子
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