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2025.08.27
NEWヤガミ・トール、恒例のバースデーライヴ Yagami Toll ~63rd Birthday Live~ IT'S A NOW!2025をレポート
8月19日に63歳の誕生日を迎えたBUCK∞TICKのドラマー、ヤガミ・トールのバースデーライブ<Yagami Toll ~63rd Birthday Live~ IT’S A NOW!2025>が、誕生日当日に東京・下北沢Shangri-Laで開催された。
本公演は2部構成になっていて、Yagami Toll & Blue Skyのメンバーでキャロルと洋楽をカヴァーした1部は、キャロルとレッド・ツェッペリンの大ファンで、初めて買ったレコードがビートルズであるヤガミのルーツと初期衝動に触れるメニュー。2部はYagami Toll & Blue Skyのオリジナルナンバーを中心に、ヤガミがリスペクトするゲストミュージシャンらとともに熟練のプレイでロックンロールを鳴らす味わい深いステージを堪能した。
さらにこの日はいくつかのサプライズが用意されていた。開演前の影アナを星野英彦が務め、アンコールで実弟の樋口豊がバースデーケーキを持って登場することは毎回の恒例になっているが、樋口の「もう一人サプライズで来てます」との声がけとともにステージに現れたのは今井寿。これにはヤガミも「俺も知らなかったよ!」と驚いた表情を見せた。星野は声だけではあったが、BUCK∞TICKメンバー全員の出演に会場は大盛り上がり。オールスタンディングのライブハウスの後ろの方までヤガミの顔が見えるように配慮されたドラムセッティング、豪華ゲストの面々、心踊る演奏、そして嬉しいサプライズと、バースデーのお祝いに行ったはずが、両手に有り余るほどのプレゼントを受け取ったような、そんな多幸感に満ちた夜だった。
「本日は<Yagami Toll ~63rd Birthday Live~ IT'S A NOW!2025>にご来場いただき、誠にありがとうございます」と、開演前に流れた場内アナウンスの男性の声に注目が集まる。最後に「BUCK∞TICK、星野でした」と種明かしがあると、大歓声と拍手が起きた。やがて会場が暗転すると、この日の主役であるヤガミ・トールが一人でステージに登場し、ドラムソロを開始。ドーンドーンと打ち鳴らすバスドラと、その上にパラパラと落ちてくるシンバルやスネアの粒立ちのよい音は、さながら夏の夜空を彩る打ち上げ花火の音のようで、とても鮮やかだ。そのままバスドラに合わせてクラップがあがると、Blue SkyメンバーのKANAME(Ba&Vo)、屋宜昌登(Gt)、原田喧太(Gt&Vo)が登場。「アニイのバースデーライブ、最後まで楽しんでいきましょうね」とKANAMEのMCを合図に、「憎いあの娘」「ヘイ・タクシー」とキャロルのグルーヴィーなロックンロールでフロアを揺らし、続けてビートルズの「All My Loving」を演奏した後、ドラマーの湊雅史を呼び込んだ。ヤガミと湊のツインドラムで、キャロルの「スローダウン」とレッド・ツェッペリンの「Whole Lotta Love」の2曲を披露したのだが、特に「Whole Lotta Love」の間奏でのツインドラムの白熱した掛け合いは圧巻だった。そして1部の最後はギタリスト・横関敦を加えてトリプルギターでキャロルを2曲。「1部、最後の2曲になります」とKANAMEが話し始めると、♪ジャッジャーンと「ルイジアンナ」のイントロを鳴らす原田。「今しゃべってます。わかりますよね」とKANAMEに注意されている横からまたもやギターを鳴らす原田に、「ワハハ」と笑うヤガミ。Yagami Toll & Blue Skyのステージはいつも、演者も観客も笑顔が絶えない。そんな和やかな空気の中、「ファンキー・モンキー・ベイビー」で1部をテンション高く締め括った。
2部はYagami Toll & Blue Skyのメンバーに、初期のBUCK-TICKサウンドを支えたキーボーディストの中山努を迎え、インスト曲「Wonderful Home -Thunder & Cold wind-」からスタート。暑さも吹き飛ばすような軽快な「SODA ROCK!!」の後、KANAMEから「毎年聞いてるんですけど、ここで一年の抱負を」と話を振られたヤガミは、「いつも聞かれますけど、残り4カ月をどう生きるか(笑)。10月から(BUCK∞TICKの)ツアーもあるんで、いい感じで乗り切りたいと思います」と答えた。KANAMEと原田がアコースティックギターに持ち替えてじっくりと聴かせたのはビートルズの「Cry Baby Cry」と、このバースデーライブで何度も共演してきたシンガーソングライター・SHIMEの名曲「Top of the mountain bar」。アウトロでは「SHIMEさんに聴かせてあげよう」と、観客のシンガロングが会場に広がった。続いてヤガミが呼び込んだのは、スペシャルゲストの影山ヒロノブ。横関もバンドに加わり、影山がボーカルを務めるバンド、LAZYの「ベイビー・アイ・メイク・ア・モーション」と、「もう一曲、世間的に言う僕の代表曲を」とアニメ「ドラゴンボールZ」の主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を披露。影山のパワフルなボーカルと豪華メンバーによる生演奏に会場は大興奮。その勢いのまま「最後ぶっ飛ばしていきますか」と、「20TH CENTURY BOY」「Oh! My God! (Thank you for Great Liar&Swindler)」とロックチューンを続け、熱気は最高潮に。ラストのミドルナンバー「Blow Wind」を聴きながら、楽しかった時間を反芻し、その余韻を噛み締めた。
アンコールでは、ヤガミがセンター位置で腰をかけ、「歌います」と宣言すると会場は拍手喝采。「恥ずかしいのでサングラスかけます」と一度サングラスをかけるも、「歌詞がよく見えません……外します」と言いながら外し、「ファンキー・モンキー・ベイビー」を歌唱。2004年にYagami Toll & The Blue Sky名義でリリースしたアルバム『1977 / Blue Sky』収録のバージョンで、フレンチポップ調の柔らかなアレンジが、ヤガミの優しい歌声にフィットしていた。その後、ヤガミが出演者を呼び込み、次の曲へいこうとすると、キーボードの中山が奏でる「Happy birthday to you」で、樋口豊がバースデーケーキを、D'ERLANGERのTetsu(Dr)が花束を持って登場。さらに樋口が「もう1人サプライズで来てます」と言うと、 片手に缶ビールを持った今井寿が現れ、「アニイおめでとう!いっぱい祝ってやってください、下北ベイビーズ!」と盛り上げると、風のように去っていった。最後は全員で「BORN TO BE WILD」 をエネルギッシュに届けた。
去り際に、ヤガミが「来年は(チケット代が)6400円になりますので。1万円ほしい場合は、100歳までやらなきゃいけないので」と言って会場を笑わせていたが、観客の胸の内を勝手に代弁するならば「どんと来い!」である。ちょうど同日、BUCK∞TICKはニューシングル「渋谷ハリアッパ!」を10月15日(水)にリリースすることを発表したばかり。会場に満ちていた愛と期待を糧として、BUCK∞TICKはまた未来へと前進していくのだろう。
Text:大窪由香
撮影:MASA