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2025.10.25

NEW「BUCK∞TICK TOUR 2025 -ナイショの薔薇の下-」ツアー初日の市川市文化会館 大ホール公演をレポート


BUCK∞TICKの全国ホールツアー「BUCK∞TICK TOUR 2025 -ナイショの薔薇の下-」が、10月16日千葉・市川市文化会館 大ホールよりスタートした。

昨年12月にリリースしたアルバム『スブロサ SUBROSA』を携え、今年4月から追加公演の7月まで全国を巡った4人編成での初ツアーは、現体制の様々なポテンシャルを発揮する場所だった。たとえば、曲によって歌い分けたりハモったりする今井寿(Vo, Backing Vo, Gt, Syn, Programming&Noise)と星野英彦(Vo, Backing Vo, Gt, Syn&Programming)のダブル・ヴォーカルは多層的な世界観を生み、これまで櫻井敦司の歌で表現してきた物語は、今井、星野、樋口豊(Ba)、ヤガミ・トール(Dr)の4人が生み出すサウンドによる音像と、それにリンクする映像で表現するようになった。ステージに置かれたシンセやコンピュータにより、生演奏とエレクトロの融合が目に見える形で展開し、インスト曲というこれまでになかったトライアルも含め、新しいバンドの観せ方を提示した。


今回のツアー初日で体感したのは、紛れもなく『スブロサ SUBROSA』のその先。前回と同じく『スブロサ SUBROSA』を軸にしているのだが、演者だけでなく観る側も更新されていて、たとえば以前は演奏するメンバーを凝視していたインスト曲も、今回のために新しく制作されたアヴァンギャルドな映像との融合を楽しんでいることに気がついた。まるでBUCK∞TICKが表現するアートに、自分自身の体感が溶け込んでいくような、なんとも新しい体験だった。

それに加えて、「始めようか。新しいロックンロール!action!」との今井の掛け声から、10月15日にリリースしたばかりの新曲「渋谷ハリアッパ!」と「風のプロローグ」を畳み掛ける。「渋谷ハリアッパ!」では、エッジのきいた星野のギター、グルーヴィーな樋口のベース、ヤガミのタイトなドラムが絶妙に絡み合い、そこにギターを手放した今井がスキップしながら軽快にラップを乗せていく。初演奏ながらツインヴォーカルになるコーラスパートでは、“hurry up up up”と会場中が大合唱。エネルギッシュなサウンドは、会場のテンションをぐいぐい引き上げていった。

一方の「風のプロローグ」は星野がヴォーカルをとり、今井がギターに徹する。光を湛えたような瑞々しいアンサンブルと、メロウな星野のヴォーカルが心地よく響いた。


ツアー初日につき、セットリストや演出についての詳細は避けるが、初日でありながらいい具合に肩の力が抜け、ステージを楽しんでいるメンバーの表情やパフォーマンスと、ホールならではのダイナミックな光と映像の演出で、非常に満足度の高いステージが展開されているので、見逃さないでほしい。



そんな初日から一週間のうちに、メンバーとファンは大切な二夜を共に過ごすことになった。

10月19日、ツアー2日目の広島公演は、櫻井敦司の二度目の命日。公演は初日と同じセットリストで進んでいき、そのまま終わるのかと思っていたところに、最後に今井が「みんな知ってると思うけど、今日10月19日は」と語り始めた。次に続く言葉を予想して誰もがグッと息を呑んだと思うが、「俺の誕生日の前の前の日です、しかも還暦」と言うから、ふっと空気が緩んだ。「たぶんあっちゃんも遊びに来てると思うので、ラスト1曲、みんなで歌って締めようか」と、ラストナンバーに選んだのは「LOVE ME」。昨年の年末に行なった日本武道館公演では、ヴォーカルを完全にファンに委ねていたが、今回はファンの歌声に今井も歌を重ねた。重ねた思いは天に届いただろうか。終演後、星野は誓いを立てるように力強く「よし!パレード続けよう」と告げ、最後にステージに残った樋口は「19日です。今日はあっちゃんが来てくれてますから。泣きません」と言いつつも、少し言葉を詰まらせ、表情を歪ませたが、最後には「また来るんじゃけん!広島、大好き!」と笑顔を見せた。

そして10月21日の福岡公演は、今井寿の60歳の誕生日。ヤガミのドラムソロから始まったアンコール、メンバーが登場する時には真っ赤なサイリウムの光が会場を埋め尽くしていた。それはこの日、入場時に手渡されていたサプライズ。BUCK∞TICKのコンサートにサイリウムという、おそらく初めての組み合わせに、普段ポーカーフェイスの今井も少し驚いた表情を見せた。星野のギターを合図に「Happy Birthday to You」の合唱が始まると、大きなケーキがステージに。赤いちゃんちゃんこと赤い頭巾という王道の還暦スタイルを笑顔で受け入れる今井を、かつて誰が予想していただろうか。星野も思わず「めっちゃ似合ってる」と呟いたほどだ。たくさんの祝福を受けて、今井が「ありがとう。愛してるぜ」と感謝の言葉を放つと、会場は大歓声に包まれた。そして「じじいになったから言うわけじゃないけど、あっちゃんに言われたことがあって。遠慮するなって。今井は遠慮しないで作ればいいからって。これからもぶっ壊していくんで、まあ見ててください」と思いを語り、赤い頭巾とちゃんちゃんこを着けたまま、新しいロックンロール「渋谷ハリアッパ!」を披露した。還暦の赤は“赤ちゃんに還る”の赤、人生のリスタートを祝う赤。奇しくも「渋谷ハリアッパ!」で歌う“リインカネーション”ともリンクするではないか。新しいスタートを飾るにふさわしい、記憶に残るシーンだった。

生きるということは遺されるということ。
生きるということは愛し愛されるということ。

多くを語ったわけではないが、そんな大切な思いを共有した特別な二夜を経て、ツアーは12月29日(月)の東京・日本武道館公演まで続く。『スブロサ SUBROSA』からまた一歩、力強く前に踏み出したBUCK∞TICKが描く新たな世界をぜひ体験してほしい。

テキスト:大窪由香
撮影:田中聖太郎

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