2026.05.28
NEW“Lucy Show 003 ~Shout, Speed, Shake Your Rockarollica~“ ファイナルをレポート

今年4月に20年ぶりにリリースしたアルバム『ROCKAROLLICA Ⅲ』を携えた、Lucyのツアー『Lucy Show 003 ~Shout, Speed, Shake Your Rockarollica~』が、5月24日東京・EX THEATER ROPPONGIにてファイナルを迎えた。
あの狂熱の夜から数日。醒めない余韻と、一抹の寂寥の中にいる。
20年ぶりのLucyは、熟成されてまろやかになったのか、それともますます尖ったのかと、ツアー初日のレポートで問うたが、結論としてはその両方が絶妙に絡み合っていたと言わざるを得ない。たとえばまろやかになったと思えたのは、パフォーマンスにおける今井寿(Gt&Vo)とKiyoshi(Gt&Vo)の距離感だろうか。以前は二人のギタリストがそれぞれのテリトリーの中にいてぶつかり合う、ヒリヒリ感みたいなものがあったが、今はそのテリトリーが取っ払われ、向かい合ったり背中を合わせたり、自由気ままに絡み合っている。横に並んで振り子のように足を振る揃いのパフォーマンスも、岡崎達成(Dr&Vo)が座するドラム台に上がって3人で顔を合わせてかき鳴らすシーンも、随分と息が合っていて楽しそうだ。しかしながら、激しく絡み合う二人のギターに、ソリッドで力強い岡崎のドラム、そしてリウ(Ba)のクリアでいて厚みのあるベースと、横山和俊(Mani&Key&Per)が繰り出す多彩なサウンドが加わると、凄まじいエネルギーを生み出し、聴く者の感情を鋭く突き上げてくる。頭を空っぽにして、全力で駆け出したくなる衝動。まさにShoutしてSpeed upしてShakeする、理屈よりも先に身体が動いてしまうようなロックンロールの熱を全身に浴びて、楽しくて楽しくて笑っていた。いつまでも醒めない余韻の正体を、今こうして言葉にしながら噛み締めている。
幕開けを告げるSEの「Que sera sera」。プツプツとしたアナログ盤のノイズ音が大きくなっていき、旋律は不協和音へと歪んでいく。ステージを照らす真っ赤なライティングと相まって、次第に不気味さが立ち込めていった。観客のクラップが響く中、メンバーが登場。サングラスをかけたメンバー3人の風貌は、漫画家・田島昭宇氏が描いたアーティストビジュアルそのままで、まるでそこから飛び出してきたかのようだ。一曲目を飾ったのは「PUNK THE LUCY」。バンドそのものの自己宣言とも言える強烈な一撃でフロアを揺さぶった後、この日最初に言葉を発したのは今井寿。「六本木! ROCKAROLLICA!! Lucy Show!!!」。その言葉に被せるように始まった「Lazy crazy」の、高域を歌うKiyoshiと、低域を歌う今井とのハモリが新鮮で、底抜けにかっこいい。「今日もいつも通り歌って踊って叫んで騒いで、ロックンロールしようぜ!宇宙になるぞ!」というKiyoshiの言葉に続いたのは、骨太なギターリフが炸裂するサイケデリックな味わいの「からっぽの宇宙.」。「月光ブギ」は、淡い月の光と夜の湿度をサウンドにしたようなミドル曲。どちらもメインボーカルは今井で、肩の力を抜いたようなラフなボーカルに、独特の色気をにじませる。
「Hey!Hey!」とコール&レスポンスでフロアのテンションを高めて、なだれ込んだのは「Hey! Lu」。横山が打つタンバリンのリズムに合わせて、フロアが一体となって拳をあげる。イントロからリウがうねるようなベースを響かせた「SHOT GUN MARY」では、タイトな岡崎のドラムが疾走感を高めていく。
Lucyの魅力の一つは、やはり今井寿とKiyoshiのツインギターにある。ガシガシとせめぎ合い、絡み合いながら、リフやソロを弾き倒している。ダークで妖美な「Black hole widow」の間奏での、即興性のあるツインギターは実にダイナミックで、ブラックホール級の吸引力で魅了していった。岡崎作曲のインストゥルメンタル「Halo」では、今井がスタビライザーを胸の辺りで抱えるように持ち、横山のマニピュレートとともに浮遊する音のレイヤーを作っていく。その残響の上に、Kiyoshiのギターが奏でる「ヒツジの夢」のイントロが重なっていく流れが、ぞくっとするほど美しかった。曲が進むにつれ、情感が深まっていくKiyoshiのボーカルもいい。重く歪んだギターリフが印象的な「Wall 不確かな壁」では、メインで歌うKiyoshi以外の4人がコーラスを担い、重厚感を生み出していた。歌い終わり、Kiyoshiがマイクから少しずつ離れてフェイドアウトしていくのもドラマチックだった。二人ともVシェイプのギターを手に、ベースとのユニゾンで攻撃力高めな「I so heavy」。個人的には、“アイソヘビー”と日本語発音で歌うところがツボである。ヘヴィなのに、いい塩梅に抜け感があるところが人間臭くて好きなところ。
キャッチーでストレートなロケンナンバー「BULLETS -Shooting Super Star-」から終盤に向けて、アップチューンを畳み掛けていく。「いくぜ、ギロッポン!ディスコだ!」と今井の掛け声から「GAGA DISCO」が始まると、フロアは一気にディスコ化し、メンバーと一緒に腕を挙げて一体感を生んだ。岡崎が立ち上がると大歓声があがる。洋のリズムから、和のお囃子のようなリズムへシフトチェンジし、今井が阿波踊りのような動きを見せる。3人でボーカルをとる「かっちゃんコーリング」へ。岡崎がボーカルを取るところでは、今井とKiyoshiが横に並んで、初めのうちは左右対称に、そのうち同じ方向へと足を振り子のように振る。そんなパフォーマンスも、フロアのテンションをヒートアップさせた。続けて「犬とカウボーイ」は、あっけらかんとした明るいノリのウェスタン風のロックンロール。岡崎の跳ねるようなリズムと、「Yee-Haw!」と巻き舌のシャウトが光る。一呼吸置くようにして、Kiyoshiが「最高の魂の歌を」と前振りをしたのは、アルバムの最後を飾った「ROCK THE LUCY SHOW」。宇宙規模の壮大さで、生命への賛歌を歌う。現在のLucyのアイデンティティを象徴するような楽曲で、本編を締め括った。
アンコールは、ファイナル公演だけのスペシャルなトリプルアンコールで、1度目はLucyの1stアルバムに収録の「DOUBLE BIG BANG」から始まり、ザ・ルースターズの「C.M.C」、ザ・ロッカーズの「可愛いアノ娘」をカバー。さらに2度目も1stアルバムの「Hey!」で会場を揺らした後、ザ・ルースターズへのトリビュートが続く。低音で淡々と歌う今井に、ハスキーなKiyoshiのコーラスが絡む「ROSIE」と、歪んだギターや蠢くようなベースが不穏なアンサンブルを作る「バリウム・ピルス」は最高にクールだった。そして、「足りねーんだよ、東京!……って、かっちゃんが言ってるよ」とのKiyoshiの言葉を受けて、「足りねーぞ!シェイクしやがれ!」と岡崎が叫ぶと、「Rolling Lucy」に突入。再びフロアをかき回していった。3度目のアンコールに披露したのはサンハウス/シーナ&ロケッツの「LEMON TEA」と、インスト曲の「TEQUILA」。「TEQUILA」は1950年代のアメリカのロックンロールバンド、チャンプスの楽曲だが、ザ・ルースターズがカバーしたことでも知られる。メンバーの音楽的ルーツの一つである、80年代ロックシーンへのリスペクトを感じられたセレクトだった。「TEQUILA」の演奏がどこまで続くことになるのかは、岡崎の気分次第だったようで、岡崎の「こんなもんじゃねーんだよ!いくよ?いっちゃうよ?」との合図で、終わりそうだった演奏がさらに延長された場面も。ステージの上のメンバーも、観客もみんな笑顔だった。
「TEQUILA」の余韻がまだフロアに漂う中、一人ひとりが言葉を残していった。リウが「夢のような時間をありがとう。Lucy最高!」と叫んだところで、神奈川、福岡、愛知、大阪公演でベースを担当した小栗秋がKiyoshiに呼び込まれ、フロアに向けて一礼をする。「ほんと、みんな最高!」と横山が一言放つと、今井は「ありがとう。すっげー気持ちよかった。最高!ギロッポン東京。『ROCKAROLLICA』また20年とか言ってたら死んじゃうから……お前らが」と笑いを誘った。そして「新譜は作らずとも、またいろんなところで会えると思うんで、また会おうぜ!」と笑顔を見せた。そしてKiyoshiは「最高の曲作って、最高のアルバム作って、みんなこんなに盛り上がってくれて最高!」と感謝を述べると、最後に「個人的には、今井くんにいっぱいギター弾いてもらいたかったんだ、今回は。それが叶ったから感無量です」と心情を吐露した。
『Lucy Show 003』は、圧倒的な"ロケンショー"として完結した。この夜の模様はライブ映像作品「Lucy Show 003 ~Shout, Speed, Shake Your Rockarollica~」として、2026年9月30日にリリースされることも発表されたので、Lucyという最高の美酒に酔いしれたこの至高の夜を、ぜひ何度も反芻してほしい。"ロケン"に賞味期限なし!また会える日を楽しみにしている。
TEXT:大窪 由香
写真:森 好弘