EPISODE1

実際に聴いてみると、「NATIONAL MEDIA BOYS」にしても「LOVE ME」にしても、近年のライブで聴く、今のBUCK-TICKの音に近くなっている気がした。

「それで正解だと思います。あと、やっぱりもう25年も前だから、声がやっぱり若いんですよね。今回録り直したわけではないんですが、エフェクト処理したり、ボコーダーを使ったり、いろいろなことをしたことで、少し大人びた感じにはなってると思うんですよね。それでかなり印象が変わって心配する声もあったんですが、櫻井くんから「もう文句ないです。最高です。全曲こうしてもらいたいぐらいです」的なメールをもらって。彼は彼で、若い頃の声にちょっと物足りなさを感じてたりしたんだと思うので、そういう意味でいうと、いい具合に変われたのかなと思います。もちろん、メンバーの意見も反映されているので、彼らの意志が入った作品です。変化に戸惑う人もいるかもしれないけど、全体的にはスピード感も出たし、ギターの音はでかいし、激しくカッコよく生まれ変わったと思います」

改めて、何故今生まれ変わらせる必要があったのか。その意味をレコード会社の企画担当者はこう語る。「この先CDから配信になると、名曲はあっても名盤という言葉がなくなるかもしれない。パッケージ世代、名盤の喜びを知っているものとしては、名盤に光を当てていくことをしていかなきゃいけないと思うんです」。その熱い思いを裏付けるかのように、このメモリアルボックスにはもう一つの形、オリジナル音源でのアナログ盤がつく。

「『TABOO』まではアナログ盤を出していたんですけど、『惡の華』では当時アナログ盤を作らなかったんです。アナログ盤でアルバム制作をしていた頃は、A面一曲目B面一曲目っていう概念で曲順も決めていたんだけど、CDだとそうじゃないもんね。だから「NATIONAL MEDIA BOYS」で始まって「MISTY BLUE」で終わる、「DIZZY MOON」で始まって「KISS ME GOOD-BYE」で終わる、そんな聴き方をしたことがないと思うので、また違う印象で楽しめると思いますよ。アナログ盤を聴ける環境がない人もいるとは思いますが、手に入れたらぜひ、聴いてもらいたいですね。あと、ビデオアルバムの方も、基本はニューミックス音源なんですが、副音声でオリジナル音源が入ってる。音が違うと、映像もまた違って見えると思うんです。それもぜひ聴き比べてほしいなと思いますね。そして、現在の最高音質による『惡の華』はでかい音で聴いてほしい。ヘッドホンで聴くのもいいんですけど、スピーカーからダイレクトにでかい音で聴いてもらえたら嬉しいですね」

INTERVIEW:大窪由香