制作プロデューサー・田中淳一氏に訊く「惡の華(2015年ミックス版)」ニューミックスのポイント
「NATIONAL MEDIA BOYS」
今のBUCK-TICKは、メインボーカルにハーモニーをいろいろ被せて、重厚感のあるボーカルの雰囲気を作ってるんですが、この当時は歌の構成がすごくシンプルだった。なのでちょっと変化に乏しい部分に、オクターブ下のハモりを加えたり、ボコーダーを使ったりして、一曲をとおして飽きのこない目まぐるしく変化していく感じにしました。あと、今井くんのギターソロをでかく(笑)、ワイルドな感じにしてます。
「幻の都」
80年代のニューウェーブに、カッティングギターの面白いバンドがいっぱいいたんですけど、そういうエッセンスを強めながら、この曲は今の音にしちゃうと、彼らが影響を受けた80年代の音とは違うものになってしまって、この作品の良さが消えてしまうので、80年代の面白かった雰囲気をより強調した感じに仕上げました。ボーカルは以前よりも艶めかしく、色っぽくなってると思いますよ。
「LOVE ME」
原曲は結構アコースティックなんですよ。それを90年代以降のインディーギター系といいますか、わりとギターがガツンとくるギターロックのフィルターを通過して、今のBUCK-TICKのライブで聴ける「LOVE ME」に近づけたような。そんなふうになっていると思います。これは随分変わりましたね。
「PLEASURE LAND」
この原曲は聴いてると眠くなってくるような(笑)、そんなふわっとしたイメージの曲なんですけど、かなりギターを轟音にして揺らして、キーボードもちょっと歪みがあり、混沌としたギターロックの要素を強めました。BUCK-TICKはツインギターですから、当時に表現しきれていなかったギターが前面に出たサウンドになっています。
「MISTY BLUE」
イントロはだいぶ印象が変わりましたね。でも大幅なイメージチェンジはしてないと思います。あとは、“Let's dance~”のところに、もともと歌っていたのに外していた英語詞があったんですが、それを加えたり、いろいろ小細工はしてますが、今と昔の落差がない曲なんじゃないかなと思います。
「DIZZY MOON」
これは、ひきつったギターがうるさい感じになってますけど、わりとスピード感が出たんじゃないかなと。あとは歌のエフェクトを、いろんな場所場所で変えてあるので、その変化はついたかなと思います。この曲もビックリするほどは変わってないですね。
「SABBAT」
この曲もそんなにイメージは変わってないかと思います。音圧や迫力は全然違ってますけど。ボーカルのエフェクトをいろいろと施しているので、櫻井さんファンにはたまらない仕上がりになってるのかなと思います。
「THE WORLD IS YOURS」
この曲は圧倒的に歯切れがよくなってますね。頭の中ではTHE CLASHの「London Calling」が鳴ってるような雰囲気がするんですけど、それに近づいたかな。妖しさは残しながら、以前よりもすごくロックな感じになってると思いますね。個人的に一番好きな曲なんですよ。ライブでやってくれないですかね(笑)。
「惡の華」
アルバムバージョンの方は、シングルバージョンに比べると、幻想的な部分も残しつつ、シンセの音とかをかなりガツンと出した感じになっています。シングルバージョンの方はボーカルをより男前に激しくしたんですけど。アルバムとしてのはまりを考えた仕上がりになっています。
「KISS ME GOOD-BYE」
この曲はもともと線が細かったんですけど、しっかり下支えの効いたバラードになってると思います。それと、サビにハモりを加えたりして、全体的な流れがよくなった。“KISS ME GOOD-BYE”の輪唱をやめて、ディレイにしたので、この曲も最近のライブで聴くようなイメージになってると思います。