陰陽道は音楽(雅楽)とも深い関係がある。陰陽道では雅楽の音律と星の運行は一致して考えられ、それぞれの音には方位、季節、色などが当てはめられている。雅楽(※1)とは陰陽楽なのである。
※1)雅楽…「陰陽師」で描かれたことと、若手演奏家の登場によりソフトなイメージが作られ、愛好者が急増している。「陰陽師」の中では楽聖・源博雅が安倍晴明のパートナーとして登場し問題解決の重要なキーパーソンとして描かれている。


 日本のベストセラーコミックである「陰陽師」(岡野玲子+夢枕獏)をキーワードに、日本発の一大プロジェクトが生まれた。
U.K.のブライアン・イーノと日本の雅楽演奏者:伶楽舎が、(Earth and Heaven)というテーマにそって二つの異なる才能を発揮し作り上げた一つのアルバム、music for 陰陽師である。
古代と現代、東洋と西洋、そしてその中に広がるコスモロジー。アンビエントミュージックのオリジネーターであり、U2のプロデューサーとしても著名なUKロックの巨人ブライアン・イーノと1300年の家系を誇る雅楽の大家芝祐康氏率いる伶楽舎の2大アーチストが宇宙を満たすかのように地上から天上へ、天上から地上へと音を螺旋のように回転させながら演奏。
陰陽師が使う呪術、陰陽道では雅楽は人間の意識を天に届け、天からのインスピレーションを地上にを降ろす力があるとされている。雅楽の音律と星の運行は一致して考えられ、それぞれの音には方位、季節、色などがあてはめられており、雅楽を演奏することは宇宙をあらわすこととされた。
このアルバムは"陰陽師"をキーワードに東西の鬼才が作り上げたコスモであり、その世界観はCDパッケージの美術の細部にいたるまで一貫して貫かれている。

U2のプロデューサーとして、アンビエントミュージックのオリジナリネイターとして世界の音楽シーンに多大な影響を与え続けているイ―ノ。彼は今まで日本のCDに参加しようとしたことがほとんどなかった。しかし「陰陽師」を初めて手にとったとき、驚きと関心が芽ばえた。やがて、あるインスピレーションが湧くとともに、今までほぼ皆無だった日本のアルバムへの新曲レコーディングを決めた。彼はまた、雅楽との合同プロジェクトであることにも興味があり、このアルバムのために収録された雅楽のラフ・ミックスを聴き、さらにそれとは異なった角度からのアプローチで彼のイメージをトラックに焼き付けていった。このプロジェクトでもやはりイーノの存在感は巨大である。なぜなら天と地、東洋と西洋、未来と古代という次元軸を深く考え、アルバム全体の完成度を高めているからである。そしてまた、このアルバムの中の1枚を占めるその長大な新曲は28分に及び、彼の2年ぶりの新譜と考えても不思議のない作品となっている。

【ブライアン・イーノ】
 ロキシーミュージックの創設メンバーとしてデビュー。伝説的となった「フォー・ユア・プレジャー」に参加。1973年の「ヒア・カム・ザウォームジェッツ」からソロ活動を開始。ジョン・ケイル、ニコ、ロバートフリップ、などとのコラボレーション、デビッド・ボゥイとの「Low」「Heroes」「Lodger」の三部作を共作する。
80年代後半からU2の「ヨシュア・トゥリー」「Unforgettable Fire」「Zooropa」「Achtung Baby」をプロデュース。その後バンドのメンバーの何人かとその他のアーチスト(ルチアノ・パバロッティやハゥイーBなど)を集め「パッセンジャーズ オリジナルサウンドトラック1」をプロデュース。1997年、3年ぶりにアンビエントミュージックのソロアルバム「THE DROP」をリリース。
【伶楽舎(れいがくしゃ)】
 雅楽の合奏研究を目的に1985年に発足した雅楽演奏団体。音楽監督芝祐靖の指導のもとで現行の雅楽古典曲のみならず、廃絶曲の復曲、正倉院の復元古代楽器による合奏、雅楽器を使った現代作品の演奏など従来の枠にとらわれない活動を展開。国内各地のほか海外(タングルウッド、クイーンエリザベスホール他)でも公演を行う。「伶楽舎」とは楽人の祖とされる古代中国の「伶倫」にちなんだ会名で「伶倫楽遊舎」の略称。
(伶楽舎音楽監督 芝祐靖〕
1935年東京生まれ。奈良系の雅楽の家に生まれ、宮内庁楽部生科で横笛、左舞、琵琶などを修め、同庁楽師としておもに横笛で活動。84年に退官し横笛を中心とした古典雅楽の演奏のほか現代雅楽、現代邦楽の作曲演奏をし敦 琵琶譜など廃絶曲の復興も手がける。クフモ音楽祭、ドナウエッシンゲン音楽祭、ノルマンディー音楽祭などに参加して現代の雅楽作品を海外に紹介している。現在、国立音楽大学客員教授、東京芸術大学講師、伶楽舎音楽監督。87年芸術選奨文部大臣賞受賞。97年度モービル音楽賞受賞。
   
(C)岡野玲子・夢枕獏/白泉社
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