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STORY
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ストーリー
もうひとつの昭和の物語

芳枝もまた崖っぷちに立たされた。魚市場から休みを出され、釣り船の客も激減した。弱みにつけ込んだ組合長・吉田に言い寄られ、毅然とはねつけた芳枝は、思わず夫の合羽や道具が残る網小屋に走り込む。そして4年間耐え続けて来た哀しみを、姿なき夫に叫ぶのだった。「コラ亭主、でてこい。誘惑だって、いっぱいあるっちゃけんね。やい、聞いとるとか‥」そこには、どんな時でもツヨシを笑顔で包み込む気丈な母の姿ではなく、愛する夫の思い出に涙するひとりの女性の姿があった。

 

  利夫が記事を書いた理由は、自分が書いた記事によって修治を戻って来させたいという“記者魂”からだった。だがそれがどれだけ芳枝親子に酷い仕打ちになったかを悟り、利夫は芳枝に頭を下げる。「私たち親子をそっとしておいてほしかった」と、心情をぶつけた芳枝は、ずっと夫の帰りを信じており、そして、信じ続けることが幸せだと心の奥を見せた。かいま見たその強さと愛の深さに、利夫は胸を突かれる。
  その頃、とある工事現場には、働く修治の姿があった。修治は、ツヨシの写っている数日前の新聞を見つける。写真を震える指でなぞり、苦悶の涙を流す修治‥。
  今や記者としてではなく、ひとりの人間として、利夫は、母子のために動き出す。たとえ一晩だけでも、修治と母子の暖かな夜を作ってあげたい‥。
  記事が出て以来、修治が戻る可能性を考え、尾崎家近辺は安藤刑事(宇崎竜童)らに張り込まれていた。安藤刑事との心理戦を戦いながら、利夫は、修治の居場所に繋がる糸口を見いだし、彼を家族へと戻すべく、奔走する。

  果たして、ツヨシが見上げる屋根に、あの風車が春の風を受けて回る日は、来るのだろうか?
 
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