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STORY
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ストーリー
「父ちゃん、今年もまた会えるね」

  唐津市呼子町で漁業を営む尾崎修治(時任三郎)は、妻の芳枝(工藤夕貴)、息子のツヨシ(小清水一揮)、父親の一平(犬塚弘)と、貧しいながらも暖かい家庭を築いていた。だが秋祭りの日、大切な商売道具、高速艇の漁船を借金のカタに奪われそうになり、高利貸しの野田ともみあったあげく、彼を死なせてしまう。そして、そのまま姿を消した。

 

  それから4年後の秋。芳枝は、釣り船や魚市場で必死に働き、ツヨシや、介護が必要な身となった一平の暮らしを支えていた。ツヨシは、いまだに修治を強く慕い、帰りを待ち続けている。「もう父ちゃんのことは忘れよ」と、辛さを隠して言い聞かせる芳枝。明日への希望を託しながら。
  網小屋の屋根の上、修治が空き缶で作った風車は、錆び付き、もう動かない。ツヨシは、風車を見上げるたび、寂しさに泣きそうになる。
  ツヨシは、父の事件以来、学校で心を閉ざしがちだった。担任の岡本洋子(吹石一恵)は心配し、兄の利夫(西島秀俊)に相談する。彼ら二人も幼い頃に両親を失っており、人一倍、親のない寂しさや辛さを知っていた。
  佐賀日報呼子支局の新任支局長である利夫は、修治の事件に興味をそそられる。ある日、彼は、交番前で掲示板をじっと見上げているツヨシを見つける。その掲示板には、今年もポスターの張り替え時期を迎えて掲示された指名手配犯・修治の写真があった。目を潤ませて、父の頬に触れようと手をのばすツヨシ‥。利夫は、秘かにシャッターを切る。
  翌朝、新聞には、ツヨシの写真とともに、『父ちゃん、今年もまた会えたね』という見出しの記事が載った。その“感動の記事”は、小さな町に大きな波紋を投げかけた。事件の噂は蒸し返され、ツヨシは小学校でいじめられた。洋子は兄に怒りをぶつける。

 
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