INTERVIEW

Special Interview Vol.3 1/4  インタビュアー 小野島大

--DVDの話に移ります。まず環ROY君と一緒にやってる「Good-bye Session featuring 環ROY」です。これは映像にも出てきますが、Ustreamの放送の前日にオファーを出したという。

「まだあの時に<Good-Bye>は完成前だったんですね。曲を詰めていく段階で、ヒップホップぽいアレンジになっていった瞬間があったんですよ。これこのままラップを入れて曲として完成できないかなと思って、それをUstreamで放送できたら面白いと思いました。その瞬間に環君の顔がパーンと浮かんできたんです。そういえば環君ってけっこうフリースタイルでやったりしてるし、言ったら来てくれるかも、って。なぜ環君が頭に浮かんだかというと、環君がなんかのリリース・タイミングで、僕らの<映画>って曲のトラックを使ってフリースタイルで自分のCDの宣伝してたんですね。それをYou Tubeで見たらかっこよくて、すぐにお礼にメールしたんです。それ以来やりとりするようになって。それでお願いしたら”いいよ?”って来てくれて」

--ラップの人と共演したのって初めてですよね。

「初めてです」

--事前のリハーサルとかやったんですか。

「ほぼやってないです。当日軽くちょっとあわせただけで。環君も当日初めて曲を聴いて。リリックは全部即興ですよ。その場で全部」

--おお、そこはさすが場数を踏んでるだけはありますね。

「環君もDVD(の対談)で言ってましたけど、ラップって会話なんですね。リズムにあわせて喋ることがラップ。その時思ったことを瞬時に言葉にしてリズムに乗せる能力って、僕らが音楽を作る時と全然違うところを使ってるなって思いました」

--ひとつの言葉を捻り出すために何日も悩み続けるような作り方とは好対照ですね。

「そう。あと、より強く人間が出るんだなと思いましたね。その人が見てきた景色だったり、通ってきたカルチャーだったり。それがリリックに出てくるんですね」

--フリースタイルだとその場の瞬発力勝負で、取り繕えないから、なおさらそうでしょうね。

「ラップの人たちって、地域性、ローカルを大事にするじゃないですか。それってそういうことなんだなと思いましたよ。そうじゃないと言葉にできないなって思うし。自分もちょっとラップみたいなことをやるとーーTHA BLUE HARBのILL-BOSSTINOさんの影響なんだけど(笑)ーー”北海道から出てきて?”みたいなことが自然にラップになっちゃうんですよ(笑)」

--なるほど(笑)。じゃあ環君とやって得られたものっていうと…

「自分たちのグルーヴとかサウンドに対して別の人が入ってくることって、今までなかったんですよ。それをメンバーが受け入れたっていうのがひとつ大きな発見だった。メンバーがどういう影響を受けたかはこれからわかってくると思うけど、ちゃんと誰かと一緒に1曲作ってリリースしてみたいなって気持ちが出たのが大きいですね。それは環君じゃなくても、BOSSさんでも小山田さんでも、違った人と何かを形にすることにチャレンジできるスタンスが整ったなと」

--それは自分たちの確固たるものを築いたという自信もあるんですかね。

「…だし、自分たちの立場を理解するきっかけになるかなって思ったんです。たとえば…東方神起とコラボするのとILL-BOSSTINOさんと一緒にやるのって、まったく違うじゃないですか。でも僕らは、どっちもやれる状況にあるんだよってこと。どっちとやっても面白いことができる感覚っていうのを自分たちでちゃんと掴んできてる」

--SMAPに曲も提供するし、環ROYと共演もできる。

「小山田さんにリミックスもしてもらえるし、AOKIさんと一緒にトラックも作れる。その自在さが自分たちなんだなって」

--ああ、それは「さよならはエモーション」の話の時のレイヴ・パーティーの話に通じますね。

「レイヴ・パーティーをしたいというのがひとつの大きな目標で、そこにいろんな種類の人たちが集まってSAKANATRIBEーサウンドトライブができる。その瞬間のための準備を今やってるんです。僕らのライヴにTHA BLUE HARBが出てもおかしくないし、小山田さんが出てもおかしくない。SMAPが出てもおかしくない。そういう空間を作れるのはほんとに面白いと思いますけどね。音楽の楽しみ方が一辺倒じゃないってことなんですよ。僕らにとってみれば当たり前なんですけどね。たとえばTAICOCLUBに行ってね、ceroのバンド演奏を聴いて、それからBibioのDJで踊る。別に普通のことだけど、今のフェスにしか行ったことがない子って、どっちにも戸惑う。どう聴いていいのかわからないんですよ」

--そうか、フェスの基準が邦楽ロック系のフェスになってるってことですね。

「そうなんですよ。だから…ぼくは両者をつなげたいと思う」