INTERVIEW

Special Interview Vol.2 1/4  インタビュアー:小野島大

--「蓮の花」ですが、これは映画のタイアップ曲ですね。山下智久主演の『近キョリ恋愛』の主題歌です。

「これは端からタイアップありきですね。ただ最初はどんなタイアップかも知らされずに、タイアップを意識しないで1曲シングル書いてくれって言われてたんですよ。でもできた曲がどんなタイアップに使われるのかわかんないまま作るのも難しい。なのでどんなタイアップなのか聞いて、映画も見たんですけど…かなり王道の恋愛映画だったんですよ。これを自分がどう書いたらいいのか…」

--「愛を信じてない」のにねえ(笑)。(注:今回の初回限定盤DVD収録の環ROYとの対談で、そういう趣旨の山口の発言がある)

「(笑)愛を信じてない僕が少女マンガが原作の恋愛映画に楽曲提供するのはどうなんだろうと(笑)。まあ自分たちらしい曲を書いて、それが結果的に映画に合えばいいかなと思って作り始めて。で、メロディも作って曲もできて、あとは歌詞、というところで全然書けなくなっちゃった。映画に引っ張られすぎちゃって」

--映画とのマッチングを考えすぎて。

「マッチングというか、いい外し方。それを考え過ぎちゃって。仕方ないんで一回フラットに戻して、メロディも変えて、その上で歌詞も書き直して、できたのがこの「蓮の花」です。だからムーヴィー・ヴァージョンは別のメロディでアレンジしたオケになってます。メロディが変わったせいでトラックもいろいろ差し替えなきゃいけなくなって。なのでシングル・ヴァージョンの方は歌も含め一部録り直しました。音色も差し替えたし、ドラムも打ち込みからナマに変わったし、ヴォーカルもコーラスも一部録り直して。なので2回レコーディングしましたね」

--あるインタビューによれば、歌詞は「曲を書けない自分」についての歌だそうですけど。

「まさにそのまんまです」

--発想の元は芥川龍之介ですか。

「『グッドバイ』で太宰治で、芥川龍之介で『蜘蛛の糸』にしようと思ってたんです。そういう文豪繋がりみたいな(笑)。まあそれは後付けで。その時期、うちで歌詞を書いてる時によく蜘蛛が出てきたんですよ」

--歌詞が書けなくて悶々としてる時に。

「だからその時のことをそのまま歌にしたという。すごくリアルな状況を歌にしたってことですね」

--「蜘蛛」って言葉はなんらかの隠喩を含んでるんですか。

「うーん…いろいろ複合的に隠喩してるけど、でもこれといってはないですね。リアルですよ」

--映画の内容とはリンクしてるんですか。

「リンクさせなかったですね。けど、映画のあとにこれが流れてるのを聞いて、結果的にリンクしたな、と思いましたね。リンクしてないことがリンクした、みたいな」

--以前はドラマの主題歌もやってましたけど、その時はどうだったんです?

「そうですね…やはり自分の作品ってだけじゃなく。ほかの作品の一部にもなるわけだから、自分の音楽のせいでそのドラマや映画が面白くなかったり、そのCMの商品が欲しくないと思われたら、責任重大だと思うしね。そういった部分で、毎回気をつけてはいます」

--映画ヴァージョンとシングル・ヴァージョンが変わったのは、シングルとしての独立した作品性を考えたということですか?

「ていうところもあるし、もともと違うメロディで作ったオケをそのまま新しいメロディに乗っけたせいで、いろいろ歪みが出てきたんですよ。それを映画ヴァージョンの方で無理くり当てはめたところもあったし。でもその歪みみたいなのが、映画ヴァージョンの良さでもあったんですよね。でもシングル・ヴァージョンにする時に、もっとちゃんと整理しておきたいと思ったし、映画の一部じゃない自分たちの作品としてしっかりパッケージするように作り直そう、というのが、やり直した理由ですね」