--サウンド的なコンセプトとしては、どういうところを狙ったんですか?
「映画ヴァージョンに関してはスクラッチを入れたりして、けっこうヒップホップのりの曲調にしたくて、ドラムも打ち込みだし、ビートも全然違ったんだけど、シングル・ヴァージョンにした時にはもっとパンクで生バンドな、エレクトロ・パンクみたいなテーマでやりましたね」
--ちょっとサイケデリックな感じも。
「うん。みんなでふざけて言ってたのは、<蓮の花>は”ジャパニーズ・仏教・サイケ・ポップ”だって(笑)。」
--「さよならはエモーション」とカップリングというのはどの段階で決まってたんですか。
「<蓮の花>をレコーディングしてるときから、両A面で行くというのは決まってましたね」
--カップリングしたときのバランスやマッチングも考えながら作った。
「うん、考えてました。<さよならはエモーション>は、ナマっぽいエモーショナルな楽曲になるのは決まってたし、それとの対比で、ミドルテンポで、ポップなもの。10代の女の子が見に行く映画の主題歌になるわけだから、キャッチーなものにしようと。最初、草刈(愛美)が歌うのもアリだよねって話をしてたんですよ。初期ヴァージョンのデモには草刈が歌ってるのもあったりして」
--おおお、聞いてみたいですね。
「それはそれですごくよかったけど、まあ、せっかくいただいた映画の主題歌で、いきなり草刈が歌うのどうかなと(笑)。なのでそれはナシになりましたけど」
--ポップでキャッチーといっても、曲の内容そのものはそんなに明るいわけじゃないですよね。
「暗い。でも僕らの曲の中ではキャッチーな方かなと」
--♪苦しむ僕を引っ張り上げてよ♪って、恋愛映画の最後に(笑)。
「(笑)でもけっこう最後はぐっときますよ。興行収入もすごく良かったみたいだし」
--じゃあいろんな人に聴かれてるわけですね」
「ですね。今まで僕たちに興味のなかったような若い子たちから”いい曲ですね”って言われるようになった。ある人からは”すごく機能的なポップ・ソングなんだね”って言われましたね。ミスチルとかそういうのと同じように、サカナクションのポップ・ソングとして聴かれたと」
--でも今までだってポップ・ソングを書いてるつもりだったわけでしょ。
「でも、どこかこうーーまあターゲットにしてる層がそうだったというのもあるんだけどーースカしてるところがあって。<バッハ>とかもそうだけど。ズラしてるっていうか。ふざけてるところがあったけど、<蓮の花>ってけっこうまっすぐだと思いますね。”純愛”とか”純潔”とか”真面目”みたいな」
--愛を求めてる歌詞にもとれますよね。
「若い子たちにも理解できたっていうか。メロディもキャッチーだったんでしょうね。サビ始まりだし」
--そういう意味で新境地を切り拓いたという実感があったんですか。
「それが、特になかったんですよ。後で気づいたっていうか、あ、そうなんだって感じでしたね。聴かれ方をみて」
--ほかの曲がたまたま若い子たちに聴かれる機会がなかったからではなく、この曲自体にそういうアピールする力があった。
「だと思うんですけどね。過去の自分たちの曲も聴かれなかったわけではないと思うんですよ。Mステとか出てたし。曲だってキャッチーなつもりだったけど、それとは違った形で響いたんだなと。自分たちの今の立場と、この曲のキャッチーさが」
--なるほど。
「でも意外でしたね。広告のトラックで、自分の曲を流しながら映画の宣伝やってるのを見て(笑)。すごく面白かった。自分の曲がそんな風に使われるなんて想像もしてなかった(笑)」
--そう考えると、「さよならはエモーション」とのカップリングは絶妙なバランスですね。
「そうかもしれないですね」
--この曲は今後ライヴでやっていく曲になりますか。
「もちろん。次のツアーでは必ず演奏する曲になりますね」