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INTRODUCTION
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イントロダクション
信じる心から生まれた、至上の家族愛。

  昭和晩年秋、海辺の町、唐津市呼子。家族の暮らしを守るために、心ならずも殺人を犯して逃亡した父・修治。9歳の息子・ツヨシは、4年たった今でも、大好きな父の帰りを待ち続けている。その切ない心を優しく包みながら、母・芳枝は、気丈に母子の暮らしを支えていた。父恋しさのあまり、ツヨシは、交番前の掲示板に手を伸ばし、写真の父にそっと触れる‥。それは、毎年この時期に掲出される指名手配犯の写真だった。その姿は新聞記者・岡本に目撃され、「父ちゃん、今年もまた会えたね」という“感動の記事”になる。それは、事件の心ない噂を蒸し返すと同時に、意外な人々による暖かな反応も呼び起こす。果たして、母子に春は来るのだろうか‥。
  映画『春よこい』は、「父ちゃん今年もまた写真が出るね」という一言がヒントだった。それは、逃亡犯を父に持つ男の子が、指名手配写真が掲出される時期を知って思わず口に出した言葉だという。この切ない心情が核となり、胸に迫る感動の物語が立ち上がっていった。
  こうして誕生した『春よこい』の物語は、逃亡犯の父を慕い続ける息子を守って、必死に現実に立ち向かう母の愛をまっすぐに描く。たとえ逃亡犯となっても、父への愛は変わらない。そんな息子・ツヨシのいじらしい心を切なく受け止めながら、全力で一日一日を重ねていく母・芳枝。その愛は、息子のためを思えばこそ、時には「父ちゃんを忘れよ」と諭す辛い愛でもある。そしてまた、絶望の淵にあっても、踏みとどまって前を向く、しなやかな強さでもある。夫への変わらぬ思いを胸に秘めて、息子のために、ひたむきに今日を生き抜く母の姿は、観る者の胸を熱くするに違いない。
  そして、夫を、父を、信じ続けるこの母子の笑顔は、殺伐とした現代に、本当の愛とは何か、家族の絆とは何か、を問いかける。

良き昭和からの、心温まる贈り物

  映画の舞台は、昭和晩年の佐賀県唐津市呼子町。そこには、修治を執拗に追いながらも、芳枝の哀しみを察する刑事がいた。記事の波紋に悩み、母子のために奔走する新聞記者がいた。ツヨシを心から心配する先生がいた……。昭和への郷愁誘う海辺の風景のなかで、人間味あふれる人々が、強い絆で結ばれた母と子を暖かく見守る。唐津市呼子町での撮影を迎えた『春よこい』は、私達が忘れかけた人情が光る、良き昭和の物語でもある。

 
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