INTERVIEW

Special Interview Vol.1 5/6

--やはりよりたくさんの人たちに聴いてもらう立場になったから、より強く責任感を感じるようになったということでしょうか。

「いつも応援してくれてる人たちと、ライトなファンと、全然興味がない人たちと。そういう層を明確に意識して、自分は曲を書くようにしてるんです。血が濃い人たちにアプローチする部分と、そうじゃない人たちにアプローチする部分って、やっぱり違うと思うんですよ。だけど、それを1曲だったりひとつの作品で網羅したいと思う。だから…その体を見つけるのが自分の音楽を作るモチベーションだし、狙うところになってる」

--「表」と「裏」を一体化させる。

「クラブ・ミュージックっていうのものの立ち位置もそこにある気がして。だから難しいしやりがいがあるところなのかなって思ってますけどね。若い子たちに何か影響を与えてしまうことって、ものすごい責任があることだなって、年を取れば取るほど感じるし。だから“なぜこいつらこんなことやるんだろう?”って感じることもいっぱいあるし」

--他のアーティストに対して?

「うん。そういう風に反発する気持ちがある分、自分が作るものに対してはちゃんと責任を全うしたい。人がどう思うかっていうよりは、自分の中だけのことですけど。納得したいんですよね。妥協したくないっていうか、諦めたくないっていうか。13歳14歳の子も、自分と同年代の人たちーーつまり渋谷系を通ってきた人たちも、いいよねって思う1曲。もっと上の団塊の世代の人たちにも、しっかり音楽やってるねって思ってもらえるもの。マイルド・ヤンキーにもいいねって言われたい(笑)」

--つまりはすべての人に聴いてもらいたいってことですね。それは最大公約数的な曖昧なものになりませんか。

「楽曲1曲では無理かもしれないけど、立ち位置としては作れると思うんですね。たとえば…坂本龍一さんって、反原発の活動を始めてからはいろいろな意見があるかもしれないけど、それ以前は誰も否定しなかったと思うんです。実際に世界で活躍してたし、ものすごく優れた音楽家だし、素晴らしい曲も書いてきた。知らない人はいるかもしれないけど、否定する人はいなかったと思う。僕はそういう場所をJ-POPとして作りたい」

--坂本龍一のほかにそれができてる人は?

「ジャンル違うけど…北野武。あとは…スポーツ選手とかになってくるんじゃないですかね」

--うーむ…

「別に文化人になりたいわけじゃないですよ。音楽家としてちゃんと…」

--尊敬されたいですか?

「尊敬…されたいわけじゃないけど…」

--尊敬されたいか、愛されたいか。

「ああ…愛されたくもないし、尊敬されたくもないですね(笑)。認められたい」

--認める…のはみんな認めてるんじゃないですか?

「いや、もっとですよ。自分なりの価値基準とか物差しってあるじゃないですか。いろんな物差しでミュージシャンって評価されると思うけど、その物差し、これは間違ってるけどこれは合ってるとか、自分はそう思うって物差しが、シーンの中でちゃんとした意見として受け入れられたい。ひとつの意見として、名実ともに。だから…たぶんミュージシャン気質じゃないのかもね。ふふふ(笑)」

--一目置かれたい、ということですか。

「たとえば…何十年後かに自分がいいなと思った人たちに“サカナクションに影響受けました”って言われたい。サカナクションを聴いたおかげでこんな音楽を好きになったとか、こんな経験ができたとか。こういう世界があったんだって知らせたい。音楽ってものが一辺倒じゃないんだと。メディアの表面に流れてるだけじゃなくて、君たちが知らないこんな世界もあるんだと。そっちの面白さとこっちの面白さ、両方知ってる人たちが増えるといいと思うんです」

--つまり特定の派閥の代弁者になるつもりはないと。

「ないですまったく。こないだファットボーイ・スリムのイベントに出た時にそう感じたんですね。六本木のクラブで夜遊びしてるような、楽しむことにかけてはプロフェッショナルな人たちもいる。そういう人たちは僕らの音楽でもスティーヴ・アオキのEDMでも楽しむ。その一方で首にタオルを巻いた、ロック・イン・ジャパン・フェスに行ってるような人たちもいる。それが混ざってる空間が、ドンキホーテみたいですごく日本ぽいなと思ったんですよ。こういう場所を作っていきたいっていうのが、ひとつテーマになってます」