アモルフィス
AMORPHIS
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2025.09.28
NEW9thアルバム『SKYFORGER』(2009)における叙事詩「カレワラ」の概要
嫁探しのため美しい娘がいるというポホヨラへ旅に出たワイナモイネン(白い髭を長く伸ばした逞しい老人。広大な知識と魔法の力を持ち、大胆で判断力にも優れる。多くの伝承や呪文の中で最大の英雄)は、何日も大海原を漂い、命からがらポポヨラへ辿りついたが、見知らぬ土地での生活に無理を感じ、ポホヨラの魔女ロウヒに自国へ帰る方法を尋ねる。するとロウヒは「富を生み出す魔法の挽臼サンポを鋳造してくれれば、帰る方法を教える」ともちかけた。これに対しワイナモイネンは「私はサンポを作ることは出来ないが、素晴らしい鍛冶職人イルマリネンを祖国から寄こそう。彼はこの世の大空の基礎や虹をも鍛造した名工だ」と応じ、交渉は成立。
祖国へ帰るとワイナモイネンは、カレワラの荒野で高らかに歌い、一本のモミの木を出現させる。その木の枝に金色に輝く星や月を吊るした。ワイナモイネンがイルマリネンに「ポポヨラには美しい娘がいる。サンポを鋳造した者はその娘を手にすることが出来る」と唆すも、「ワイナモイネンよ。あなたは自らの命のために、私を担保にし、恐ろしい土地ポポヨラへ出向かせようとしているのですね。私は決して行きません」とイルマリネンは断った。するとワイナモイネンは、「ポホヨラとカレワラとの境には、頂に月が照り、枝には星のある松がある」とイルマリネンの好奇心をくすぐり、自分の目で見たものしか信じないイルマリネンを、モミの立つ場所まで連れて行くことに成功。神秘的なモミまで辿り着くと、ワイナモイネンは「月と星をモミから取ってきたらどうだ」とイルマリネンを唆し、イルマリネンはモミの木に登る。その瞬間、ワイナモイネンは大声を張り上げて歌うと、嵐が起こり、イルマリネンはモミの木ごとポホヨラへ飛ばされてしまう。
ポホヨラに来てしまったイルマリネンは、魔女ロウヒと出会う。ロウヒは、この男性がサンポを鋳造できる鍛冶職人イルマリネンだと知り、サンポを作らせるため、娘たちに綺麗な格好をさせ、イルマリネンをその気にさせる。何とかサンポは完成し、改めてイルマリネンは娘に求婚するも、「私があなたに嫁いだら、山々の頂からツルコケモモが消え、小鳥も消え失せることでしょう。だからあなたと一緒には行けません」と言って断り、イルマリネンは哀しみに暮れ帰郷する。
暫くして、ワイナモイネンがポホヨラの娘に求婚するため舟で旅に出たことを、妹のアンニッキから知らされたイルマリネンも、ポホヨラへと向う。イルマリネンとワイナモイネンは、力づくではなく娘の意思を尊重して、正々堂々と勝負することを誓い、それぞれ求婚する。ロウヒは舟に貴重品をたくさん積んでいたワイナモイネンと結婚することを娘にすすめるも、娘は老いたワイナモイネンよりも若く容姿の良いイルマリネンを選んだ。ロウヒから様々な難題(毒蛇の野の耕耘、黄泉の国の熊と狼の捕獲、トゥオネラ河の巨大魚捕獲)を出されるも、娘の助言(それぞれ純金の鋤の鋳造、鋼鉄の轡の鋳造、強靭な鷲の鋳造)もあって、イルマリネンはようやく娘と結婚することを許された。そして盛大な婚礼が催された。
幸せな生活が数年続いたが、クッレルヴォ(ウンタモに滅ぼされたカレルヴォ一族の女がウンタモのところで産み落とした男子。飛びきり力に優れるが、正しい育て手の下で育てられなかったため、まともなことが絶対に出来ない)によって、イルマリネンの妻が殺される。イルマリネンは、妻の死を大いに悲しみ、3ヶ月間泣き明かした後、金と銀で花嫁を作ることを思いつく。しかし、黄金の彼女は動くことも話すこともなく、抱いて寝ると冷たく、イルマリネンの哀しみは余計に増した。
イルマリネンは再びポホヨラに向かい、妻の妹を求めた。ロウヒは娘の死を聞いて怒り、二度と娘はやらないと告げた。彼は娘に直接に願ったが拒否され、とうとう娘をさらう。娘は怒り、悲しみ、許しをこうたが彼は聞かず、とある村に逃げ込んだ時、彼は疲れて寝てしまった。目を覚ますと、娘は他の男と楽しんでいた。イルマリネンは怒り悲しみ、娘をカモメに歌い変えた。
イルマリネンは自分の国へ帰ると、ワイナモイネンに出会う。ワイナモイネンは彼に「ポホヨラの暮らしはどうだったか」と尋ねた。イルマリネンは「向こうにはサンポがあるから幸せに暮らしている」と告げた。そこでイルマリネンとワイナモイネンはサンポを奪回することを決め、舟でポホヨラへ向う。その後、レンミンカイネン(男前で、武術の腕も魔法の腕も特級だが、女たらし。しかもわがままで身勝手、そのためにあちこちで騒ぎを起こし、災難にも遭う若者)も仲間に加わる。道中、巨大カマスと戦闘し、ワイナモイネンはそのカマスの骨で楽器を作った。それがカンテレであり、ワイナモイネンが弾くと、動物や妖精が集まり、音色を聴いた人すべてが涙を流した。ワイナモイネン自身も涙を流し、その涙が海に落ちて真珠となった。
ロウヒは軍勢を仕立て、戦船を進撃させた。ワイナモイネンは舵を海から引きだし、殴りつけた。鳥の姿のものは海に落ちたが、爪が引っ掛かりサンポも海に落ち、破片となった。サンポの破片は各地に流れ着き、それぞれの地を豊かにさせた。ロウヒは復讐のために熊を送り、霰を降らせるというが、ワイナモイネンはそれに対抗できる旨を答え、ロウヒは泣く泣くあきらめた。ポホヨラにはサンポの破片はほとんど流れ着かず、貧しい生活を送ることになった。ワイナモイネンは陸に着くと、サンポの破片を見つけ、土地が繁栄するように呪文を唱えた。
ワイナモイネンが新しいカンテレを演奏すると、月や太陽まで近寄って聞き惚れた。ロウヒはそこで月と太陽を捕まえ、ポホヨラにつれ去り、鋼の山の中に幽閉し、さらに火を奪った。世界中が闇に包まれ、至高の神ウッコまでが憂鬱になった。ウッコは月と太陽を探したが見つからず、新たに火を作るが、それを大気の娘が落としてしまう。ワイナモイネンとイルマリネンはその火を探しに向かい、大気の娘に出会い、火はあちこちを焼いた後、魚に飲まれたことを告げる。2人は網を作り、火を飲み込んだ魚を探すが捕まらない。彼らはとても大きな網を作り、ついに魚を捕まえた。火はその後周辺を焼いたが、やがて収まり、皆の家を暖めることになった。
しかし月と太陽は見つからず、人々はイルマリネンに懇願し、彼は新しい月と太陽を作った。しかし作った月と太陽は輝かなかった。ワイナモイネンは占いによって本物の月と太陽の行方を知り、ポホヨラに向かった。彼は家に入り、月と太陽の行方を尋ね、その解放を迫った。しかし聞き入れられなかったので、戦って彼らを倒した。彼は隠し扉を見つけたが、しかし開くことができなかった。彼はイルマリネンに扉を開く道具の作成を依頼した。ロウヒは鳥に姿を変え鍛冶屋を訪ね、何を作っているかと尋ねた。彼は「ポホヨラの老婆の首輪だ」と答えたのを聞いて、彼女はついに観念し、太陽と月を解放した。ワイナモイネンは月と太陽に挨拶し、これからも変わらず照らし続けるようを求めた。
その後月日は経ち、マリヤッタなる少女が処女懐胎し、男子を産む。その子をどうするかの判断を求められたワイナモイネンは彼を殺す判断を下すが、その子になじられる。皆はその子を祝福し、行き場をなくしたワイナモイネンは旅立つ決意をする。海の彼方に旅立つところで物語は終結する。この男子はイエス・キリストを指し、キリスト教の拡大によってフィンランド土着信仰が追いやられたことを意味している。
参考資料:ウィキペディア