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【Vol.3】
しかしまあ何ですな、気がつくと全然文章を新しくしないままに月日は流れ、もうすぐ年末というわけで。何とも申し訳ない、と思う社会人としての気持ちと、てやんでえこちとらがやってくれって頼んだわけじゃあるめえし、という江戸っ子的気持ちが半々、といったところでしょうか。で、前回はどこまで話しましたっけ、そうそう名取さんのコネでビクターさんでレコードを作ることになった、ということまで行きましたが、実はこれ我々にとっては3作目にあたるわけでして、その前に2枚、ヴィヴィッドさんというインデペンデント系レーベル、というんですかね、日本語にすると独立系レーベル、ですか、これも収まりが悪いですが、インデペンデント、っていうのはワープロで打つとこりゃかなり大変でね。私、カナ打ちですがそれでも大変。最近やけにこういうカタカナが増えましたね。昔、このテのカタカナに非常に弱い、アキラという知り合いがいましてね、かなりしびれましたよ。 「吾妻さん、この前あれ買いましたよ、ゲイ トマウスの入ってるオンパニズム。」 で、次郎吉はライブハウスですから録音のブースなどは無いわけで、大きな音のギターアンプをどこで鳴らそうか、と模索してたどりついたのが女子トイレでしてね、これがまた独特の響きというか、独特の香りというか、非常に個性的な音がしましたね。ミックスダウンは私がやらせて頂いたんですが、当時はまだアナログ全盛の時代だったもんで、低予算の録音となるとエコーマシンが非常にショボい。素晴らしい機材はあるのだけれどそれを借りるとなると結構凄い金額が必要となる、というのをどうするか、というのが大きな課題で、ヴィヴィッドの長野社長にそんな相談を持ちかけたところ、エコーマシンの代わりの物は無いのか、そもそも昔はどうしていたんだ、という事を問われ、そりゃあ昔はエコールームというのがありましてね、良く響く部屋にスピーカーを置いてそれをマイクで拾ってたんです、と申し上げたところ、おお、じゃあ響く部屋があればレンタル料は不必要なのか、ちょっと待て、親父のやっている染色工場はなかなか響く部屋なのだ、と言って工場が休みの日にそこに機材を持ち込んでミックスダウンをしました。誰もいない工場の中で鳴り響く岡地のドラムや康蔵のアルト、というのもかなり不気味な感じはしますが、とにもかくにもそんな形で1枚目のアルバムが出来上がったのです。 長野社長というと、しまり屋、人によってはチーケェ、と悪口を言う方もいる様ですが、この歳になって振り返ると見事な手腕を持たれた経営者である、という事がわかります。あ、長野社長、お歳暮はお気になさらずに。 2006.11.17 UP
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