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11月21日(水)
旧・魚市場

この日は、芳枝が働く魚市場のシーンをまとめて撮影。佐賀県唐津市呼子町にある旧・魚市場をお借りして撮影する。
呼子町は佐賀県の北側、メイン舞台となる加部島の対岸にある。江戸時代には捕鯨で栄えたところだそうで、巨万の富を築いたと言われる中尾家の壮大な屋敷跡も残っている。現在はイカで有名。

イカ釣り漁船の並ぶ呼子港に沿った通りには、旅館や土産物屋などがひしめいていて、唐津駅前のひっそり感とは違い、活気が感じられる。

石川県輪島、岐阜県高山と並ぶ日本三大朝市のひとつに数えられる、呼子朝市があるのもこのエリア。また、水光(すいこう)呼子といわれ、太陽の光が波に反射してきらきらする光景でも有名。映画にも、この「水光」が写されるとのこと。
さて撮影には、地元のお母さん方がエキストラとして参加、魚市場で働く風景を撮る。

工藤さん、一心不乱に魚をさばく。その手つきたるや見事! お母さん方からも「うまいね!」と声が上がる。工藤さんは、お母さん方が本当にさばかなければならない今日の分を手伝うつもりで魚をさばいていたのだが、実はその魚は当然ながら映画スタッフが用意したもの。「カット!」の声がかかってもさばき続ける工藤さんに、用意した魚が足りなくなってしまうと美術スタッフはハラハラという一場面も。

日が暮れると、加部島へ移動し、網小屋で本ナイター。雨降らしの、シーン84だ。
このシーンは中盤のクライマックスとも言えるシーンで、夫の思い出の残る網小屋で、ぽつんと一人思いをはき出す、というところ。台本上の印象だと、人間の弱さが瞬間かいま見られるシーンかと思いきや、工藤さんのとらえ方は違った。芳枝はへなちょこな女ではない。現実を目の当たりにしてシクシクと泣くのではなく、現実に立ち向かう強さが感じられる強烈な演技だった。どうにもこらえきれなくなり、網小屋にあるものを思わず投げつける演技では、履いていたサンダルを放り投げ、サンダルは暗闇の中に……。

これにはスタッフ総出で捜索するというおまけがついてたが、11月下旬の深夜の本ナイターに加えて、冷たい雨降らし。おまけに、またしても運悪くこの日は思い切り寒かった。中盤のクライマックスとも言えるこの日の撮影は、厳寒の条件が重なるなかあくまでも熱かったのだ。

 
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