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INTERVIEW
インタビュー
工藤夕貴さん 時任三郎さん 西島秀俊さん
西島秀俊さん インタビュー

この作品は、呼子、佐賀という場所がないと撮影できなかったんじゃないかと思います。
 芳枝親子のために奔走する新聞記者・岡本利夫を演じた西島秀俊さんに、この映画について、そして役柄に対する思いについて、お話をうかがった。
 
Q.この役を引き受けた理由をお聞かせください。
 
脚本を読ませていただいて、すごくしっかりした脚本だなあという印象を持ちました。今までいろんな脚本を読ませていただいているなかで、こういうどこかきちっとした脚本には、あまり出逢うことがなかったので、それで参加させてもらいたいな、と。それと、三枝監督、主演の工藤夕貴さん、時任さんとご一緒したかった、というのが動機の大きなひとつです。
 
Q.岡本利夫という人物について、西島さん御自身、どうとらえましたか?
 
岡本利夫という役は、よかれと思ったということもあるけれど、どちらかというと新聞記者のキャリアとしての欲望から、ある記事を書いて、尾崎家という家族を危機に追いやってしまう。その罪を償いたいという思いと、危機に向かわせてしまった家族そのものにすごく魅力を感じて、何とかその家族をもう一度みんなで暮らせるようにしたいと願って行動する。利夫自身は両親を早く失っていて、家族というものがどういうものなのかわからない人間。それで、離れていて本当はもう帰って来ないかもしれないけれど待ち続ける、という家族の絆を見て、『ああ、家族ってほんとはこういうものなんだ』と、心動かされる。そういう役です。
 
Q.新聞記者役は初めてとお聞きしましたが‥。
 
新聞記者という職業の影響の大きさみたいなもの、良いことと、もしかしたらその影響で悪いことも起こってしまうということが表裏一体となっている仕事なんだな、ということは、今回の仕事を通してすごく感じました。それと、昭和の終わりのお話なんですが、僕の役はどこか現代的な部分を持っている役だな、と思いました。たとえば、両親との絆が薄かったり、仕事のためにちょっと盲目的に動いてしまう。そういうところが、もしかしたら一番現代と繋がるところなのではないかな、と。そこを大事に演じようと思いました。
 
Q.映画が進むにつれて、内面的に変化してゆく役柄で、記事を書いたときの気持ちと、親子のために奔走しよう、と思った気持ちには大分、隔たりがあると思いますが‥。
 
自分がしでかしてしまうことのせいで家族(尾崎家)が危機に陥って、でもそこまでその家族に対して行動を起こすものなのか、と考えました。そのためには、利夫の家庭というものが大きなファクターとしてあったと思います。両親を早くに亡くし、洋子という妹とふたりでずっと生きて来たというところが、大きな原動力になっていて、実際、その妹との全てのシーンが僕のなかでは大事なシーンとしてあるんです。だから、尾崎家の人々とのシーンは、もちろんメインで大事なところなんですが、洋子とのシーン、それと安藤刑事とのシーンもとても大事で、その2つがあるからメインの部分が充実できたんだと思います。
 
Q.宇崎竜童さん演じる安藤刑事との会話は、表面上のセリフと本心が異なることはお互いにわかっていながら会話していきますね。
 
個人的にはすごく好きなシーンです。ふたりとも分かり合って、認め合ってるけれども、お互いの立場からそこで仲良くなったりなれ合うわけにはいかずに、反目し合っている。すごく好きなパートです。それに、宇崎さんは、日本のインディペンデントの映画にずっと関わってこられた方なので、いろんな話を聞かせていただいて、楽しかったです。
 
Q.主役の工藤夕貴さんとの共演はいかがでしたか?
 
工藤さんは、気持ちで、全力で演技にぶつかる方で、本番のときの瞬発力や集中力がすごくて、勉強になりました。
 
Q.ロケ地、呼子でのエピソードなどがあったらお聞かせください。
 
イカをいただいて、ほんとに甘くておいしかったです(笑)。それと、監督もおっしゃってたんですが、ロケをした呼子の加部島の風景が昭和の終わりをすごく感じさせる風景なんですね。もうあんまりそんなところは残ってないんじゃないかな、と。僕自身、演技をする上で、場所ってすごく大きくて、いろんなものをもらえるんです。すごくきれいなところもあれば、ちょっと寂しく感じる風景もある。この作品は、呼子、佐賀という場所がないと、撮影できなかったんじゃないかと思います。
 
Q.「水光呼子」と呼ばれるにふさわしい、呼子の海面の輝きも、映画のなかでとても美しく撮られていますね。洋子と暮らす家の窓からも海が見えます。
 
海が映っていないところでも、照明技師さんの長田さんが、海の光を夜でも感じるように表現したり、それを藤澤さんというカメラマンがきちっと撮られていて。そういう場を作ってもらっている中に入るので、すごく自然に物語に入り込むことができました。
 
Q.これまで沢山の監督さんと仕事をなさってきたなかで、三枝監督とのお仕事はいかがでしたか?
 
僕の役は結構自由にやらせていただきました。僕自身もあまり悩むタイプではなく、すごく不埒に撮影に向かってしまうので、そのことをそのまま受け入れてもらえました。実際、他の役者さんとの役についての話し合いはとても丁寧にされていて、俳優の立場にとっては、すごく仕事しやすいと思います。質問したら納得するまでずっと話をしてくださる、そういう監督です。
 
Q.これから映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
 
家族の絆についての映画です。今の時代にこういう映画が作られて沢山の人に見ていただけたら、それはいいことなんじゃないかな、と。皆さんが見終わった後でちょっとあったかい気持ちになって家族のことを、電話してみようかな、とかコミュニケーションとろうかな、とか、思っていただけるとすごくいいことだと思います。