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「ロクス・ソルスの獣たち」
オフィシャルライヴリポート

BUCK-TICKが5月25日・26日に千葉・幕張メッセ 国際展示場9・10・11ホールで、“ロクス・ソルスの獣たち”公演を開催。彼らが幕張メッセで単独公演を行なうのは今回が初のこと。これまでも“THE DAY IN QUESTION”や、12年に一度のメモリアルな“CLIMAX TOGETHER”など、作品を帯同しない大規模な単独公演を開催し、その度に伝説を残してきたが、2日間で約2万4000人を動員したこの公演は、それらに匹敵する新たな金字塔を打ち建てたと言える。

この公演について、1910年代の怪書「ロクス・ソルス」のイメージを彷彿させるものの、タイトルだけではその内容を想像し難く、謎が謎を呼んでいたのだが、このステージで観客が目にしたものは、“今まで誰も見たことがない”BUCK-TICKの姿だった。左右センターの3方向に伸びた花道。花道の先に設置されたセンターステージ。ホログラム演出。客席の間を練り歩く入場方法。アコースティックセット。新曲の初演奏とレア曲満載のセットリスト。デビュー30周年を経て、新たなフェーズへと踏み出した彼らが、初日のMCで「30年経って、今日はいろんなことにチャレンジしてみました」と、はにかんだのだ。そんな彼らの新しい試みは、観客を大いに熱狂させた。趣向を凝らしたステージ演出と、美麗かつダイナミックなライティング、そして見る者を魅了するパフォーマンスで至高の世界へ誘った幕張メッセ2daysの模様をレポートする。



【5月25日】
開演前の会場は、まだ見ぬステージへの期待感で満ち溢れていた。暗転と共に総立ちになった観客は、ステージ中央に配された大きな円形のスクリーンの中のほの暗い森へと誘われる。その映像がやがて小説に出て来る発明品のようなスチームパンクの映像に変わった頃、メンバーがステージに登場。ヤガミ・トール(D)のカウントからスタートしたのは、この公演のテーマソングと言っても過言ではない「獣たちの夜」。

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このイントロが始まった瞬間の爆発力、高揚感をどう表現したらいいだろうか。一瞬心臓がギュッと収縮した後、一気に体内の血管が沸き立つ感じ。それまで音源で聴いていた印象を上回る初演奏の大迫力に圧倒された。黒い獣の皮をまとったような衣装の櫻井敦司(vo)の堂々たるヴォーカルが、ここから始まる獣たちの饗宴を扇動する。

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センター花道に最初に足を踏み出したのは今井寿(G)だ。音源ではノイズ音多めだったギターソロもライヴ用にアレンジされ、大いにフロアを揺らした。今井が鳴らした猫の鳴き声のような「ミャーン」という音から、ダンスビート炸裂の猫ソング「GUSTAVE」へ。イントロと共に櫻井が、間奏では今井、星野英彦(G)、樋口豊(B)がセンターの花道へ繰り出すと、その度に大歓声が上がる。2曲続けて獣たちからの挨拶を受けた観客は、ここから悪夢のようなめくるめく世界へと引きずり込まれるのである。「オー シャンゼリゼ オーシャンゼリゼ」。その響きにハッピー感のない櫻井の放ったこのフレーズから「PHANTOM VOLTAIRE」へ。今井が爪弾くエリック・サティの「グノシエンヌ」のフレーズから続く「Lullaby-Ⅲ」では、樋口が奏でるルンバのリズムに揺れる。デカダンな2曲の後、ゆらりと立ち上がる炎の映像をバックに「謝肉祭−カーニバル−」へ。儚いメロディと櫻井のファルセットが美しいミディアムナンバー。熱を帯びた星野のストロークと、時折空気を切り裂くように入る今井のギターノイズが感情を掻き立てる。

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ラストのヴェネチアンマスクで顔を覆う櫻井のパフォーマンスが印象的だった。ヤガミのリズムが物語の場面を展開していく「キラメキの中で…」では、感情を抑えた櫻井のヴォーカルに絡み合う「白鳥の湖」のフレーズがなんともドラマチック。曲の終わり、櫻井は暗がりの中でニヤリと氷のような笑みを見せた。そして約16年ぶりに演奏された「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」へ。中央のスクリーンに、まるで水槽の中で歌っているかのような櫻井の姿が映り、ステージ上の今井とツインヴォーカルの掛け合いを見せる。そのシーンはなんとも幻想的で美しかった。

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その余韻を打ち消すようにインダストリアルロックの「ICONOCLASM」へ。2回目の“Japanese Babies”の歌詞を“Everybody”と変えてフロアを盛り上げる。続いてヤガミのトライバルなリズムが鳴り響いた「FUTURE SONG-未来が通る-」。櫻井と今井のツインヴォーカルでますますボルテージを上げると、荘厳なイントロから樋口のベースリフがうねる「BABEL」へ。天を貫くように腕を高く掲げたり、崩れ落ちるように跪いたり、歌を体現していくパフォーマンスは圧巻だった。「どうもありがとう」との短い言葉の後、シャラリと鳴る鐘の音と、エフェクターで重ねた今井のギター音が波紋のように広がり、「Moon さよならを教えて」に繋がった。丸いスクリーンが大きな月になり、寄り添うように歌い奏でる。空気が浄化されたような気がしたのも束の間、星野の怪しげなギターイントロが再びダークな空気を呼んだ「密室」。

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歪んだ愛に苦悩する櫻井の表情を映し出すスクリーンに釘付けになった。ここで小休止。「それではもう一曲の新しい曲を初めてここでやらせてもらいます。みなさん、いろいろ探してみてください」。そのMCに被せるように今井が「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌のフレーズを奏でると、フロアの左右センターあたりから「RONDO」のイントロ、ヴァイオリンの音が鳴り響いた。そしてちょうどその音が鳴ったあたりにメンバーのホログラムが現れた。「いろいろ探してみてください」と言ったのは、このホログラムのことだった。思わずこちらに気を取られてしまったが、「RONDO」もこの日が初演奏。タンゴ調のリズムに乗るメロディと歌詞のリフレインが、夢と現実をくるくると彷徨う輪舞曲の幻想的な世界を演出した。夢の世界へ誘われたかと思ったら、今井が奏でるトロピカルなメロディにまた異世界へ飛ばされた。そこは朝日が輝く海辺。ドスのきいた人魚姫が歌う「THE SEASIDE STORY」は、運命も厭わない熱い恋の歌。続くフューチャーポップチューン「BRAN-NEW LOVER」も久々の披露でイントロから歓声が上がった。

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“人間にはさようなら いつか来るじゃない”と歌うこの死生観は、最新作『No.0』にも繋がっているような気がした。そして本編はいよいよラストを迎える。「どうもありがとう。みなさん素敵です。ありがとう」とフロアに向けて感謝の言葉を伝える櫻井。ティンパニーが鳴り響くとエンディングソングの「DIABOLO」へ。今井はギターソロを奏でながら花道を練り歩き、櫻井はシルクハットにステッキ姿で歌う。その様子はまるでサーカス一座が次の街へと繰り出すような、そんな華やかさと儚さ、一抹の寂しさを残した。

メンバーがステージを降り、沸き起こったアンコールの声が少しざわめいた。その理由はセンターステージに設置されたアコースティックセット。そのステージに向かい、両脇から差し出される手にタッチをしながらメンバーが上手側の客席の間を歩いてきたのだからフロアは興奮しきり。ステージに上ったメンバーは、櫻井をセンターにぐるりと囲むように座った。他のバンドでは見ることもあった光景だが、こういうセットでアコースティックコーナーを設けるのはBUCK-TICK初のこと。何より、定位置で移動することのないヤガミのドラミング姿をこの位置で見られるというのはかなりレアだ。「今日はちょっと趣向を変えて、こんな感じでやってみます」との櫻井の言葉をスタートに、ロックチューンの「スズメバチ」をアコースティックアレンジで披露。「今井さんがいろいろアレンジをやってくれました。みなさんにお尻を向けちゃってあれですけど、なるべくクルクル回るので」と、小さなステージをくるりと回ってみせる櫻井。スパニッシュなアレンジが加わった「BOY septem peccata mortalia」はとてもスリリングで、イントロのアルペジオが美しい「形而上 流星」は、アコースティックのシンプルなサウンドが、より歌を際立たせた。このアコースティックコーナーは、今後のBUCK-TICKの世界をより広げるような、新たなる武器を手に入れたような試みだったと思う。センターステージを降りたメンバーは、来た時とは逆の下手側の方を抜けてフロアを後にする。そんなところにも彼らの気遣いを見た。

再びステージに登場したメンバー。今井の頭には一角獣のヘッドオブジェ。1996年のCHAOSツアーや2009年のmemento moriツアーでも登場したアイテムに会場が沸いた。暗転してスタートしたのは「愛ノ歌」。この曲が披露されたのは2003年のアルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』ツアー以来16年ぶりだ。リズム隊の骨太なリズムに乗せて、真っ赤な照明の中、声高に愛を歌うその姿はとても気高かった。続いて演奏されたのは「さくら」。

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当時の櫻井の私的な想いを込めたこのミディアムナンバーも、時を経て昇華されたのかもしれないと、四方から舞い散るさくらの紙吹雪の演出を見ながらそんなことを思った。そしてメンバー紹介を経て、櫻井がこの公演に対する思いを語った。「30年経って今日はいろいろなことにチャレンジしてみました。徹夜でステージを組んでくれたスタッフのみなさん全員に感謝しています。そして何より幕張にまで暑い中、こんなにたくさんのみなさんが来てくださって感謝しています」。このスペシャルな公演の締めくくりに演奏されたのは「HEAVEN」。ステージ上の2つの階段がスクリーンに映し出された天界へと続く階段と繋がったのを見た時、“ロクス・ソルスの獣たち”は天界の住人だったのだと解釈した。それはこの「HEAVEN」が、“泣き叫び 笑い 愛し 恋を”する、そんな人々の営みを慈しみ愛おしむような、そんな温かな響きをしていたからだ。「また会いましょう。素晴らしいファンのみなさん」とフロアに向けて拍手をし、メンバーはステージを後にした。



【5月26日】
2日目も1日目同様、「獣たちの夜」「GUSTAVE」とオープニングからフロアのテンションをぶち上げる。

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花道をメンバーが闊歩するたびに大歓声が上がる。「PHANTOM VOLTAIRE」では、曲終わりに響いた櫻井の高笑いが会場の空気を引き締めた。

「ようこそ、いらっしゃい。さあ、パーティーを始めましょう。レディース&ジェントルマン、ウェルカム、ウェルカム、ウェルカム」。芝居めいた挨拶から始まった「Lullaby-Ⅲ」、この日の「謝肉祭−カーニバル−」では1日目と同じマスクをスタンドにつけ、櫻井がそのマスクに口付けするエンディングが印象的だった。オルガンのような音色のシンセギターが奏でる「白鳥の湖」から続く「キラメキの中で…」で、フロアはますます倒錯の世界へと落ちていくのだった。

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ジャングルビートの効いたニューアレンジの「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」では、スクリーンの中で幻想的に歌う櫻井の姿と、ステージ上、中指を立てながら歌う今井との対比が面白い。櫻井が再びステージに戻ってきたところで、鉄板のライヴチューン「ICONOCLASM」、ノイジーなデジロック「タナトス」と続く。圧巻の迫力でフロアを支配した「BABEL」の後、丸いスクリーンの両脇に伸びる階段の最上階、右側に櫻井が、左側に今井が腰掛け「Moon さよならを教えて」を歌い奏でる。その世界観を引き継いだ「Tight Rope」。近年は2007年にリアレンジされたバージョンで演奏されることが多かったが、今回は久々に1996年の原曲バージョンで演奏された。櫻井は花道をまるでタイトロープを渡るようなパントマイムでゆっくりと歩いて見せた。

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そして「RONDO」ではホログラムの演出や、両サイドからの音響で視覚的にも聴覚的にも立体的に楽しませ、「THE SEASIDE STORY」「BRAN-NEW LOVER」と高揚感を高めたところで、ショーの終わりを知らせるリズムをヤガミが高らかに打ち鳴らし、「DIABOLO」と共に夢の狂宴は華々しく終わりを迎えた。

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アンコールは1日目と同様、センターステージに設置されたアコースティックセットに、メンバーが客席を抜けて登壇。「後ろの方もありがとう。ここまでが限界です」と、この日も観客を気遣う場面が見られた。「また違ったBUCK-TICKを感じていただければと思います。今井さんのアレンジで形を変えて数曲聴いてください」との櫻井の言葉をスタートに、アコースティックアレンジによる「スズメバチ」「BOY septem peccata mortalia」「形而上 流星」の3曲を披露。初の試みとなったアコースティックコーナーの新鮮さもさることながら、やはり特筆すべきはアレンジの妙。これまでエレクトロニカを取り入れたバンドサウンドを提示してきたBUCK-TICKの楽曲をシンプルなアコースティックサウンドにすることで、メロディの良さをより浮き彫りにした。その上で、5人だけで鳴らす音のバックに、密かにノイズ音が鳴っているというのもBUCK-TICKならではだ。過去のステージを盛り上げてきたアップチューンの「スズメバチ」や「BOY septem peccata mortalia」は密室感が加わってよりセクシーに、シンプルな音で構成された「形而上 流星」は、よりクリアに胸に響いた。

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今回の公演では本編の「相変わらずの~」や「謝肉祭」など、10年以上演奏されて来なかった楽曲を蘇ったことも印象深い。そして2日間を通して前半はダークなナンバーがセレクトされていたが、決してヘヴィではなかったという印象がある。それは両日ともにWアンコールで披露された「愛ノ歌」「さくら」「HEAVEN」の3曲があったからかもしれない。

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アプローチは3曲それぞれ違うが、どの曲も愛の歌だった。改めてその視点で見ると、今回演奏された曲のほとんどが様々な形での愛の歌だったと言える。もしかしたら、この公演そのものがBUCK-TICKからの“We love you”のメッセージだったのかもしれない。「どうかみなさん、幸せに、幸せに、幸せに」(櫻井)。人々の幸せをそう願いながら、愛と多幸感に満ちあふれた2日間は幕を閉じた。

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2日間にわたり観客を熱狂させたこの「ロクス・ソルスの獣たち」とは何だったのか。“ロクス・ソルス”が“人里離れた場所”を意味するように、それは、どこにも属することなく唯一無二の存在としてこのロックシーンに君臨し続けるBUCK-TICKにしか到達できないものだったのではないだろうか。

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終演後、SEの「THEME OF B-T」が響く中、1日目のステージのダイジェスト映像が流れ、“THE DAY IN QUESTION 2019”の開催が発表された。12月3日(火)群馬・高崎芸術劇場 大劇場を皮切りに29日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館まで全5公演を実施する。また、アンコールのMCで櫻井は「30年を迎えてみなさんに祝ってもらって、そして31年目……まあ、長いですね。でもみなさんが楽しんでくれるので、また次いいものを作ろうという気にさせてもらえます」と語っていた。こうして未来を提示し続けてくれる限り、BUCK-TICKという夢からはまだまだ覚めることはないだろう。

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Text:大窪由香

「ロクス・ソルスの獣たち」

【日程】2019年5月25日(土) / 5月26日(日)
【会場】千葉:幕張メッセ 国際展示場9・10・11ホール

Photo by 田中聖太郎写真事務所

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