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Lingua Sounda レーベルサイト

SPECIAL

アルバム『ABRACADABRA』オフィシャルレビュー

約2年前、2018年に行なわれた『No.0』ホールツアーのエンディングを覚えているだろうか。ラストナンバー「Solaris」を終えて順番にメンバーがステージを降りてゆく。最後に一人残った今井寿(G)がピースサインを掲げたその後ろには壮大な宇宙のヴィジョン。“何か”を形成していた金属のパーツは次々と宇宙の塵となっていくが、最後に残った数個のパーツと、それが落ちていくであろう星の映像。バックに流れる「spiral」と名付けられたSEとそのシーンは、いつまでも心に残る『No.0』の余韻。

それと同じくBUCK-TICKの遺伝子を持つニューアルバム『ABRACADABRA』が9月21日に生み落とされた。オープニングを飾るのは、SEの「PEACE」。キラキラとした音粒は希望に満ちていて、再生や誕生をイメージさせる。このイントロダクションは、『No.0』の余韻を呼び起こした。あの高々と掲げられたピースサインから、今作の序章は始まっていたんじゃないだろうか。そんなことを思い巡らせながら、『ABRACADABRA』の世界へと漂い流れる。転生した新しい世界では、一体どんなストーリーが待ち受けているのだろうか。

やがてその音粒の中から、1つの新しいメロディが生み出される。このアルバムを聴き進めていくうちに、それと同じメロディを見つけることだろう。SEが明けていよいよ『ABRACADABRA』の本題へ。扉を開けるなり、強烈な歓迎を受けることになる。“幻想の始まりだ 運命共同体 君と繋がって”。M2「ケセラセラ エレジー」のオープニング。いきなりロックオン状態だ。それを“ケセラセラ”と楽しめるか、“エレジー”と受け取ることになるのかは、聴く者に委ねられる。今作『ABRACADABRA』で描かれているストーリーは、近未来でも近過去でもなく、明らかに我々が生きている“この時代”だ。ヘヴィーなボトムのM3「URAHARA-JUKU」は少女に忍び寄る闇への誘惑を、M6「Villain」では邪悪が横行するネット社会への嫌悪を、M12「MOONLIGHT ESCAPE」では、児童虐待をはじめとする不条理からの逃避を歌う。場末の一角では際どい男女の駆け引きが行なわれ(M8「舞夢マイム」)、その一方では倒錯した世界の中で愉快にダンスに興ずる人々がいる(M9「ダンス天国」)。夜空を見上げれば、木星か?ルーシーがダイヤモンドを持って空を飛んでいるのが見えるかもしれない(M4「SOPHIA DREAM」)。月の砂漠では絶望を乗せた駱駝がゆらゆらと歩を進める(M5「月の砂漠」)。同じ月の下では、「もううんざり」だと嘆く人が手首にそっと凍える月を滑らせる(M7「凍える」)。世界のどこかで今現在起こっているような、リアリティのあるシーンの連続が今作を構成する。M13「ユリイカ」は、新型コロナウイルスの影響下で生まれた、まさに“今”を切り取った楽曲だ。その歌詞の中に、タイトルになった“疫病退散”の言葉『ABRACADABRA』が出てくるのも必然だったのだろう。この「ユリイカ」のメロディが冒頭のSE「PEACE」に繋がる。今作の中で一番キャッチーでポジティブな印象のこの曲は、実は破壊の歌でもある。“青い星が 飛び散った”。クラッシュ&ビルド。やはり転生は繰り返されるのだ。そして今作を締めくくるのはM14「忘却」。この狂乱の世界を静かに閉じようとした時に、どんなことを想うのだろうか。“うんざり”としていたはずなのに、この曲からはかすかな未練も感じる。「獣たちの夜」「堕天使」のYOW-ROW ver.2曲を加えた全14曲。

ここでピックアップした激しい程の喜怒哀楽の感情は、バンド初期を彷彿させるような瑞々しく鮮やかなサウンドによって昇華される。これが『ABRACADABRA』が持つお守り効果だろうか。後味として残るのは、許しや寛容、浄化、そして解放される心。これまで以上に人間臭くて愛おしい、BUCK-TICKの最新形をたっぷりと堪能してほしい。

Text:大窪由香

photo

BUCK-TICK『ABRACADABRA』
2020年9月21日(月)リリース
完全生産限定盤A (SHM-CD+Blu-ray) VIZL-1787 / ¥5,500+税
完全生産限定盤B (SHM-CD+DVD) VIZL-1788 / ¥5,000+税
通常盤 (SHM-CD) VICL-70244 / ¥3,000+税
完全生産限定アナログ盤(2LP) VIJL-60228~9 / ¥4,500+税
完全生産限定カセットテープ VITL-70244 / ¥2,800+税

『ABRACADABRA』スペシャルサイト>>

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