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BUCK-TICK 2022-23 | DEBUT 35TH ANNIVERSARY YEARBUCK-TICK 2022-23 DEBUT 35TH ANNIVERSARY YEAR Special Site

BUCK-TICK 2022-23
DEBUT 35TH ANNIVERSARY YEAR

HISTORY

2012-2016

01

話は少し前後するが、BUCK-TICKはデビュー25周年を記念した映画を製作することを、2012年9月21日に発表した。この映画「劇場版BUCK-TICK ~バクチク現象~」は、2011年12月29日の日本武道館公演のステージ裏を出発点に、2012年のBUCK-TICKの活動を1年間追い続けた2部作のドキュメンタリー映画。レコーディング現場や、ツアーに向けた打ち合わせ、ライブの裏側など、2012年の彼らの活動の傍らではいつもカメラが回っていた。

櫻井の誕生日である3月7日に、ビクターエンタテインメントとアリオラジャパンの合同企画で4枚組のボックスセット『CATALOGUE VICTOR → MERCURY 87-99』『CATALOGUE ARIOLA 00-10』がリリースされた頃、次作に向けたレコーディングは着々と進められていた。2011年の東日本大震災以降、応援ソングや絆ソングが増えた日本のロックシーンの中で、BUCK-TICKが求めるものはソレではなかった。“ロックって、もっと悪くてエロいものだったじゃないか”。そんな思いを下地にして生まれたのが、今井作詞作曲の「エリーゼのために」だった。“欲しいのはソレじゃないんだ”という歌詞の主軸から、RCサクセションの「エリーゼのために」が思い浮かび、タイトルをそのまま起用。自分たちの新たな作品を作る場所として独自の新レーベル「Lingua Sounda(リンガ・サウンダ)」第一弾シングルとして5月23日にリリースした。そのジャケットにはメンバー5人の写真を使用。CDジャケットにメンバーが揃って登場したのは、『殺シノ調ベ This is NOT Greatest Hits』以来、約20年ぶりのことだった。

6月9日・10日、9年ぶりの開催となった日比谷野外大音楽堂2days(初日はFC会員限定)「at the NIGHT SIDE 2012」公演は、生憎の雨に見舞われた。振り返れば9年前の「Mona Lisa OVERDRIVE-XANADU-」初日も開演直前まで雨だった。野音ではBUCK-TICKを雨で歓迎することになっているのかもしれない。リリースしたばかりの「エリーゼのために」を一曲目に放ち、新旧織り交ぜたセットリストで25年の軌跡を辿る。アンコール、一人で出てきた今井が無数のレーザー光線が走る中、「雨に唄えば」のメロディを奏でていたのも印象的なシーンだ。ラストナンバーの「スピード」の前に、櫻井が高らかに声を上げた。「さあパレードが始まるよ。パレードが行くよ。みんなの街へ」。そのメッセージは、一週間後から始まる対バンツアー「TOUR PARADE 2012」へのモチベーションをより高めた。

4月に詳細を発表した2枚目のトリビュートアルバム『PARADE Ⅱ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』(7月4日リリース)は、同世代や先輩アーティストなど親交のあるアーティストが多く集まった1枚目に比べ、“BUCK-TICKに影響を受けた”と公言する後続バンドが数多くラインナップされた。6月17日Zepp Sendaiよりスタートした対バンツアー「TOUR PARADE 2012」出演者は、その中から選出された。各会場の出演者は、cali≠gari/Zepp Sendai、MUCC/Zepp Fukuoka、氣志團/なんばHatch、MERRY/Zepp Nagoya、THE LOWBROWS/横浜BLITZ、Pay money To my Pain/Zepp DiverCity、D'ERLANGER/Zepp DiverCity。BUCK-TICKとの初めての共演に出演者たちのテンションは高く、cali≠gariはトリビュートアルバムに収録した「MISTY ZONE」をあえて外して「LOVE ME」のカバーを入れたり、氣志團はBUCK-TICKメンバーにはセットリストを偽り、シークレットで「MY EYES & YOUR EYES」を披露したりと、それぞれに熱のこもったパフォーマンスでBUCK-TICK愛を炸裂させた。それを受けたBUCK-TICKは、「エリーゼのために」やC/Wの「夢見る宇宙」、7月4日リリースの「MISS TAKE ~僕はミス・テイク~」、さらに東京公演では未発表曲の「CLIMAX TOGETHER」を盛り込み、最新型のBUCK-TICKで圧巻のステージを見せた。

巷ではロンドンオリンピックで日本勢史上最多のメダルを獲得し、活気に満ちていた2012年の夏。「TOUR PARADE 2012」で士気を上げ、四半世紀最大のイベント「BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE」の準備を進める一方で、BUCK-TICKの活動も止まることがなかった。7月21日には北海道の野外フェス「JOIN ALIVE 2012」に出演。8月19日のヤガミ・トール50歳の誕生日には、神奈川・CLUB CITTA’で「Yagami Toll 50th Birthday Live「IT'S A NOW!」を開催した。中でもファンがレアな体験をしたのは、8月5日のことだ。シングル「エリーゼのために」と「MISS TAKE ~僕はミス・テイク~」に封入されていた連動応募抽選券で当選した300人を招いて、「CLIMAX TOGETHER」のMVの公開撮影が行なわれた。場所は1999年に移転して以来、そのステージに立つ機会がなかった東京・新宿LOFT。BUCK-TICKのMVにファンが参加するということも、25年の歴史の中で初めてのことだった。何度も流れる「CLIMAX TOGETHER」に合わせて、本番さながらの盛り上がりを見せてくれたファンに感謝を込めて、「エリーゼのために」「Memento mori」「独壇場Beauty」も披露した。

02

2011年11月から年を跨いで行なってきたアルバム『夢見る宇宙』のレコーディングは、レコーディングスタイルにおける転機となった。これまでドラムからベース、ギターと録っていく、いわゆるオーソドックスな流れから、ドラムを最後に録音するという手法を取り入れた。それにより、ドラム録りの時にはほぼベースとギターの音が決まっているため、チューニングが合わせやすくなった。さらにヤガミは、「ドラムに合わせることなく自分のニュアンスでベースが弾けるようになったので、ユータの個性がより出るようになった」と語っていた。また、歌詞作りにおいても、櫻井はレコーディングに入る前に、何にも囚われず自分の好きなイメージで言葉を並べていき、そこから歌詞を書いていくという、新しい手法を取った。そのおかげで「最初のインスピレーションがどんどん広がっていって、それぞれの物語が鮮明になっていった。ストーリーの中に自分がちゃんと入り込めていけた」と言う。そうしてシンプルなバンドサウンドによる、過去最高にキャッチーなロックンロールアルバムが完成。9月19日にリリースされた。

9月22日・23日、千葉ポートパーク内特設野外ステージにて、BUCK-TICK主催の野外イベント「BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE」が開催された。トリビュートアルバム『PARADE Ⅱ~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』に参加アーティストの中から、22日はMERRY、MUCC、cali≠gari、BREAKERZ、acid android、THE LOWBROWS、23日は氣志團、POLYSICS、N'夙川BOYS、Pay money To my Pain、AA=、D'ERLANGERの全12組が出演。1日目は灼熱の太陽の下で、2日目は大雨の中で、それぞれのアーティストが熱演を振るい、この両日のステージは、25周年を祝おうと駆けつけたのべ約14,000人の観客にとっても、出演者たちにとっても忘れ難いものとなった。そして両日のトリを務めたBUCK-TICKも、リリースしたばかりの『夢見る宇宙』に収録した新曲たちを中心に、多幸感溢れるステージで魅了。櫻井が発した「パレードは死ぬまで終わらない。いや、死んでも終わらない」というスピリッツは、現在まで引き継がれている。

そして、野外フェスの余韻を携えたまま、10月6日から「TOUR 夢見る宇宙」で全国を回った。そのファイナル公演の12月29日日本武道館では、2013年公開のドキュメンタリー映画のティザー映像がサプライズ上映され、25周年の興奮と熱気はまだまだ冷めることがなかった。

03

2013年はライブハウスを巡る「TOUR 2013 COSMIC DREAMER」で幕を開けた。このツアーで特に印象的だったのは、会場の広さによっては設置できなかった場所もあったのだが、櫻井の頭上に雨を降らせる舞台装置が設置されていたこと。「残骸」(2003年シングル)と「夜想」(『夢見る宇宙』収録)の2曲の間、室内でありながら激しく降り注ぐ雨の中で歌う櫻井の姿はなんとも艶美であった。

2011年に発生した東日本大震災から2年を迎えた3月11日。メジャーデビューライブ以来、約25年ぶりの日本青年館で「TOUR 2013 COSMIC DREAMER Extra~WE LOVE ALL!」と題した、東日本復興支援チャリティ公演を開催した。2011年3月以降、チャリティ活動を続けてきた彼らは、このライブのチケットの総売上金額と物販の総売上金額を全額寄付。ライブの終盤では1分間の黙祷を捧げた。

ドキュメンタリー映画製作のため、25周年の彼らの活動を、踏み込みすぎず離れすぎず現場に同化しながら追い続けたのは、映画監督の岩木勇一郎。息をするのも憚れるような緊張感が観る側にも伝わってくるようなレコーディング現場や、談笑するメンバーの表情など、撮影素材は、実に1500時間を超えた。その内容の濃さに、岩木氏はインタビューで「とにかく観る側にとっても体力のいる作品だと思うので、そこは覚悟していてほしい」と語っていた。6月1日、映画「劇場版 BUCK-TICK ~バクチク現象~」の先行上映会が、彼らの地元・群馬県で開催。そして6月15日から「劇場版BUCK-TICK ~バクチク現象~Ⅰ」6月22日から「劇場版BUCK-TICK ~バクチク現象~Ⅱ」がそれぞれ上映され、平成の時代に再びバクチク現象を巻き起こした。

この年は新作のリリースはなく、ライブ三昧の一年だった。
2月に関西のイベンターGREENSが主催したイベント「DEDICATE to・・・ ~gang 451~」、9月に氣志團主催の「氣志團万博2013 ~房総爆音梁山泊~」、THEATRE BROOK・佐藤タイジ主催の「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2013」に出演。年末の「THE DAY IN QUESTION 2013」は、ツアーという形で宮城・岩手・福島と東北3県を回り、12月29日に恒例の日本武道館でフィニッシュ。2014年1月22日にリリースする映画「劇場版 BUCK-TICK ~バクチク現象~」のテーマソング「STEPPERS -PARADE-」と「LOVE PARADE」も組み込んだ、華やかで温かなステージで1年を締めくくった。

04

“今までの自分たちをぶち壊して新しくする”。そんな衝動からスタートした新作の制作。しかし、その衝動がいわゆる“ロック”や“パンク”といった方向性ではないということをメンバーに伝えるために、今井は“ダダイズム”“シュルレアリスム”といった言葉を使った。あまりに抽象的なテーマで誤解を招くかもしれないという懸念があったが、最初に出来上がった楽曲に櫻井が「形而上 流星」とつけたのを見て、その懸念は杞憂であったと確信した。今井の中からポンと出てきた言葉のままをつけた『或いはアナーキー』というタイトルは、つかみどころがなく謎が謎を呼んだ。この実験的かつ挑戦的なテーマの今作には、様々なアーティストが参加した。横山和俊、CUBE JUICEのマニピュレーター陣に加え、ギターのカッティングから始まる一曲目のディスコナンバー「DADA DISCO - G J T H B K H T D –」はPOLYSICSのハヤシがプログラミングで参加。星野作曲の「宇宙サーカス」、エレクトロな「メランコリア」のマニピュレートはYOW-ROW(GARI)、「サタン」のプログラミングは三代堅(M-AGE)が担当。そしてメロウな「世界は闇で満ちている」には美しくて温かい森岡賢のピアノが華を添えた。2014年5月14日に先行シングル「形而上 流星」、6月4日にアルバム『或いはアナーキー』をリリース。それを引っ提げ、6月18日から全国ホールツアー「TOUR 2014 或いはアナーキー」、10月25日からライブハウスツアー「TOUR 2014 metaform nights ~或いはアナーキー~」と2本のツアーを回り、ラストは12月29日、日本武道館で「或いはアナーキー -N P P N B D K N-」公演を開催。演奏するメンバーと、楽曲の世界観を彩る美しい映像が一体となって、一枚の絵のように見えるようなステージ演出もインパクトを与えた。

2012年から精力的に活動してきたBUCK-TICKは束の間の休息期間に入るのだが、2015年も年明けから話題に事欠かなかった。1990年2月1日にリリースしたBUCK-TICK史上最大のヒットアルバムである『惡の華』から25年。不朽の名盤のリリース25周年を記念して、25年前にレコーディングされた『惡の華』のオリジナルレコーディングテープを用い、レコーディングエンジニアの比留間整氏が新たにミックスを施した『惡の華 (2015年ミックス版)』を2月1日にリリース。発売前には実際にレコーディングされたビクタースタジオに関係者を集めた試聴会が開かれ、骨太で迫力の増したサウンドに高評価が集まった。メモリアルボックス『惡の華 -Completeworks-』には、1990年当時作られなかったアナログレコードも収納された。

さらに圧倒的な存在感を見せつけたのは、6月27、28日に開催されたLUNA SEA主宰のロックフェス「LUNATIC FEST.」に出演した時のこと(BUCK-TICKは28日に出演)。Jが参加した「ICONOCLASM」以外はほぼ近年の楽曲でメニューを組んだ。特にラストの「無題」は、会場中を闇で覆ってしまうようなダークさと、鬼気迫る櫻井のボーカルで、BUCK-TICKを初めて観る者の心まで攫ってしまった。イベントであっても迎合しない姿に、拍手喝采が贈られた。

その翌日、櫻井が10年ぶりにソロ活動を始めるというニュースが飛び込んだ。今回はソロプロジェクト、THE MORTALを結成。徹底的にゴシックに振り切った音楽性で、10月14日にミニアルバム『Spirit』、11月11日に1stアルバム『I AM MORTAL』をリリースし、大阪と東京で計5公演のコンサートを開催した。その頃に今井も約20年の時を経て、SCHAFTを本格始動させることを発表した。それぞれの活動はもちろん、両者がソロ活動で得たものを、BUCK-TICKの次の作品にどうフィードバックするのか、ということにも注目が集まった。

2015年12月の5カ所を回るライブツアー「THE DAY IN QUESTION 2015」を終えると、また地下活動に突入したBUCK-TICKだったが、2016年は大きなトピックのある節目の年になった。

05 06

その一つが、1992年から12年ごとに同じ日(9月11日)、同じ場所(横浜アリーナ)で開催されてきた「CLIMAX TOGETHER 3rd」だ。最新のライティングやCGを駆使し、過去2回を上回るスケール感で1万3000人を魅了した。特に観客の心を震わせたのは、アンコール一曲目の「JUPITER」でのこと。1992年の「Climax Together」初回では、オープニングの「JUPITER」を紗幕に映るシルエットの状態でパフォーマンスしたのだが、そのシルエットを今回の「JUPITER」を演奏するメンバーの背景に映し込んだのだ。その粋な演出に、ファンからは悲鳴のような歓喜の声があがった。過去2回のハイライトを踏襲しつつ、初披露した「New World」をはじめ最新楽曲も織り交ぜ、各時代の点を線で繋いだような内容で、進化の過程を大迫力のステージで見せた。

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そしてもう一つは、1987年のデビューから10年間所属をしていたビクターに、20年ぶりに復帰したこと。1月20日にSCHAFTのアルバム『ULTRA』をリリースし、ツアーを終えた今井をはじめ、BUCK-TICKのメンバーは本格的に次作の制作に着手した。星野によると、作り初めの頃は“打ち込みのリズム”“エレクトロ”といったキーワードがいくつかあったが、今回は前作のようなはっきりとしたテーマはなかったそうだ。一方、今井の中では意識の変化があった。これまでは自分の好みのものしか取り入れてこなかったが、今回は人の意見や自分の好みでない音もOKにしたと言う。そこにはサウンドの印象を内側から変えたいという思いがあった。偶然にもそれは櫻井の歌詞ともリンクしていて、今回の作詞では「前だったらこれはダメかなと思うようなものも、面白いと思ったらすべて取り入れるようにした」と語っていた。9月21日にビクター復帰第一弾のシングル「New World」を、その一週間後にアルバム『アトム 未来派 No.9』をリリース。タイトルの『アトム 未来派 No.9』は様々な憶測を呼んだが、収録楽曲の歌詞の中から、印象的な言葉を今井がピックアップして並べた。10月8日から12月29日まで、「TOUR アトム 未来派 No.9」を開催。インダストリアルを入り口にしながら、ライブが進むごとに生々しく人間の深部へ掘り進めるような、琴線に触れるステージだった。翌年のデビュー30周年を目前にまた、新境地を切り開いた。

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Text:大窪由香

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