DEBUT 35TH ANNIVERSARY YEAR
HISTORY
2017-2023
「人生は容赦ねぇな。面白いくらいドラマチックで」
2023年12月29日、日本武道館公演「バクチク現象-2023-」での今井の言葉だ。
2017年からの7年間は、世界的に見ても試練の時代だった。2019年5月に年号が「平成」から「令和」に変わり、新しい時代へと歩み始めた頃、世界中を混乱させた新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、人々の営みやルールが大きく変化した。エンターテインメントにおける活動の制限は音楽業界にも大きな打撃を与え、その影響は今もなお続いている。さらに2022年に起こったロシアのウクライナ侵攻は、コロナ禍から再起しようとする世界に暗い影を落とした。
その社会情勢はBUCK-TICKが生み出す音楽にも影響を及ぼし、表現の幅をさらに広げることとなったのだが、その半ばで試練というにはあまりにも悲しく、ドラマチックというにはあまりにも辛い出来事がバンドを襲った。
2017年は年明けから全6公演のファンクラブ会員限定ライブ「FISH TANKer’s ONLY 2017」でファンと共に過ごし、メジャーデビュー30周年に向けて弾みをつけた。
6月24日からは劇場映画「BUCK-TICK~CLIMAX TOGETHER~ON SCREEN 1992-2016」を上映した。監督は3回の「CLIMAX TOGETHER」で撮影監督を務めた林ワタル氏。3度のステージを一本化するにあたり、軸にしたのは“BUCK-TICKの成長”。3つの時代を繋ぐメンバーのインタビューからも意識の変化を垣間見ることができた。星野英彦の誕生日でもある6月16日に行なわれた先行上映会は、2013年に公開された「劇場版 BUCK-TICK 〜バクチク現象〜」リバイバル上映と、1992年開催の横浜アリーナ公演2日間分の初出し音源であるライブアルバム『CLIMAX TOGETHER-1992 compact disc-』の世界最速試聴会も合わせた30周年記念オールナイトイベントとして好評を博した。

そして9月23日、24日に東京・お台場野外特設会場J地区にて、「BUCK-TICK 2017 “THE PARADE” 〜30th anniversary〜」が開催された。前日から降り続いていた雨は、23日の午前中のうちにスッキリと晴れ、お台場に特設されたステージはどこか近未来を感じさせる趣きがあった。“FLY SIDE” ““HIGH SIDE”と題された2日間に披露された全42曲のうち、被り曲はたった4曲。「FLY HIGH」や「TO-SEARCH」といったインディーズ時代の楽曲は当時の勢いのままに、「惡の華」や「スピード」といった代表的なシングル曲で一体感を生み、「無題」や「夢魔-The Nightmare」では圧倒的な没入感で会場の空気を支配する。幅広い音楽性で音楽シーンを30年間牽引し続けているBUCK-TICKの歴史を網羅したメニューで様々な表情を見せ、集まった計20,000人の観客を熱狂させた。2日間を終えてステージを去る間際、ヤガミ・トールが放った「まだまだやります。全然疲れてません!」という言葉は、頼もしく響いただろう。
10月21日埼玉・大宮ソニックシティ 大ホールから12月29日の日本武道館まで、全18公演の「THE DAY IN QUESTION 2017」がスタート。春から次作の制作に入っていた彼らは、先行シングルとして11月15日にリリースするシングル「BABEL」を、このツアーで初披露。重厚感のあるゴシックサウンドと迫力のパフォーマンスで圧倒された観客は、次なるアルバムへの期待感をより一層高めたのだった。
2017年春からすでに着手していた新しいアルバム作りは、“尖った感じにしたい”という思いが今井の中にはあったものの、サウンド面においてテーマを特に設けず、自然に出てきたものから良いものを作っていこうと進めていった。制作初期の段階で、マニピュレーターの横山が語った「架空のサウンドトラックのようだ」という印象は、アルバムの世界観を共有するのに役立ったという。その結果、アルバム『No.0』は“映像的なアルバムになった”と今井は表現する。もう一人のコンポーザー、星野は今作を「内側に秘めたものが過去作とは違う感じがする」と評していた。そう印象付ける櫻井の歌詞は、フィクションと彼の中のリアルを融合させ、これまで以上にストーリー性の高いものに仕上がった。また、「戦争反対ということを当たり前のように言いたい」と言う彼は、その思いを「ゲルニカの夜」や「胎内回帰」に込めた。『No.0』は今井がつけたタイトルで、「前作が“No.9”だったから、次にいって“No.0”」と語っていた。“0(ゼロ)”には“リセット”や“30周年”という意味合いが含まれた。収録曲の中から先行シングル第二弾の「Moon さよならを教えて」を2018年2月21日に、そしてアルバム『No.0』を3月14日にリリースした。

3月31日からスタートしたホールツアー「BUCK-TICK 2018 TOUR No.0」は、誕生と終焉、破壊と再生の中にある人間の営みや性(さが)を凝縮。スチームパンクをモチーフにしたセットやシアトリカルな演出で、“映像的”というアルバムの印象を具現化したようなステージだった。特に、印象的なサンドアートの映像をバックにストーリーテラーのように歌を紡いだ「ゲルニカの夜」や、「胎内回帰」での身を削るように感情を爆発させる櫻井の歌唱は、聴く者の胸を打った。
10月20日から始まったスタンディングツアー「TOUR No.0 - Guernican Moon -」を順調に進めてきたメンバーだったが、12月9日東京・Zepp DiverCity(TOKYO)公演で異変は起きた。公演中、歌は途切れずとも、マイクスタンドを支えにして立っていたり、時折膝をついたりしている櫻井の姿があった。しかし予定していた全メニューを歌いきりステージを終えたのだが、その後体調不良を訴え検査したところ、消化管出血と診断された。療養のため、12月15日以降予定していた福岡公演、熊本公演、京都公演の延期を決定。12月29日日本武道館での「TOUR No.0 -FINAL-」が復帰公演となった。そこで涙ながらに、多数のお見舞いメールや励ましの手紙をもらったことを明かし、「沢山のLOVEをありがとう」と感謝の言葉を述べた。本編ラストの「Memento mori」では、琉球音階のメロディに合わせてカチャーシーを踊った櫻井。“喜びも悲しみもすべてかき混ぜてみんなで分かち合おう”という意味をもつこの舞いで、会場が一体になる光景は圧巻だった。
2019年3月、延期になっていた「TOUR No.0 - Guernican Moon -」の振替公演が始まる直前に発表された、BUCK-TICKの新曲にまつわるニュースが話題を集めた。テレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(フジテレビ系)のエンディング主題歌として、新曲「RONDO」が日曜の朝のお茶の間に流れるという。この「RONDO」は、ダンサブルなアッパーソング「獣たちの夜」とのダブルA面シングルとして、5月22日にリリースされた。

5月25日、26日、初の幕張メッセ国際展示場 9〜11ホールで開催した「ロクス・ソルスの獣たち」は、ライブバンドとして数々の記憶に残るステージを作り上げてきたBUCK-TICKの歴史に、新たに書き加えるべき忘れ難い公演となった。メインステージのセンターから伸びる花道、その先にサブステージを設け、アンコールでキャリア史上初のアコースティック形式で「スズメバチ」「BOY septem peccata mortalia」「形而上 流星」の3曲を披露。彼らの新しい試みに、12,000人(2日間で約24,000人を動員)が酔いしれた。
そして2019年はもう一つ、キャリア初のステージを経験する。2000年以来、毎年12月29日に開催してきた日本武道館公演だったが、この年は武道館の改修工事により、初の国立代々木競技場第一体育館で「THE DAY IN QUESTION 2019」が開催された。いつもと違う光景で一年を終える。その新鮮さを楽しみながら、多幸感あふれるステージで2019年を締めくくった。
2010年代はCDの売り上げが年々減少し、ストリーミングやサブスクリプションといった音楽配信が台頭。音楽を聴く側も提供する側も変化が訪れた時代だった。また、プロモーションとしてのSNS利用も活発化。多分に洩れずその波はBUCK-TICKにも押し寄せていた。2011年にオフィシャルTwitter(現X)を、2017年にオフィシャルLINEを開設。2019年には今井が個人でInstagramを開始。2019年4月には、これまでのシングルとオリジナルアルバム、全作品のサブスクリプションサービスを開始し、iTunesなどの音楽配信サイトで未配信だった作品のダウンロード販売を開始した。この音楽業界のデジタル化をさらに加速させたのは、2020年に起こった新型コロナウイルス感染症のパンデミックだった。
『No.0』を作った後、今井の中で思い描いていた次作のイメージは、“逸脱した音楽”だった。メンバーがアルバム制作に入った2020年2月辺りから日本にもコロナの脅威が広がり始め、4月に一度目の緊急事態宣言が発出。密閉・密集・密着の「3密」に該当するとして、すべてのライブ会場が公演停止、営業休止。エンターテインメントは不要不急なものとされた。5月から予定していたファンクラブ会員とモバイル会員限定のライブハウスツアーの開催も見送ることになった。外出の自粛により、レコーディングも中断せざるを得なかった。それでもこの困難な状況をみんなで乗り越えようと、様々なアーティストがインターネットで発信を始める中、BUCK-TICKもニコニコ生放送やYouTubeで過去のライブ映像を配信した。
未曾有の出来事による混沌とした社会情勢や広がる不安感は、作品作りに少なからず影響を及ぼした。レコーディングの中断中、今井は「だんだん腹が立ってきて、スカッとした曲を作ろうと思った」と曲作りを始め、アルバムの軸となる「ユリイカ」が生まれた。そのリフをかき鳴らしていた時、なぜだか自然に涙がこぼれたと言う。一方で「コロナに影響されたくなかった」と言う櫻井は、「作品は作品として、自分の思った方向にきちんと持っていきたいと思っていた」と、それぞれの楽曲から生まれるストーリーに集中した。その上で、最後にあがってきた「ユリイカ」には“疫病退散”を意味する呪文の言葉“ABRACADABRA”を取り入れ、その言葉がそのままアルバムタイトルになった。

アルバム制作を終えたメンバーは、9月1日に極秘の撮影を進めていた。場所は全国ツアーの初日に訪れるはずだった東京・立川ガーデンホール。すでに発表していたフィルムコンサート・ツアー「TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN」用のライブ映像の撮影だった。ツアーのために制作していたステージセットを組み、フィルムコンサートだからこそできるARも取り入れた大掛かりな撮影現場で無観客の中、完成したての『ABRACADABRA』を演奏する。メンバーにとっても新しい試みだった。
その経験を経て、デビュー記念日でもある9月21日のアルバム『ABRACADABRA』のリリース日に、アルバム『ABRACADABRA』を曲順通りに再現した初の無観客での生配信ライブ「ABRACADABRA LIVE ON THE NET」を開催。9月26日からスタートしたフィルムコンサートツアー「TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN」では、フィルムコンサートでありながら、実際のライブと同じ音響システムや照明を使用し、臨場感を再現した。通常のツアー同様に全国を巡るツアートラックも希望となった。
そして12月29日。ガイドラインに基づいた新型コロナウイルス感染予防対策を行ない、2020年最初で最後の有観客でのコンサート「ABRACADABRA THE DAY IN QUESTION 2020」を日本武道館で開催した。歓声の代わりに大きな拍手が響く温かい空間の中で、生のライブを届けられる喜びを味わった。ヤガミのジャケットの背中には“FU○K OFF!! COVID-19”の文字。櫻井はラストに「それでは行こう、未来へと。行こう!」と、力強いメッセージを放った。
2021年に入ってもコロナ蔓延の状況は変わらず、2回目、3回目、4回目と緊急事態宣言が繰り返された。その中でエンターテインメントは事態に配慮し、細心の注意を払いながら、少しずつ動き始めていた。BUCK-TICKも7月17日にStreaming Live「魅世物小屋が暮れてから〜SHOW AFTER DARK〜」を開催。“魅世物小屋”をテーマにセレクトした楽曲を、アコースティックセットとバンドセットの2部構成で観せた。同日、シングル「Go-Go B-T TRAIN」(9月22日)発売と、9月から始まる全国ツアー「TOUR2021 Go-Go B-T TRAIN」の開催を発表したのだが、その一カ月後、今井が左大腿骨転子部を骨折。そのため、予定していた全国ツアー全20公演を中止することになった。

復活は恒例の12月29日日本武道館公演だった。その開催が発表されたのは11月14日。コロナ禍の状況と、今井の怪我の状況を鑑みたギリギリの決定だった。タイトルは「魅世物小屋が暮れてから〜SHOW AFTER DARK〜 in 日本武道館」。7月に配信したStreaming Liveの世界観を踏襲した二部構成でありながら、ガラリとセットリストを変えたパワフルなステージで魅了。今井も杖を手に、ヒールの高いブーツでステージを闊歩し、元気な姿を見せた。

メジャーデビュー35周年を迎える2022年は、年明け早々から楽曲制作に入った。7月にファンクラブ&モバイルサイト会員限定ライブ、8月19日に「Yagami Toll 〜60th Birthday Live〜」、9月にDEBUT 35th ANNIVERSARY プロジェクト始動、9月23日・24日に横浜アリーナでのDebut 35th Anniversary LIVE、10月に全国ツアー開催、12月29日日本武道館公演、そして2023年春にニューアルバムのリリースと、2021年末の武道館で告知した通り、すでに盛りだくさんのスケジュールと並行して、一年をかけてアルバム作りを進めていこうという目論見だ。後に明かされたが、制作当初は2枚のアルバムを作る予定だったという。
「FISH TANK × LOVE & MEDIA PORTABLE ONLY LIVE」、ヤガミの還暦を祝う「Yagami Toll 〜60th Birthday Live〜」と、夏をファンと共に過ごし、いよいよ迎えた9月23日、24日のDebut 35th Anniversary LIVE「BUCK-TICK 2022 “THE PARADE” 〜35th anniversary〜」。20周年、25周年、30周年のデビュー記念公演は野外で開催されたが、今回のステージは横浜アリーナ。大型のLEDスクリーンと、12台のレーザーを駆使した、照明や映像のダイナミックな演出と、9月21日にリリースしたベストアルバム『CATALOGUE THE BEST 35th anniv.』の内容を踏まえた、バンドの現在地とその先の未来を指し示すようなメニューでアニバーサリーを盛り上げた。中でもこの公演で初披露された「さよならシェルター」は、10月から始まった「BUCK-TICK TOUR THE BEST 35th anniv.」でも演奏され、次作『異空 -IZORA-』に繋がる重要な一曲として大きなインパクトを残した。

12月29日の日本武道館公演「BUCK-TICK TOUR THE BEST 35th anniv. FINALO in Budokan」で35周年ツアーを一旦締めくくると、“新しいBUCK-TICK”へとシフトチェンジしていった。武道館の終演後に発表した「太陽とイカロス」「無限 LOOP」という先行シングルのタイトルは、ファンの想像を豊かにした。2023年3月8日に「太陽とイカロス」、22日に「無限 LOOP」がリリースされると、両曲のもつキャッチーさや爽快さに驚きの声があがり、次なるアルバムへの期待度はさらに高まっていった。

満を持して4月12日に発売されたアルバム『異空 -IZORA-』は、先行シングル2枚の印象に反し、不穏で混沌とした社会情勢を反映したダークな作品に仕上がった。しかし、曲ごとのアプローチは跳ねた軽やかさがあったり、爽快なサンバのリズムを持っていたり、エフェクティブなギターサウンドが炸裂していたり、巧みなコーラスワークが聴きどころだったりと実に多彩だったし、憤りや悲しみをにじませた櫻井の歌詞には、その根底に希いがあった。4月からスタートした全国ツアー「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA-」では、それぞれの楽曲に潜ませたメッセージを一本のストーリーに組み立て、その中で生きる主人公の生と死を鮮烈に描いた。ツアーは9月17日、18日に彼らの故郷である群馬音楽センターでの「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO」公演でファイナルを迎え、35周年のアニバーサリーイヤーを締めくくった。
「人生は容赦ねぇな。面白いくらいドラマチックで」
冒頭の今井の言葉に戻る。これまで綴ってきたBUCK-TICK35周年のヒストリーを振り返っても、決して平穏に進んできたわけではなく、紆余曲折、波乱万丈を5人で乗り越えてきた。しかし、2023年10月、BUCK-TICKの根幹を揺るがす不測の事態が起こった。今井の言葉には続きがある。「でも、笑えねぇよ」。
10月19日、神奈川・KT Zepp Yokohama。翌日20日から始まるライブハウスツアー「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- ALTERNATIVE SUN」の前哨戦となる、ファンクラブ会員限定ライブ「FISH TANKer’s ONLY 2023」でのことだった。予定通り5人がステージに登場し、「SCARECROW」「BOY septem peccata mortalia」「絶界」の3曲を歌いきった後、櫻井が体調不良を訴え、スタッフに支えられながらステージを中座。その後、公演中止が伝えられた。誰もがその病状を心配し快癒を願ったが、10月24日に訃報が伝えられた。
櫻井敦司
令和5年10月19日午後11時9分 脳幹出血のため逝去
予定していた「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- ALTERNATIVE SUN」と「FISH TANKer’s ONLY 2023」、12月29日の日本武道館公演「THE DAY IN QUESTION 2023」、すべての公演が中止となった。突然の訃報を受け、BUCK-TICKファンのみならず、国内外の音楽業界や音楽ファンに衝撃と悲しみが広がる中、BUCK-TICKはメンバーとスタッフチームで協議を重ね、「さあ、始めよう──」というメッセージのもと、12月29日に日本武道館公演「バクチク現象-2023-」を開催することを発表。訃報から約一ヵ月後の決断だった。そこには“ファンを一人にはしない”というメンバーとスタッフの思いがあった。その後、「BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- ALTERNATIVE SUN」で公演予定だった全国の会場で、櫻井へメッセージを寄せる場が設けられ、ツアーファイナルを迎える予定だった東京・Zepp Hanedaでは「THE CEREMONY-櫻井敦司へ-」と題した献花式が2日間にわたり行なわれ、たくさんのファンと関係者が櫻井へ愛と感謝と祈りを捧げた。
そして迎えた12月29日、日本武道館公演「バクチク現象-2023-」。「さあ、始めようぜ!BUCK-TICKだ!」という今井の掛け声からスタートしたステージは、櫻井のヴォーカル音源と4人の生演奏を合わせる形で展開。息遣いまで感じられる臨場感のあるヴォーカルを聴くほどに、その不在が浮き彫りになっていったが、それと同時にこれからもBUCK-TICKを続けていくという4人の意志も明確に示されていた。
「あっちゃんは天国に行ってしまいましたが、BUCK-TICKはずっと5人です」──樋口豊
「続けていいのか、やめた方がいいのか、いろいろと考えましたが、こんなふうにファンの皆さんがいるので、これからもBUCK-TICKを継続させていただきたいと思います」──ヤガミ・トール
「パレードはこれからも続きます。もう一度言います。パレードは続きます、この5人で」──星野英彦
「来年BUCK-TICKは新曲作って、アルバムを作ります。最新が最高のBUCK-TICKなんで、期待しててください」──今井寿
メンバーの言葉通り、BUCK-TICKは次のフェーズへと歩を進めた。「でも覚悟しててください。次は3人になります。それでもパレードは続けます。次は2人、次は1人、たぶん最後の1人は俺かな。それでも続けるんで、みんなも連れていきたいと思ってます」(今井)。いつか来る“終わり”を意識しながら、限りある時間の中で「もっと突き詰めていきたい」と、以前のインタビューで今井は語っていた。“愛と死”を表現し続けてきたBUCK-TICKの歌や音楽は、この先どう変化していくのだろうか? 櫻井敦司という愛する存在を傍におきながら、ファンと共に歩んでいくパレードの続きを想像して、彼らは未来に向かって動き始めた。すでに発表されている2024年12月29日の日本武道館公演で、第二期BUCK-TICKはどんな色の花を、どんな形の花を咲かせるのだろうか。そのバンドの生き様を、しっかりと見届けたい。
BUCK-TICKのパレードはまだまだ止まらない。これからも続いていくのだ。
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